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前章において規範となる売買後不具合に係る損害負担ルールは、厳格責任ルールを基本 としつつ、建物検査実施時には過失責任ルールを認めることが適切であることを示した。

これを実際の法制度に適用する場合、以下のような方法が考えられる。

(1)売主の売買後不具合損害に係る損害負担の義務付け

住宅の品質確保の促進等に関する法律第 94 条による新築住宅売主等への瑕疵担保責任 負担の義務付けと同様に、個別法に民法の特則として、売主への売買後不具合損害に係る 責任負担を義務付けるとともに、例外規定として建物検査実施時には義務付けの対象外と して位置づけることが必要である。なお、責任負担の義務付けについては、新築時の瑕疵 担保責任負担義務付けと同様に、規範としてのものであり行政府においてその実施状況を 担保する必要はないと考えられる。

また、建物検査を実施したことの担保としては、宅地建物取引業法における媒介時の書 面交付として、建物検査結果を位置づけることが考えられる。

(2) 建物検査の位置づけについて

前項で規定した建物検査については、例外規定を適用する要件となるものであるため、

その実施方法、実施結果の示し方、実施者について法律で規定することが必要である。

建物検査の実施者については、第 5 章において公的監視下にある者又は検査結果に責任 を持つ者であることが必要であることを示したところである。保険制度の実施者として想 定される住宅瑕疵担保責任保険法人は、この両方の要件を充足する者であり、建物検査の 実施者として位置付けることが適切であると考えられる。公的監視の下にある者について は、指定確認検査機関のように新たに指定又は認定制度の創設が必要となるため、制度運 用費用が必要となるため現状においては建物検査実施者としては適切ではないと考えら れる。

なお、保険会社が建物検査実施者になる場合、保険に加入しない者の建物検査に対して

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責任を持たないこととなるため適切な検査が確保されないのではないかとの恐れもある が、保険会社は、建物検査実施時点では保険への加入の有無は判別できないため、このよ うな懸念は発生しないものと考えられる。

また、建物検査依頼者は売主であり、保険加入者が買主となるため、買主が保険会社を 選択できないのではないか、との懸念もあるが、建物検査の実施内容・結果の示し方を保 険会社間で共通化することで、検査結果を保険会社間で融通することが可能となり、買主 が保険会社を選択することが可能になるものと考えられる。

(3)品質基準の位置づけについて

品質基準については、その内容は第 6 章において「住宅として最低限の品質を有するも のであること」が適切であることを示したところである。過失責任ルールにおいては、品 質基準と最適予防水準のかい離は効率性の低下をもたらすものであり、政府の失敗を招く 可能性があることから、品質基準については一定程度の可変性を持った位置づけとし、実 態に合わせて柔軟に見直せるようにする必要がある。中古戸建住宅の売買後不具合損害に 係る情報が最も集積されるのは保険会社であることから、品質基準については法令ではな く保険の基準として位置付けることが適切であると考えられる。

(4)そのほかの制度的補完措置

5.3で提示した行為情報は、建物検査の精度不足を補い、売主と買主の情報の非対称性 を緩和するものである。このため、行為情報を有効利用するための環境を整備する必要が ある。

① 新築時施工に係る情報

指定確認検査機関や特定行政庁の保有する建築確認情報、住宅瑕疵担保責任保険法人の 保有する新築時の保険加入に係る情報及び住宅性能表示制度に基づく情報について、現在 は、新築時に新築時発注者等に引き渡すことで利活用が終了しているが、これを整理統合 し、中古戸建住宅売買時に利用可能とする環境整備を図ることが必要である。

②維持管理に係る情報

維持管理に係る情報については、現在試行されている住宅履歴情報の蓄積を引き続き推 進することが有効であると考えられる。その際、住宅所有者による不正な履歴情報の蓄積 を防止するような仕組みとして公的機関による住宅情報データベースの構築についても、

その制度実現費用を踏まえて検討すべきである。

8.2 今後の課題

(1)交渉による損害分担に係る制度運営費用の詳細な検討

理論分析においては、交渉による損害分担の主要な問題点として、建物検査等の強制等 に係る制度創設・運営費用を挙げることで政府による介入の必要性を正当化したうえで、

最安価損害回避者の考え方を用いて売買後不具合に係る損害負担ルールを導き出してい る。

今回提案した売買後不具合に係る損害負担ルールは、実際に売買後不具合損害に係る紛

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争が生じた際に参照するものであり、行政的な担保措置を必要とするものではないため、

行政的な担保措置を必要とする建物検査強制に係る制度運営費用よりも安価であると考 えられるが、建物検査等の強制に係る制度運営費用については詳細な分析を行う必要があ るものと考えられる。

(2)損害負担ルールの導入の是非

今回提案した売買後不具合損害に係る損害負担ルールにおいては、売主に売買後不具合 損害に係る責任負担を義務付ける又は建物検査の実施を強いるものである。いずれについ ても、品質が低い住宅においては売買価格が下落することとなるため、市場に出てくる中 古戸建住宅が減少し、市場全体の効率性が損なわれる恐れがある。こうした市場の効率性 の低下に対しては、損害負担ルールの導入により中古戸建住宅市場の信頼性が高まり、中 古戸建住宅を選択する買主が増加することの効率性の増加の方が大きく十分に克服可能 な問題であると考えられるが、導入に当たっては新築時の瑕疵担保責任負担義務付け時の 対応や海外事例を参考に検証することが必要であると考えられる。

(3)保険制度のモニタリング

建物検査を実施しない条件下での厳格責任ルールにおける保険制度においては逆選択 の発生が懸念されるため、保険の加入状況、事故発生率、事故額等について継続的にモニ タリングし、保険料を柔軟に見直すことが必要である。この結果、保険料が著しく高額と なるような事態が発生した場合は、保険の義務付けを含め、対応を検討することが必要で ある。

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附録

●レインズデータと既存住宅売買瑕疵保険データの統合方法

(1)レインズデータについて

①レインズデータの入手方法

国土交通省土地建設産業局不動産業課に対して、「3.レインズ情報の提供依頼書」を提 出し、各レインズと政策研究大学院大学(契約名義は政策研究大学院大学まちづくりプ ログラム プログラムオフィサー 福井秀夫)の間で「レインズ情報の提供に関する契 約」等を締結した後に情報提供を受けたもの。

②情報提供を受けた情報

物件番号 データ種類 物件種別 物件種目 登録年月日 成約登録年

月日 成約年月日 新築中古区

所在地 1 コ ード

所在地 2 コ

ード 都道府県名 所在地名 1 所在地名 2 所在地名 3 建物名 部屋番号 その他所在

地表示 棟番号 沿線コード

(1) 沿線略称(1) 駅コード(1)

駅名(1) 徒歩(分)1

(1)

徒歩(m)2

(1) バス(1) バス路線名

(1)

バス停名称

(1) 停歩(分)(1)

停歩(m)(1) 車(km)(1) その他交通 手段

引渡入居時

引渡入居年

月(西暦) 引渡入居日 引渡入居旬 入居年月(西

暦) 入居日 取引態様 報酬形態 手数料割合

手数料 価格

価格消費税 坪単価 ㎡単価 成約価格 成約価格消

費税 成約坪単価 成約㎡単価 成約前価格 成約前坪単

成約前㎡単

成約前価格 消費税

面積計測方

土地面積 建物面積 1 専有面積/

使用部分面

私道負担有

私道面積 専用庭面積 セットバッ

ク区分 後退距離(m) セットバッ ク面積(㎡)

工事完了年

月(西暦) 建築面積 延べ面積 国土法届出 登記簿地目 現況地目 都市計画 用途地域(1) 用途地域(2) 建ぺい率 容積率 地域地区 土地権利 付帯権利

建築条件 オーナーチ ェンジ

管理組合有

管理形態 管理会社名 修繕積立金 施主 施工会社名 分譲会社名 一括下請負

接道状況 接道種別 1 接道接面 1 接道位置指 定 1 接道方向1 接道幅員1 間取タイプ

(1)

間取部屋数

(1) 建物構造 建物工法 建物形式 地上階層 地下階層 所在階 築年月(西

暦) 総戸数 バルコニー 方向(1)

バルコニー 方向(2)

バルコニー

方向(3) 増改築年月 1 増改築履歴1 増改築年月 2 増改築履歴2 増改築年月 3 増改築履歴3 再建築不可

フラグ

※網掛け部分は既存住宅売買瑕疵保険データとの統合に用いた情報項目

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