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政策の「見直し」で変わり   つつある地域の役割

ドキュメント内 農林金融2019年01月号 (ページ 49-52)

農業の競争力強化を目的とした農業政策 は、規制改革推進会議や未来投資会議の示 すビジョンに基づいて着実に進められてお り、19年以降も継続する可能性が高い。し かし、その目指す将来の農業像は明確では ない。農業の競争力強化を農業者の所得向 上に向けた支援と位置づけている以上、農 業者との関係で政策の有効性を考えていく ことが必要である。

本稿では17〜18年に農業の競争力強化を 目的に可決成立した法律を中心に、運用の 過程などでどのような課題が発生するのか、

もしくは発生すると想定されるのかを検討 してきた。いずれの法律も今後の動きを見 なければ、農業の競争力強化の目的に資す るものであるのかという結論を出すことは できない。農業者の所得向上が農業競争力 の目的であるにもかかわらず、実質的には 想定とは異なる農業関連生産事業者の支援 となっている農業競争力強化支援法や、運 用が開始されれば農業者の取引にどのよう な影響を与えるのかの判断が難しい卸売市 場法等の改正等については、今後も注視し ていく必要がある。

一方、本稿で取り上げた種子法の廃止に 伴う道県等の条例・条例案は、地域の農業 者、農業団体の声を聞きながら個々の事情 に合わせて策定されており、農業競争力強 化の動きに対して、地域が独自の対応を取 った事例と言える。なかには、旧種子法の 対象ではない作目も条例に含めたケースも あり、地域の声をどのように取り込むかに より、対応は大きく分かれている。

農業政策の「見直し」でも、地域の取組 みの重要性が再認識されつつある。農地中 間管理事業の「見直し」では、規制改革推 進会議が「人・農地プラン」を重視する方 針を示した。外部からの企業参入の推進が 必ずしも進まないなかで、地域の主体的な 取組みが、むしろ農地の集積・集約化を進 めているという実態に基づいた「見直し」

と言える。

ただし、以上の動きをもって地域主導へ の転換と捉えるのは早計である。国が主導 する農業政策の枠組みのなかに地域のこれ までの取組みが位置づけられたにすぎない。

種子法の廃止に伴う対応に見るように、予 算が限られるなかで地域の農業者、農業団 体等が主体となり、新たに地域主導の取組 みを進めることが地域の実情に合った農業 政策を実現していくうえで重要になると考 える。

 <参考文献>

 安藤光義(2016「農地中間管理機構の現状と課題」

『日本農業年報62 基本計画は農政改革とTPPにど う立ち向かうのか―日本農業・農政の大転換―』農 林統計協会

 石田一喜(2018)「新たな在留資格『特定技能』の

概要―農業分野における外国人の受入れに着目して

」『農林金融』12月号

 一瀬裕一郎(2018)「最近の卸売市場を取り巻く諸 情勢」『農林金融』7月号

 岩元達弘(2017)「平成29年度農林水産関係予算に ついて」『ファイナンス』5月号

 植田展大(2018)「農業競争力強化に向けた制度改 革と農業政策の課題」『農林金融』1月号

 亀岡鉱平(2018)「農地集積の進展と土地改良区組 合員資格問題への対処―岩手県夏川沿岸土地改良区 の事例―」『農中総研  調査と情報』web誌、11

 小針美和(2014)「動き出す農地中間管理機構と現 場からの示唆」『農林金融』6月号

 小針美和(2015)「農地中間管理機構初年度におけ る農地集積の動向―求められる詳細な分析にもとづ く政策評価―」『農林金融』7月号

 田代洋一(2017)「農業競争力強化プログラム関連 法は何を狙うか(1)農業競争力強化支援法で農業 所得は増大するか」『文化連情報』7月号

 堀千珠(2017)「特集  始動!農業強化の支援法  新 たなステージを迎えた農政改革」『AFC  Forum』

8月号

 前田努(2018)「農林水産関係予算について」『フ ァイナンス』3月号

(うえだ のぶひろ)

〈発行〉 2018年12月

農林漁業金融統計 2018

農林漁業系統金融に直接かかわる統計のほか、農林漁業に 関する基礎統計も収録。全項目英訳付き。

発刊のお知らせ

A4判  193頁

頒 価  2,000円(税込)

編  集…株式会社農林中金総合研究所

〒151 - 0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷5 - 27 - 11  TEL 03(6362)7753 FAX 03(3351)1153 発  行…農林中央金庫

〒100 - 8420 東京都千代田区有楽町1 - 13 - 2

刺激的なタイトルだが、決して大げさで はない。常に語られる農業・農村の衰退で はなく「農家」に着目した点に意味がある。

2005年農林業センサスから「農業経営体」

という概念が登場したように、いまや農業 経営は必ずしも家族によって担われるもの でなくなった。貿易自由化などを背景に競 争力強化が叫ばれ、政策的にも大規模化や 法人化が促されている。基幹的農業従事者 が200万人を割り込んだというだけでなく、

農業構造の変化や政策動向も踏まえれば

「農家の消滅」にはリアリティーがある。

企業的農業と家族農業の違いは、土壌や 水、生態系などの自然資源との関係に反映 される。短期的な利益を優先すれば、農業 は資源収奪的になろう。規模の経済を追求 するモノカルチャー(単作)、化学物質やか んがい技術を駆使した近代農法は物質循環 や生態系を乱し、地力低下や水源の枯渇を 招く。いったん崩れた自然のバランスは回 復困難であり、企業は新たな収益機会を求 めてその土地を去ることになる。

一方、地域に根を下ろして生産と生活を 一体的に営む「農家」に収奪型農業は許さ れない。目先の収益性は低くても、持続可 能性が生存の条件である。本書では「生存

保障としての自然」が論じられている。

そのような農林水産業は地域の社会関係 資本(人間的つながり)によって支えられて いる。「コモンズ」(狭義では共有地を指すが、

ここでは森林や漁場などの自然資源を共同利 用する仕組み)は農山漁村のコミュニティー を基盤として成立する。「人と自然」「人と 人」という二つの関係性が「社会―生態シ ステム」として結びつく。

ただし、現代では地元住民だけでなく、

都市住民らを含む多様な主体の関与が求め られる。自然資源の保全はローカルな問題 にとどまらず、ナショナルな、あるいはグ ローバルな課題になっているからである。

半面、地域資源の賢明な活用は内発的発 (外部からの投資や開発に依存しない自立的 発展)を可能にする。本書では、国内に加 え欧州各地における環境・景観保護、農山 村再生、再生可能エネルギー導入などの豊 富な事例が紹介されている。これらは欧州 連合(EU)の共通農業政策(CAP)などの 政策に支えられているが、個々の事業活動 は市民が出資・参画する社会的企業や協同 組合によって担われている点も重要なポイ ントであろう。

「あとがき」で述べられたとおり、明治維 新から150年、日本における近代化とは何で あったのかが問われている。「坂の上の雲」

に巻かれ視界を失った今、進むべき道を考 えるヒントが本書には詰め込まれている。

――みすず書房 2018年10月

定価3,500円(税別)320頁――

(特任研究員 行友 弥・ゆきとも わたる 寺西俊一・石田信隆・山下英俊

編著

『 農家が消える

―自然資源経済論から

の提言― 』

統 計 資 料

ドキュメント内 農林金融2019年01月号 (ページ 49-52)

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