高 橋 光 一 *
III. 落下・切断過程の物理的詳細
3.1 摩擦による発熱
錘の質量はM=55 kgとする。錘の自由落下が終了した直後に,ロープに荷重が掛かり,ロー プは切断角に圧着されながら下方に伸び始める。このとき発生する,ロープ─切断角間の摩 擦熱について考える。以下で【見積もり】とあるのは,およその数値を見積もった (有効数 字高々1桁。)もので,数値の大体の把握のために提示している。数値の見積もりのために 必要な基礎データはBenenson等 (Benenson et al. 2000) のものを採用した。
(1) 自由落下が終了した時刻t = 0での錘の落下速度は
【見積もり】 2gh0+ 2$9.8$5+10 (m s−1) gは重力加速度,h0=5 mは自由落下距離である。
(2) 時刻t > 0におけるロープの長さをL(t)とすると,フックの法則によれば
である。ここでEはYoung率,Sはロープの断面積,F(t)は時刻s tでのロープの張力である。
ロープの半径は4 mmとする。
【見積もり】ロープが2割伸びたときの張力: dES+0.2$1000$106$3.1$R4$10-3W2=104R WN
(3) 錘の運動方程式 (錘の速度をv,鉛直座標は下向きを正とする。)
【見積もり】ug=g+ ESM +9.8+1000$106$3.155$R4$10-3W2
+9.8+900~910 (ms−2) *荷重がかかるとSも変化するが,ここでは定数として扱う。
*錘の運動への影響では,摩擦力は重力に比べ小さいのでここでは無視する。
s/ L0
L -ESM ug という変数について,調和振動子運動方程式 v0= 2gh0
L0
L tR W
-1/dR Wt = E1 S FSR Wt
dt2
d2L = dvdt =g- MFS =g-ESM L0
L -1
S X
= ML0
ES SMLES0ug-LX, ug/g+ ESM
を得る。これは簡単に解くことができ,解は
となる。ここで特性時間
を定義した。
【見積もり】 xc+
1000$10655$3.1$2.8$R4$10-3W2 + 0.0031+0.056 sR W
【見積もり】 xc
L0 +0.0562.8 +(m s−1)
錘の鉛直位置と速度はそれぞれ以下で与えられる:
初期条件は t = 0で L = L0, v = v0, s = s0であるから次式が成り立つ:
【見積もり】 s0=1-ESMug
=-ESMg
+-1000$10655$9.8$3.1$R4$10-3W2+-55$9.85$105 +-1.1$10-2
【見積もり】 s1= L0
xcv0 +0.0562.8$10+0.2
このs0,s1を用いて,時刻tにおけるLは次のように表される:
(4) 時刻tでの張力は
【見積もり】 xLc02+0.0562.8 2+890(ms−2)6
6 この値を使うと,張力の最大値は104 N程度となる。ちなみに石岡・笠井(1972)によれば,市販さ
れているザイルの‘荷重’は1,400〜2,700 kgで,これは1.4×104〜2.6×104 Nに相当する。
dt2
d2s =-MLES s0 /-xsc2
s=s0cos t/xR cW+s1sin t/xR cW
xc/ MLES0 =
~1
L= ES ugML0
+L0s v= dLdt =L0dsdt =
xc
L0R-s0sin t/xR cW+s1cos t/xR cWW
L0= ES
ugML0+L0s0, v0=L0xc
s1
L0
L = ES ugM
+s0cosRt/xcW+s1sinRt/xcW
=1-s0+s0cosRt/xcW+s1sinRt/xcW
Fs=M g-T ddt2L2 Y
=M g+T xLc02Rs0cos t/xR cW+s1sin t/xR cWWY
【注意】
が成り立つ。RMg-FsWdt=Mdvをt=0 (速度v0) から xf(速度v1) まで積分して
より
を得る。
(5) 切断までの錘の移動距離は
xf として張力発生から切断までの時間0.07sをとる7。すると xf/xc=0.07/0.056+1.25 で あるから次の見積もりが可能になる。
【見積もり】
切断角での接触距離 Dl(ロープが切断角に接した長さ) は,ロープが一様であれば静止し ているときの長さに比例する。すなわち Dl : DLf+l : L0。従って
【見積もり】 Dl+ L0
l DLf+2.80.5$0.53+0.095
切断角とロープ間の圧縮力FCはFSのオーダーであろう。ここでは
と近似する。静的釣り合いの場合には正しいが,実際にはロープは動いているのでこれより 小さいはずである。
切断角での摩擦力は,運動摩擦係数を nとすると
7 菊池久氏からの私信。
dFdts=M
xLc03R-s0sin t/xR cW+s1cos t/xR cWW
=xM vc2
M vR 1-v0W
=- xc
ML0Rs0sin t/xR cW-s1cos t/xR cWW;0xf
=- xc
ML0Rs0sinRxf/xcW-s1cosRxf/xcW+s1W
v1-v0=-xc
L0Rs0sinRxf/xcW-s1cosRxf/xcW+s1W
DLf=LR Wxf -L 0R W
=L0Rs0cosRxf/xcW+s1sinRxf/xcW-s0W
DLf+2.8R-1.1$10-2cos 1.25R W+0.2sin 1.25R W+1.1$10-2W +2.8R-1.1$10-2+0.2$0.95+1.1$10-2W+0.53 mR W
FC+ 2 Fs
である。従って,時間 xの間に摩擦力がする仕事Wfは
ここで,上の【注意】の関係式を使った。
【見積もり】n = 0.5,x = xf = 0.07として
こうして,切断角との摩擦力がロープに対してする仕事量の見積もりができた。これをも とに接触面を通してロープに与えられる熱量Qfを見積もることができる。次の仮定を採用 する。
仮定 仕事Wfのある割合が熱になる。すなわち
NITE実験では切断角は金属で,その熱伝導率はナイロンの数百倍である。このことを考 慮すると,ナイロンロープ内に流入する熱量は高々上記Qfの1/100程度であろう。
Qfによって,温度の上昇分は次のように見積もられる:
cpは圧着時に於ける単位質量当たりのロープの比熱,mとDlはロープが切断角と圧着接触 した質量と長さ,Spは圧着時のロープの断面積である。
【見積もり】
【参考】 ナイロン6のガラス転移温度〜50℃,融解温度225℃。低温で分子間結合が弱く なり始めることは注意しなければならない。DTfに対する上記の見積もりは,接触面にお いてはナイロン分子間の結合の分断が熱作用によって起こりうることを示している。
Ff=nFe+ 2 nFs
Wf= Ffdl= Ff 0
#
x dtdl dt+ 2nFS 0#
x 0#
Dl dLdtLl dt0
= 2 n L0
l FSvdt
0
#
x= 2 n L0
l FSxMc2
dFdtSdt=
2L0M nlxc2
FSR Wx 2
0
#
x2 L0M nlxc2
FSR Wx 2+
2$2.8$55
0.5$0.5$0.0562#552R9.8+890R-1.1$10-2$1+0.2$0.95WW2 +314 jR W
Qf=fWf, 0<f<1
DTf+ cQpmf
=fcWpmf
=fcptSpDl Wf
DTf+f cptSWfpDl +f
1.3$103$1.1$103$3143.1$R4$10-3W2$0.095 +47f(°C)