―中小企業診断士はコミュニティ・ビジネスにどう関わっていくべきか―
研究会調査プロジェクト−文責:田中尚武
コミュニティ・ビジネスについては、まだ定まった定義はないとはよく言われることで あるが、筆者にはエコマネー提唱者加藤敏晴氏の説明がわかりやすい。すなわち氏は「コ ミュニティ・ビジネスを地域密着型で、住民が主体となるビジネス、それも非営利活動を 含めた広い事業と定義付け、これまで行政と企業にまかせていた地域コミュニティの課題 解決を、住民の発想で、自らの手で解決していくほうが的外れがなくいく場合が多い」と 語っている(講談社刊 +α新書/マイクロビジネス)。 さらに、加藤氏は、コミュニティ・
ビジネスの定義・機能として、・地域の課題をビジネスチャンスとして捉える ・コミュニ ティ価値を経済価値に変換する ・社会的にイノベーションを起こす、そのために新しい ビジネス・モデルをつくる ・担い手は市民起業家・NPO ・コミュニティ活動をファ イナンスするとともに、地域経済を活性化する、を挙げている。介護しかり、子育てしか り、ごみ問題しかり、まちづくりしかり、環境づくりしかり、確かにコミュニティ・ビジネ スの芽は多種多様、これまでの行政や企業よりは地域住民の発想で取り組んだ方が効率的 といえる課題も多い。
今回の研究でも実に多彩な事例が紹介されているが、我々中小企業診断士は、このコミ ュニティ・ビジネスをどう捉えたら良いのであろうか。以下に若干の整理を試み、どう関 わっていったら良いのかを考えたい。
1.新しい経済コミュニティの誕生
コミュニティ・ビジネスを考える際、20世紀型ビジネス・システムと21世紀型ビジネ ス・システムの違いをしっかりと認識しておく必要がある。これも加藤氏の解説であるが、
20世紀型ビジネスモデルは「営利」が中心にあり、それがカバーできない部分を行政等が サービスという形で「非営利」としてフォローし、社会的ダイナミズムを生んできたが、
21世紀型ビジネス・システムは、逆に「非営利」が中心にあり、地域課題を解決していく、
そしてそれだけではカバーできない部分を企業が「営利」の形で取り組んでいくとしてい る。その「非営利」の部分が担うのが、変容せざるを得ないが引き続きの行政サービスで あり、新しいビジネス・スタイルであるコミュニティ・ビジネスというわけである。ボラ ンティア経済(エコマネー等)をコアに、コミュニティ・ビジネスがフォローし、さらに ナショナル&グローバル・ビジネスがフォローしていくとも言える(次ページ図1参照)。
一言付け加えれば、コミュニティ・ビジネスの担い手は、「企業家精神」を持っているこ とは当然であるが、市民社会を自立させようとする「篤志」の心を持つ「市民起業家」で あることは言うまでもない。「市民企業家」たちが地域社会を基盤に「新しい経済コミュニ ティ」すなわちコミュニティ・ビジネスを生んでいるのである。本事例でも「市民起業家」
の存在は数多く立証されている。
2.コミュニティ・ビジネスによるコミュニティの再生
地域の衰退、コミュニティの崩壊云々に関しては、いまさら指摘すべきこともないが、
筆者はその原因を以下のように整理してい る。すなわち市場経済の過度な拡大により、
村に代表される共同体(家族やコミュニテ ィ)という社会システム内で、自発的に処 理されていた共同作業(地産地消などの生 産活動)や相互扶助による生活保障活動(子 育てや福祉・医療等)が衰退し、それを補 うために税金による政府の代替が進展、結 果として一元管理的な中央集権的福祉国家 の誕生によりコミュニティがその機能を必 要としなくなり衰退したと考えている(図 2参照)。関心のある方には神野直彦「地域 再生の経済学」の一読をお勧めする。
また都会では、職と住が切り離され、同 時に男性は職場へ、女性は家庭へといった 男女分業システムが発達し、特に男性は会 社人間として、地域とはかけ離れた存在と 市場経済
共同体という社会システム
過度な 発展
衰 退
中央集権的福祉国家の誕生 生活保障活動 コミュニ 共同作業
テ
ィ
生活保障活動 コミュニ 共同作業テ
ィ
衰 退
図 2 コミュニティの衰退 コミュニティ・ビジネス
20世紀型システム 21世紀型システム
営利 非営利
ダイナミズムの創造
非営利がコアに
コミュニティ・ビジネス ナショナル&グローバル・ビジ ネス
ボランティア 経済
ビジネスの3層構造
非営利 ダイナミズムの創造 営利
出展:エコマネートーク討議資料 (加藤敏晴氏作成に一部加筆)
コミュニティ・ビジネス コミュニティ・ビジネス
20世紀型システム 21世紀型システム
営利 非営利
ダイナミズムの創造
非営利がコアに
コミュニティ・ビジネス ナショナル&グローバル・ビジ ネス
ボランティア 経済
ビジネスの3層構造
非営利 ダイナミズムの創造 営利
出展:エコマネートーク討議資料 (加藤敏晴氏作成に一部加筆)
コミュニティ・ビジネス
図1 コミュニティ・ビジネスの構造
なっている。
コミュニティ・ビジネスは、地域の課題を地域の住民が自ら解決していくモデルであり、
コミュニティ・ビジネスが発展していけば、今まで地域との関連性も希薄であった男性社 会人も地域との関係性が深まり、「自己実現」の場を得ることができる。結果として、地域 の復活、地域コミュニティの活性化に大いに貢献することとなる。とくに、団塊の世代が 続々とリタイアする時期を目前にし、その「新」住民の「知的資本」を埋蔵させて置くこ となく、新たなビジネスを地域に創造し、新たな価値を社会に供給していくコミュニティ・
ビジネスは、その意味でも現代的意義を大きく有しているといえよう。
3.中小企業診断士の関わり方
前段ではコミュニティ・ビジネス誕生の背景と意義を整理した。これを前提に中小企業 診断士のコミュニティへの関わり方を考えてみたい。
(1)スピリットの共有が必要である
ここで言うスピリットとは「企業家精神」だけに留まらず「篤志」の心をも意味してい る。すなわち、コミュニティ・ビジネスでは、金儲けというよりは社会貢献手段としての ビジネスという意味が強く、当然将来へのビジョン、それを支える理念・思いが強い。「メ ンバー全員の『ビジョンの共有と使命感』が牽引車」(コネット湘南)という訳である。我々 診断士がコミュニティ・ビジネスに関わる際は、まずこのことを理解したい。付言すれば、
自分自身はその活動をビジネスとは理解してなく、コミュニティ・ビジネスという言葉さ え嫌うことが多いのも事実である。事例の「中間支援組織に望むこと」の中にも「社会貢 献の意義を社会に対してさらにひろく浸透していきたいので、中間支援機関としてもそう いうスピリットをもって活動してほしい」(サンクスネイチャーバスを走らす会)、「『ノー マライゼーション社会の実現』『心のバリアフリーの実現』の理念を共有し、メンバーとし て活動に参画してほしい。共生社会を目指し、協労、共創していきたい」(コミュニケーシ ョン・スクエア21)とあるのはそのことを意味している。診断士がコミュニティ・ビジ ネスに関わる前提と言えよう。
(2)経営支援の領域は広い
「いろいろな団体の経営状態を実際に見ている方からの、現状の評価や類似団体との比 較、広い視野に立ったアドバイスが欲しい。一般論ではなく、実際の活動状況を深く理解 してもらった上で、第三者の目から見た具体的な話を聞きたい」(ちばMDエコネット)、
のように、事例を見てみると、我々診断士に対する願望は種々様々であり、「中小企業診断 士にもまさに活躍の場がある」(えがおつなげて)というエールさえ頂いており、ある意味 では腕の振るい甲斐がある分野だと言えよう。いわゆるヒト・モノ・カネ・情報を始め、
ノウハウ・体制・販売・拠点等経営の細々したことへの支援依頼には誠意をもって応える のは当然であるが、ここで注意したいことは、コミュニティ・ビジネスの経営スタイルは、
NPOや任意団体の形式をとっていることも多く、組織としては未熟なことが特徴的に指 摘できることである。経営コンサルとしての診断士は、経営を価値創造のプロセスとして 考え、組織を森と木のごとく捉え、木(経営コンテンツ)を見ると同時に森(経営システ