116
117
5.2.2 組織の戦略的な人材ポートフォリオマネジメントへの活用を
(1) 研究者の多様化
本調査の結果から、個人業績評価制度は教員・研究者個人の意識改革や教育レベル、研究 レベルの向上にある程度資している状況が見られた。しかし、近年、教員や研究者に求めら れる役割は多様化している状況があり、必ずしも全ての教員・研究者が教育・研究・社会貢 献といった多様な機能に同じように取り組み、能力を向上させる必要はなくなりつつある。
逆に特定の機能に優れた教員を奨励することや、多様な年代の教員を維持することで、組織 全体として求められる多様な機能が効果的かつ持続的に実現されることが望まれる。そのた めには、組織内の人材ポートフォリオマネジメントが重要であり、評価制度がそれに資する ことが今後は一層求められると考えられる。
調査からは既に、年俸制や任期制、テニュアトラック制度などの雇用形態の多様化が進ん でいる状況が得られており、雇用形態ごとの評価方法にも違いが見られた40。今後は、それ ら雇用形態の趣旨を踏まえたより有効な評価制度や処遇方式を構築していくことが課題で ある。それにより、特定の役割に優れた人材や次世代のリーダーの育成や確保・維持してい くことが求められる。若手教員については、育成の観点から成果だけではなくプロセスも勘 案した評価基準・評価方法とする、あるいは評価結果の活用は処遇の安定化を重視したもの にするなどの工夫が行われるべきである。
(2) 組織戦略
また、近年では社会課題に対応した研究や分野横断的な研究へのニーズが増大しており、
部局の壁を越えた研究組織の組成が行われている。このような組織の戦略的な取り組みの検 討の際に個人業績評価を活用する方法も考えることができるだろう。個人業績評価制度は、
各教員の研究業績の情報収集や上長などとの意見交換、優れた研究成果への褒賞の情報提供 などを通じて、教員間のボトムアップでの交流やネットワーキングを促進することが可能で あるし、また、外部環境や政策課題を踏まえてトップダウンで設定される課題に適切な知識、
スキルを持った研究者を配置するために評価結果情報を活用することも可能である。このよ うに、組織として個々の研究者の適性や志向性に対応した評価制度とすることによって、組 織内での適切な役割分担を目指した組織編制、エフォート管理等へと活用できるだろう。
5.3 効果の検証に基づく改善を
評価制度の導入から一定期間が過ぎた現在、被評価者等からのフィードバックを受けて評 価のプロセス(評価者、評価項目、評価基準等)の改善が行われている。今後はさらに一歩 進み、評価を実施することによって目的が達成されているか、つまり組織的な教育研究力の 向上に結びついているかについて効果を検証し、改善へとつなげていくことが重要である。
評価結果の活用、特に雇用形態の多様化への取組については緒に就いたばかりであり、試行 錯誤の段階にあると言える。評価結果の活用によって狙い通りの効果が出ているか、あるい は予想しなかった問題が発生していないかを検証することが必要である。
40 前述の「4.1.2外部環境の変化により、評価制度も多様化しつつある」参照。