2.7.3 臨床的有効性の概要
2.7.3.4 推奨用法・用量に関する臨床情報の解析
本剤は反復投与法で開発されてきた.この投与方法を採用した背景を以下に示した.
本剤の有効成分である
Org 37462(ガニレリクス酢酸塩)は GnRH
アンタゴニストであり,水溶性,安定性及び受容体への親和性が高い化合物である.薬物動態学的性質としては,以下のような点が挙げ られる.
・Org 37462 は単回皮下投与後,速やかにかつほぼ完全に吸収される(ヒトにおける絶対的バイオア ベイラビリティ
90%以上).
・Org 37462の消失半減期は約
13
時間である.GnRH
アンタゴニストはGnRH
受容体に競合的に結合して薬効を示すという点を考慮すると,早期LH
上昇発現を抑制するためには,治療期間中のOrg 37462
の血清中濃度は,一定のレベルに保たれる必 要があると考えられる.上記の薬物特性を考慮し,recFSH投与開始後
6
日目からOrg 37462
の0.25 mg
を反復皮下投与すると いう用法・用量で開発されてきた.このような反復投与の用法・用量では,GnRHアンタゴニストの曝 露量は低く抑えられる一方で,十分かつ低すぎないLH
及びFSH
の抑制が継続して得られるという利点 がある.一方,GnRHアンタゴニストを高用量で単回投与した場合には,hCG投与に至るまでに追加投 与が必要となり,低用量のGnRH
アンタゴニストにより治療を継続するといった事態も考えられる.高用量単回投与と低用量反復投与について,それぞれの利点及び欠点を考慮し,Org 37462 は低用量 反復投与の用法・用量で開発することとした.現在,Org 37462 の低用量反復投与法は,世界各国で高 く評価され,GnRHアンタゴニスト法として臨床使用されている.
2.7.3.4.1 外国人女性における Org 37462
の至適用量についてrecFSHによるCOSを実施する外国人女性におけるOrg 37462
の最小有効用量は,用量設定試験として38602
試験で検討した.38602試験の結果を表 2.7.3-36に示した.表 2.7.3-36
38602
試験の主要な結果(PPグループ)投与群
有効性パラメータ Org 37462
0.0625 mg群 0.125 mg群 0.25 mg群 0.5 mg群 1 mg群 2 mg群
N=31 N=65 N=69 N=69 N=65 N=30
Org 37462投与中にLHが上昇
(10 IU/L以上)した被験者数(%) 5(16.1%) 7(10.8%) 2(2.9%) 0(0%) 1(1.5%) 0(0%)
N=30 N=65 N=69 N=69 N=64 N=26
治験薬投与例あたりの
採卵数平均値(標準偏差) 9.0(5.66) 9.6(5.37) 10.0(5.39) 8.8(6.55) 9.3(6.00) 8.6(4.41)
N=30 N=65 N=68 N=69 N=64 N=26
治験薬投与例あたりの
良好胚数平均値(標準偏差) 3.8(2.76) 3.3(2.64) 3.3(2.97) 2.5(2.69) 3.3(2.74) 3.5(3.65)
N=30 N=65 N=68 N=69 N=64 N=26
治験薬投与例あたりの
胎児心拍陽性妊娠被験者数(%) 7(23.3%) 15(23.1%) 24(35.3%) 8(11.6%) 9(14.1%) 0(0%)
38602
試験では,卵胞数,採卵数,良好胚数,胎児心拍陽性妊娠率について用量選択を検討し,0.125 mg
と
0.25 mg
がともに至適用量として選択された.しかし,0.125 mg
は卵巣刺激中に早期LH
上昇(10 IU/L2.7.3.4.2 第Ⅲ比較対照試験の結果について
38602
試験で選択された至適用量(0.25 mg)の有効性及び安全性を検証するために,欧米で繁用されているGnRHアゴニスト(ブセレリン,リュープロライド及びトリプトレリン)を用いたロングプロト コール法を対照治療として第Ⅲ相比較対照試験(38607,103001,38616試験)を実施した.38607及び
103001
試験の有効性の結果は,それぞれ2.7.3.2.3項及び2.7.3.2.4項に示した.なお,トリプトレリンは日本では発売されていないため,有効性の評価資料には含めていない(2.7.6.10項及び
5.3.5.1
項参照).いずれの試験においても
GnRH
誘導体投与期間,recFSH投与期間,recFSH総投与量はGnRH
アゴニ スト群よりもOrg 37462
群で少なかった.Org 37462
投与中のLH
上昇の発現頻度は,38607試験で3.7%(17
例),103001試験で4.5%(9
例)であり,本剤の
0.25 mg
投与により,効果的にLH
上昇を抑制できることが示された.治験薬投与例あたりの採卵数の平均(標準偏差)は,
38607
試験ではOrg 37462
群で8.7
(5.6)個,ブ セレリン群で9.7(6.2)個であり,103001
試験ではOrg 37462
群で11.6(6.7)個,リュープロライド群
で14.1(8.3)個であった.
また,Org 37462群の治験薬投与例あたりの妊娠継続率は
38607
試験で20.7%,103001
試験で30.8%
であり,
GnRH
アゴニストのブセレリン群で26.1%,リュープロライド群で 36.4%であった.全般的に,
第Ⅲ相の開発段階で得られたデータは,臨床的に良好な
Org 37462
の有効性を示すものであった.2.7.3.4.3 日本人女性における Org 37462
の至適用量について日本人女性におけるOrg 37462の用量反応関係及び最小有効用量は
38649
試験で検討した.38649
試験 では,Org 37462の3
用量(0.125,0.25,0.5 mgの 1
日1
回皮下投与)を比較した.日本人女性における 最小有効用量も38602
試験の最小有効用量と同じ用量(0.25 mg)が予測されたことから,38649試験で は被験者への負荷とリスクを考慮して,外国人女性で選択された用量(0.25 mg)と,それより1
段階下(0.125 mg)と上(0.5 mg)の用量を用いた.38649試験の結果を表 2.7.3-37に示した.
表 2.7.3-37
38649
試験の主要な結果(PPグループ)投与群
有効性パラメータ Org 37462
0.125 mg群 0.25 mg群 0.5 mg群
N=88 N=86 N=90
Org 37462投与中にLHが上昇
(10 IU/L以上)した被験者数(%) 10(11.4%) 1(1.2%) 1(1.1%)
N=88 N=86 N=90
治験薬投与例あたりの
採卵数平均値(標準偏差) 8.6(5.62) 8.6(6.03) 8.6(5.55)
N=88 N=86 N=90
治験薬投与例あたりの
良好胚数平均値(標準偏差) 2.7(2.57) 3.4(3.50) 3.0(3.15)
N=88 N=84 N=89
治験薬投与例あたりの
胎児心拍陽性妊娠被験者数a(%) 30(34.1%) 20(23.8%) 16(18.0%)
a)軽微な実施計画書違反のあった被験者(3例)は除いた.
日本人女性では,Org 37462投与中の
LH
上昇(10 IU/L以上)の発現に関して,統計学的に有意な用 量反応関係が認められ(p = 0.0008,Cochran-Armitage検定),COSを実施する女性において早期LH
上したがって,
ART
のためのCOS
を実施する日本人女性において,LH
上昇を抑制するための最小有効 用量はOrg 37462
の0.25 mg
であると考えられた.2.7.3.4.4 体重によって Org 37462
の用量を調節する必要性についてIVF又はICSIによるCOSを実施する女性において,体重に依存した投与量が用いられるべきかどうか
を検討するために,38641 試験を実施した.本試験では,体重で調整したOrg 37462 投与法と通常のOrg 37462
の0.25 mg固定用量投与法における薬物動態及び薬力学パターンを比較した.体重による調整
用量群に割り付けられた被験者には,以下の計画に従って当該
1
日用量を投与した(表 2.7.3-38).また,Org 37462
の固定用量投与に割り付けられた被験者には,1
日用量としてOrg 37462の0.25 mgを投与した.
表 2.7.3-38
38641
試験の投与計画体重 Org 37462 1日用量
55 kg未満 0.15 mg
55~69 kg 0.20 mg
70~80 kg 0.25 mg
80 kg超え 0.30 mg
Org 37462
濃度パラメータと体重の回帰直線の比較によって,2
つの投与群の薬物動態を評価し,また,LH
濃度パラメータと体重の回帰直線の比較によって,薬力学を評価した(2.7.6.9項及び5.3.5.1
項参照).その結果,
Org 37462
の曝露量と体重との相関は,体重による調整用量投与法と0.25 mg
固定用量投与法 で異なることが示唆された.しかし,薬力学(血清中のLH
濃度への影響)に関しては,調整用量群と 固定用量群間に臨床的に意味のある違いはなかった.Org 37462
の投与中,固定用量群の1
例と調整用量群の6
例に早期の血清LH上昇がみられた.hCG投与日の卵胞数及び大きさ,hCG投与日の血清中E2濃度,Org 37462 の総投与量,Org 37462 の投与期間,
recFSHの総投与量,卵巣刺激の期間,良好胚数,胎児心拍陽性妊娠率に関しては,両群間に臨床的に意
味のある違いはみられなかった.したがって,体重に応じて
Org 37462
の投与量を変える必要はないと考えられた.さらに,日本人女性におけるOrg 37462 の有効性及び安全性の結果を体重別に層別して検討した
(2.7.3.2.2項 表 2.7.3-12及び表 2.7.3-13参照).
その結果,有効性については,LH 上昇の発現率,採卵数,良好胚数,胎児心拍陽性妊娠率と被験者 の体重との間には一定の傾向は見出せなかった.また,安全性についても,有害事象の発現率と被験者 の体重には一定の傾向はみられなかった.
したがって,
ART
のためのCOS
を実施する日本人女性においても,被験者の体重の違いがOrg 37462
の有効性及び安全性に影響を与えることはなく,体重に応じてOrg 37462
の投与量を変える必要はない と考えられた.2.7.3.4.5 日本における推奨用法・用量
以上の臨床試験結果に基づき,ARTのための
COS
を実施する日本人女性患者における本剤の推奨用 法・用量を以下のとおりに設定した.原則として卵胞刺激ホルモン製剤投与の