3.4. の末尾で指摘した通りである。そうすると,結局,データ保護監察官 は,主として事後的な場面で,裁判官に欠ける技術面を中心とする専門性を
4.4.4.3. 拡大可能性
七二
らに,Scwabenbauer は,利益相反についての規定が G10法など現行法上存 在していないこと
(648),裁判的判断の核心をなすともいえる理由提示について 現行法上は規定がないこと
(649),委員の再任が否定されず,任命機関の影響が 廃しきれない可能性があること
(650)なども,問題であるとして,現状の G10審 査会が裁判官留保の完全な代替物といえるだけの存在とはなっていないという
(651)
。そして彼は,事前の場面では機密性の観点などから裁判官,裁判所の関
与を排除することが止むを得ないにしても,現状において,事後的な場面で は,裁判官,裁判所による審査を確保することが求められると結論づける
(652)
。Schwabenbauer が問題視するような事項については,法律で明示的に
定める必要があるのか,運用,慣行に委ねれば足りるのかは,別途論じうる
ところであるが,G10審査会についても,制度設計になお改善,あるいは合
理化・明確化の余地があるということは確認できたといえよう。
七一
憲法上も認められている裁判官留保も,多かれ少なかれ似た性格を有するも のであって,とりわけ,その裁判官留保が裁判官の能力などとの関係で必ず しも十分に機能しないような場面において,裁判官とは異なる専門知識を持 つ委員によって構成される組織による審査・決定によって代替させるという ことは,権力分立の基本的な発想からしても,否定されるべきではないだろ
う
(654)。連邦憲法裁判所の近時の判例も,G10審査会に関するかつての判決な
どを引きながら,隠密裡の私的領域・私的情報への侵入について,行われる 事前の審査が裁判所によるものである必要はなく,同等に独立性や命令から の解放性を確保しているものであれば良いし,逆に,裁判所を含め,そのよ うな性格を有する機関による審査を設定する必要があると判示しているとこ ろである
(655)。
ただし,裁判所の機能に限界があるために,他の専門性を有する機関に審 査・決定を委ねるというのであれば,独立機関による監督は,実効的なもの で,裁判官留保の欠点を実際に補いうるものでなければならないだろう。こ の点,介入措置の執行について,現行の G10審査会が承認を与える割合が非 常に高いものとなっていることは実効性を疑わせるものである
(656)し,対象を 相当限定している G10審査会であれば,4名の委員による,月1回を基本と する(G10法15条4項[ただし,最低限月に1回とされている])会合で対応 が可能だとしても,より広く情報収集行為などに範囲を広げるのであれば,
人員も,審査の請求に対する体制も,大規模なものとならざるを得ない
(657)。 Schwabenbauer のいうところ
(658)にしたがって,現行の G10審査会の制度を より強化したような仕組みを構築しなければならないのであれば,尚更コス トは大きなものとなる。これらのことを考慮すると,既存の裁判所機構を利
⎝
654
前掲註⎝640
及び⎝641
,並びにそれらに対応する本文参照。⎝
655
BVerfGE120,274(332);BVerfG(1.Senat),Urteilvom19.5.2020,1BvR2835/17, Rn.275.⎝
656
前掲註⎝630
及び⎝644
,並びにそれらに対応する本文参照。⎝
657
SieheWebera.a.O.(Anm.210),S.209f..⎝
658
前掲註⎝647
乃至⎝652
と,それらに対応する本文参照。七一
憲法上も認められている裁判官留保も,多かれ少なかれ似た性格を有するも のであって,とりわけ,その裁判官留保が裁判官の能力などとの関係で必ず しも十分に機能しないような場面において,裁判官とは異なる専門知識を持 つ委員によって構成される組織による審査・決定によって代替させるという ことは,権力分立の基本的な発想からしても,否定されるべきではないだろ
う
(654)。連邦憲法裁判所の近時の判例も,G10審査会に関するかつての判決な
どを引きながら,隠密裡の私的領域・私的情報への侵入について,行われる 事前の審査が裁判所によるものである必要はなく,同等に独立性や命令から の解放性を確保しているものであれば良いし,逆に,裁判所を含め,そのよ うな性格を有する機関による審査を設定する必要があると判示しているとこ ろである
(655)。
ただし,裁判所の機能に限界があるために,他の専門性を有する機関に審 査・決定を委ねるというのであれば,独立機関による監督は,実効的なもの で,裁判官留保の欠点を実際に補いうるものでなければならないだろう。こ の点,介入措置の執行について,現行の G10審査会が承認を与える割合が非 常に高いものとなっていることは実効性を疑わせるものである
(656)し,対象を 相当限定している G10審査会であれば,4名の委員による,月1回を基本と する(G10法15条4項[ただし,最低限月に1回とされている])会合で対応 が可能だとしても,より広く情報収集行為などに範囲を広げるのであれば,
人員も,審査の請求に対する体制も,大規模なものとならざるを得ない
(657)。 Schwabenbauer のいうところ
(658)にしたがって,現行の G10審査会の制度を より強化したような仕組みを構築しなければならないのであれば,尚更コス トは大きなものとなる。これらのことを考慮すると,既存の裁判所機構を利
⎝
654
前掲註⎝640
及び⎝641
,並びにそれらに対応する本文参照。⎝
655
BVerfGE120,274(332);BVerfG(1.Senat),Urteilvom19.5.2020,1BvR2835/17, Rn.275.⎝
656
前掲註⎝630
及び⎝644
,並びにそれらに対応する本文参照。⎝
657
SieheWebera.a.O.(Anm.210),S.209f..⎝
658
前掲註⎝647
乃至⎝652
と,それらに対応する本文参照。七〇
用し,裁判官の専門性を強化する方が,まだ現実的であるように思われる。
また,裁判官にない専門性の要求と,裁判官によるのと同等の法的統制の要
求という二つの要求が緊張関係を持つものであるという点を改めて想起すれ
ば,その意味でも人材の確保などの点で実現可能性は疑わしいと言わざるを
得ない。前述の連邦憲法裁判所の判決の事案も,オンライン捜索
(659)や外国で
の戦略的情報収集
(660)など,かなり特異な領域に関する事案を扱ったものであ
ることも踏まえれば,G10審査会型の特別な独立統制機関を設置すべき分野
は,結局は,相当程度限定されざるを得ないだろう。
ドキュメント内
続・権利ドグマーティクの可能性(3・完): ドイツにおける裁判官留保の新展開と限界
(ページ 53-56)