抗弁の接続に関する規定を設けるかどうかについては,次のような考え方が あり得るが,どのように考えるか。
【甲-1案】 消費者が,物品若しくは権利を購入する契約又は有償で役務の
提供を受ける契約(以下「供給契約」という。)を締結する際に,供給契約
の相手方である事業者とは異なる事業者との間で金銭消費貸借契約を締結
した場合において,①供給契約と金銭消費貸借契約との間に一体性[密接
な関連性]が認められ,かつ,②供給者と貸主との間に両契約を一体のも のとして締結する旨の合意があったときは,借主は供給者に対して主張す ることのできる事由をもって貸主に対抗することができる旨の規定を設け るものとする。
【甲-2案】 与信の態様が消費貸借かどうか,与信を受けた者が消費者かど うかにかかわらず,供給契約の相手方である事業者とは異なる事業者との 間で与信に係る契約が締結された場合において,①供給契約と与信に係る 契約との間に一体性[密接な関連性]が認められ,かつ,②供給者と与信 をした者との間に一体性[密接な関係]が認められるときは,与信を受け た者は供給者に対して主張することのできる事由をもって与信をした者に 対抗することができる旨の規定を設けるものとする。
【乙案】 規定を設けないものとする。
○中間的な論点整理第44,5「抗弁の接続」[134頁(328頁)]
消費貸借の規定の見直しに関連して,消費者が物品若しくは権利を購入する契約 又は有償で役務の提供を受ける契約を締結する際に,これらの供給者とは異なる事 業者との間で消費貸借契約を締結して信用供与を受けた場合に,一定の要件の下で,
借主である消費者が供給者に対して生じている事由をもって貸主である事業者に対 抗することができる(抗弁の接続)との規定を新設するべきであるとの考え方(後 記第62,2⑦参照)が示されている。このような考え方の当否について,民法に 抗弁の接続の規定を設けることを疑問視する意見があることも踏まえて,更に検討 してはどうか。
また,その際には,どのような要件を設定すべきかについても,割賦販売法の規 定内容をも踏まえつつ,更に検討してはどうか。
【部会資料16-2第1,6[10頁]】
《参考・現行条文》
(包括信用購入あつせん業者に対する抗弁)
割賦販売法第30条の4 購入者又は役務の提供を受ける者は,第二条第三項第一 号に規定する包括信用購入あつせんに係る購入又は受領の方法により購入した商 品若しくは指定権利又は受領する役務に係る第三十条の二の三第一項第二号の支 払分の支払の請求を受けたときは,当該商品若しくは当該指定権利の販売につき それを販売した包括信用購入あつせん関係販売業者又は当該役務の提供につきそ れを提供する包括信用購入あつせん関係役務提供事業者に対して生じている事由 をもつて,当該支払の請求をする包括信用購入あつせん業者に対抗することがで きる。
2 前項の規定に反する特約であつて購入者又は役務の提供を受ける者に不利なも のは,無効とする。
3 第一項の規定による対抗をする購入者又は役務の提供を受ける者は,その対抗 を受けた包括信用購入あつせん業者からその対抗に係る同項の事由の内容を記載 した書面の提出を求められたときは,その書面を提出するよう努めなければなら ない。
4 前三項の規定は,第一項の支払分の支払であつて政令で定める金額に満たない 支払総額に係るものについては,適用しない。
(準用規定)
割賦販売法第29条の4 (略)
2 第三十条の四の規定は,第二条第二項第一号に規定するローン提携販売に係る 分割返済金の返済についてローン提携販売業者に対して生じている事由をもつて ローン提供業者(同号に規定する債務の保証を受けてローン提携販売に係る購入 者又は役務の提供を受ける者に対して同号に規定する金銭の貸付けを業として行 う者をいう。)に対抗する場合に準用する。この場合において,第三十条の四第一 項中「商品」とあるのは「指定商品」と,「役務に」とあるのは「指定役務に」と,
「第三十条の二の三第一項第二号の支払分」とあるのは「第二十九条の三第一項 第二号の分割返済金」と,「当該役務」とあるのは「当該指定役務」と,同条第四 項中「支払分」とあるのは「分割返済金」と読み替えるものとする。
3 (略)
(個別信用購入あつせん業者に対する抗弁)
割賦販売法第35条の3の19 購入者又は役務の提供を受ける者は,個別信用購 入あつせん関係販売契約又は個別信用購入あつせん関係役務提供契約に係る第三 十五条の三の八第三号の支払分の支払の請求を受けたときは,当該契約に係る個 別信用購入あつせん関係販売業者又は個別信用購入あつせん関係役務提供事業者 に対して生じている事由をもつて,当該支払の請求をする個別信用購入あつせん 業者に対抗することができる。
2 前項の規定に反する特約であつて購入者又は役務の提供を受ける者に不利なも のは,無効とする。
3 第一項の規定による対抗をする購入者又は役務の提供を受ける者は,その対抗 を受けた個別信用購入あつせん業者からその対抗に係る同項の事由の内容を記載 した書面の提出を求められたときは,その書面を提出するよう努めなければなら ない。
4 前三項の規定は,第一項の支払分の支払であつて政令で定める金額に満たない 支払総額に係るものについては,適用しない。
(補足説明)
1 消費貸借は,販売信用,すなわち物品若しくは権利を購入する契約又は有償で役 務の提供を受ける契約が締結される際にその代金の支払について信用を供与する類 型の信用取引においても,そこでの信用供与の一態様として重要な機能を果たして いる。販売信用には,物品等の供給者自身が信用を供与する類型と,供給者でない
者が信用を供与する類型(第三者与信型)とがあるが,第三者与信型の販売信用に おいては,物品の引渡し等と代金相当額の決済とで相手方が異なることから,供給 契約において意思表示の瑕疵があったり,債務不履行があったりした場合でも,信 用の供与を受けた者は,信用の供与をした者からの支払請求を当然には拒むことが できない。このため,消費者保護の観点から,信用の供与を受けた消費者が供給者 に対して生じている事由をもって信用の供与をした者に対抗すること(抗弁の接続)
を認める必要性が指摘されてきた。
2 現行法においては,割賦販売法が,第三者与信型の販売信用のうちの一定の類型 について抗弁の接続の規定を設けている。例えば,包括信用購入あっせん(同法第 2条第3項第1号,第2号)においては,購入者等は,一定の適用除外事由がある 場合を除き,供給者に対して生じている事由をもって,あっせん業者に対抗するこ とができるとされている(同法第30条の4,第30条の5)。包括信用購入あっせ んとは,購入者等(購入者又は役務の提供を受ける者)が供給者から物品等を購入 するなどする際に,信販会社等のあっせん業者から発行されたクレジットカード等 を提示するなどすることによって,あっせん業者にその代金に相当する額を直接的 又は間接的に供給者に支払ってもらい,その後,あっせん業者に対してその額を2 か月を超える期間にわたる支払を予定して支払っていくという取引形態である。
このほか,割賦販売法は,個別信用購入あっせん(同法第2条第4項),ローン提 携販売(同法第2条第2項第1号,第2号)についても,抗弁の接続の規定を設け ている(個別信用購入あっせんにつき同法第35条の3の19,ローン提携販売に つき同法第29条の4第2項,第30条の4,第29条の4第3項,第30条の5)。
個別信用購入あっせんとは,購入者等が供給者から物品等を購入するなどする際に,
信販会社等のあっせん業者から発行されたクレジットカード等を利用することなく,
当該物品の購入等に関して,あっせん業者にその代金に相当する額を直接的又は間 接的に供給者に支払ってもらい,その後,あっせん業者に対してその額を2か月を 超える期間にわたる支払を予定して支払っていくという取引形態である。ローン提 携販売とは,購入者等が供給者から物品等を購入するなどする際に,金融機関から 発行されたカード等を提示するなどによって,供給者又は供給者から委託を受けた 信用保証会社に保証人となってもらって金融機関からその代金に相当する額の融資 を受け,これを供給者への支払に充てるとともに,その後,金融機関に対してその 額を2か月以上の期間にわたり,かつ,3回以上に分割して支払っていくという取 引形態である。
なお,個別方式のローン提携販売,すなわち,消費者が供給者から物品等を購入 するなどする際に,金融機関から発行されたカード等を利用することなく,当該物 品の購入等に関して,供給者又は供給者から委託を受けた信用保証会社に保証人と なってもらって金融機関からその代金に相当する額の融資を受け,これを供給者へ の支払に充てるとともに,その後,金融機関に対してその額を一定の方法により支 払っていくという取引形態もかつてはローン提携販売と呼ばれていたが,平成20 年の割賦販売法改正により,ローン提携販売ではなく個別信用購入あっせんに該当