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所得の第 2 次分配勘定 (Secondary distribution of income account)

第3 章  勘定体系の解説

第 3 節   所得の第 2 次分配勘定 (Secondary distribution of income account)

3.61.

「所得の第

2

次分配勘定」とは、制度部門別に、前述の「第

1

次所得の配分勘定」で導

出された「第

1

次所得バランス」を源泉とし、所得・富等に課される経常税や、社会保 険に係る負担や給付、その他の経常移転の受払を記録する勘定で、「可処分所得」をバ ランス項目とする。これまでのバランス項目と同様、可処分所得は固定資本減耗を含 むか否かで「総」と「純」に分かれる。

   

第1次所得の配分勘定

(支払側) (受取側)

財産所得

 海外直接投資に関する再投資収益 +X

第1次所得バランス +X

所得の使用勘定

(支払側) (受取側)

可処分所得 +X

貯蓄 +X

資本勘定

(資産の変動) (貯蓄・資本移転による正味資産の変動)

貯蓄 +X

純貸出(+)/純借入(-) +X 金融勘定

(資産の変動) (純貸出/純借入及び負債の変動)

その他の金融資産 純貸出(+)/純借入(-) +X

  直接投資 +X

図表

11

  所得の第

2

次分配勘定 

所得・富等に課される経常税(

Current taxes on income, wealth, etc.

) 

3.62.

「所得・富等に課される経常税」とは、主に、毎課税期間に定期的に支払われる家計の

所得、法人企業の利潤に課される税、さらに富に課される税から成る。(支払う側から 見れば)定期的に課されるわけではない相続税や贈与税は「資本税」と呼ばれ、本項目 ではなく後述の資本勘定の「資本移転」として記録される。所得・富等に課される経常 税は、所得の第

2

次分配勘定においては、一般政府の受取、非金融法人企業、金融機 関、家計の支払に記録される。

3.63.

「所得・富等に課される経常税」は、さらに「所得に課される税」と「その他の経常税」

に分かれる。

JSNA

の場合、「所得に課される税」には、源泉所得税、申告所得税、法 人税、道府県民税(所得割、法人税割、配当割、利子割)、市町村民税(所得割、法人 税割)、日銀納付金等が、「その他の経常税」には家計の負担する自動車関連諸税、事業 税(地方特別法人税を含む)、道府県民税や市町村民税の個人均等割等が含まれる

(支払側) (受取側)

所得・富等に課される経常税 第

1

次所得バランス(純)

 (1)所得に課される税 (再掲)第

1

次所得バランス(総)

 (2)その他の経常税      (控除)固定資本減耗

純社会負担 所得・富等に課される経常税

 (1)雇主の現実社会負担  (1)所得に課される税  (2)雇主の帰属社会負担  (2)その他の経常税  (3)家計の現実社会負担 純社会負担

 (4)家計の追加社会負担  (1)雇主の現実社会負担  (控除)年金制度の手数料  (2)雇主の帰属社会負担 現物社会移転以外の社会給付  (3)家計の現実社会負担  (1)現金による社会保障給付  (4)家計の追加社会負担  (2)その他の社会保険年金給付  (控除)年金制度の手数料  (3)その他の社会保険非年金給付 現物社会移転以外の社会給付  (4)社会扶助給付  (1)現金による社会保障給付 その他の経常移転  (2)その他の社会保険年金給付  (1)非生命純保険料  (3)その他の社会保険非年金給付  (2)非生命保険金  (4)社会扶助給付

 (3)一般政府内の経常移転 その他の経常移転  (4)経常国際協力  (1)非生命純保険料  (5)他に分類されない経常移転  (2)非生命保険金

可処分所得(純)  (3)一般政府内の経常移転

(再掲)可処分所得(総)  (4)経常国際協力

     (控除)固定資本減耗  (5)他に分類されない経常移転

支  払 受  取

JSNA

で本項目に含まれる諸税の一覧については図表

12

を参照)78。このうち事業税 については、前述のとおり、平成

17

年基準以前の

JSNA

では、生産・輸入品に課され る税に含まれていたが、平成

23

年基準以降は、本項目に含まれている。自動車関連諸 税については、家計による自動車の購入や所有は、企業の場合と異なり、生産活動との 結びつくものではないため、所得・富等に課される経常税に記録される。

図表

12

  所得・富等に課される経常税に含まれる主な諸税

2008SNA

の分類

JSNA

における主な諸税

所得に課される税  源泉所得税、申告所得税、法人税、道府県民税(所得割、利子割、

法人税割、配当割、株式等譲渡所得税)、市町村民税(所得割、法人 税割)、日銀納付金 

その他の経常税  事業税、地方法人特別税、道府県民税(個人均等割、法人均等割)、

市町村民税(個人均等割、法人均等割)、自動車重量税※、自動車税

※、自動車取得税※、軽自動車税※、狩猟税 

※家計(個人企業除く)による負担分   

純社会負担(

Net social contributions

) 

3.64.

「社会負担」とは、社会保険制度から給付が支払われることに備えて、社会保険制度に

対して行う現実または帰属の支払を指す。このうち、雇主がその雇用者のために行う 負担は、「雇主の社会負担」と言い、前述のとおり、「雇主の現実社会負担」と「雇主の 帰属社会負担」からなるもので、第

1

次所得の配分勘定では雇用者報酬に含まれる。

また、雇用者本人が行う負担は、後述するように、「家計の現実社会負担」と「家計の 追加社会負担」から成る。所得の第

2

次分配勘定では、支払側では家計部門のみに記 録される一方、受取側では、社会保険制度のうち①社会保障制度に係る負担について は、同制度を運営する一般政府(社会保障基金)に、②企業年金等の年金基金制度に係 る負担については、同制度を運営する金融機関(年金基金)に、③さらに無基金の社会

782節の「生産・輸入品に課される税」の脚注60にも記載した通り、「所得・富に課される税」も含めた税の四 半期系列(年度値の四半期分割)については、平成23年基準以降、「発生主義(accrual basis)」による記録を行うこ ととしている。例えば、源泉所得税について、平成17年基準以前は「現金主義(cash basis」に立って、前月の所 得に対する税収を歳入として計上された翌月時点で記録していたところ、平成23年基準以降は、実際に課税資産の 譲渡等が行われた時点で記録を行うこととするため、歳入として計上される時点より1か月前倒しして(所得を得 た時点に)記録することとしている。

保険制度にかかる負担(現実の支給額が記録)については雇主部門に、それぞれ記録さ れる。

3.65.

所得の第

2

次分配勘定においては、第

1

次所得の配分勘定で、家計が雇用者報酬の一

環として受け取った「雇主の現実社会負担」、「雇主の帰属社会負担」に、雇用者本人の

「家計の現実社会負担」、「家計の追加社会負担」を合わせた形で支払が記録される(雇 主の社会負担の迂回処理)。

3.66.

なお、年金基金については、同制度の運用費用(年金基金の産出額に相当)を「年金制

度の手数料」という控除項目として記録する。上記の「雇主の現実社会負担」、「雇主の 帰属社会負担」、「家計の現実社会負担」、「家計の追加社会負担」の合計から、「年金制 度の手数料」を控除した集計値は「純社会負担」と呼ばれる。

雇主の現実社会負担(

Employers’ actual social contributions

3.67.

前述雇用者報酬の「雇主の社会負担」の項を参照79

雇主の帰属社会負担(

Employers’ imputed social contributions

3.68.

前述雇用者報酬の「雇主の社会負担」の項を参照。

家計の現実社会負担(

Households’ actual social contributions

3.69.

「家計の現実社会負担」は、社会保障制度やその他の社会保険制度に対して家計自身

が支払う保険料、掛金等の負担を指す。具体的には、社会保障制度の年金、医療、介護、

雇用保険等に係る保険料や、企業年金に係る掛金の被保険者本人負担分が記録される。

例えば、我が国の場合、社会保障の厚生年金制度の場合、雇主と雇用者が社会保険料を 折半しているが、このうち雇用者負担分が本項目に記録される(雇主分は「雇主の現実 社会負担」に記録)。なお、平成

17

年基準以前の

JSNA

では、後述する「家計の追加社 会負担」相当分と併せて、「雇用者の社会負担」として表章されていたが、平成

23

年基 準以降、分割して記録が行われている。

79 平成17年基準のJSNAでは、雇用者報酬に記録される「雇主の現実社会負担」のうち事務費掛金分について、第 2次分配勘定では社会負担から除かれ、他に分類されない経常移転に計上されていた。

家計の追加社会負担(

Households’ social contributions supplements

3.70.

「家計の追加社会負担」は、前述(財産所得の項)の「その他の投資所得」のうち「年

金受給権に係る投資所得」と同額が記録される。年金基金の年金受給権に係る投資所 得は、本来家計に帰属するものであり、国民経済計算体系及び

JSNA

では、一旦、金融 機関から家計に支払われた形とするが、同額がそのまま「追加負担」として年金基金に 支払い戻されるという迂回処理がとられている。本項目は平成

23

年基準以降の

JSNA

で独立表章されている。

(控除)年金制度の手数料(

(less) Social insurance scheme service charges

3.71.

「(控除)年金制度の手数料」は、年金基金に係る制度の運営費用を指すもので、雇主

と家計の社会負担の合計からこれを控除することで、「純社会負担」が導かれる。ここ で控除された年金制度の手数料は、家計の可処分所得に一旦含まれ、そこから最終消 費支出として支出される扱いとなる。

図表

13

純社会負担

平成

23

年基準(

2008SNA)

平成

17

年基準(

1993SNA

純社会負担 社会負担

現実社会負担

雇主の現実社会負担

雇主の強制的現実社会負担 雇主の自発的現実社会負担 雇用者の社会負担

雇用者の強制的社会負担 雇用者の自発的社会負担 帰属社会負担

(控除)年金制度の手数料

(1) 発生主義ベースで記録する(会計基準対象の)退職一時金の支給額

(2) 雇主の帰属年金負担は新概念(確定給付型企業年金等について、現在勤務費用+年金制度の手数料 −雇主の現実年金負担)

(3) 発生主義ベースで記録しない(会計基準非対象の)退職一時金等の支給額(雇主の帰属非年金負担に相当)

(4) 家計による実際の保険料・掛金支払

(5) 財産所得(年金受給権に係る投資所得)の迂回処理分 (6) 新設(企業年金の運営費用に相当)

雇主の現実社会負担 雇主の帰属社会負担 家計の現実社会負担 家計の追加社会負担

(1) (2) (3)

(4) (5) (6)