第 5 章 シロフクロウに見られたコクシジウムの感染状況
5.3 成績
60 5.2.8 遺伝子解析
得られた塩基配列は3.2.8 に記載の方法で遺伝子解析を行った。分子系統樹作成時 のアウトグループには、Cryptosporidium parvum(GenBank Accession No. L25642)
を用いた。
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5.3.3 原虫DNAの増幅および分子系統解析
18SrRNA 遺伝子を標的とした PCR の結果、両ペアの小型のオーシストから増幅
シグナルが認められた。系統解析の結果、両ペアから得られた塩基配列はどちらも同 一であり、鳥類のEimeriaのグループに位置付けられ(図5-3)、相同性解析の結果、
アメリカワシミミズク寄生種であるE. bubonisと96.6%一致した。大型のオーシス トからは増幅シグナルは得られず、種の推定には至らなかった。
5.4 考察
今回、国内で初めて展示施設の飼育下シロフクロウから、鳥類寄生性のコクシジウ ムの感染が確認され、少なくとも2種類が感染している可能性が示された。検出され た小型のコクシジウムは、分子系統的にアメリカワシミミズクから検出された E.
bubonisと近縁であることが示唆された。E. bubonisは腎臓に寄生し、集合管上皮細
胞の過形成を起こすことが知られているが(Jankovsky et al., 2017))、今回検出され た原虫がシロフクロウで見られた元気消失や雛の死亡に関与したかは不明である。し かし、希少種であるシロフクロウの域外保全上、今後も保有原虫種の解明や感染源の 推定などが必要である。
検出された小型のオーシストは培養後にスポロシストが確認できる成熟オーシス トまで発育し、原虫DNAの増幅も可能であったが、大型のオーシストはすべて死滅 した。そのため、大型のオーシストの種は不明であるが、小型オーシストとは別種で あり、今回用いたプライマーではDNAが増幅されないコクシジウム系統である可能 性が考えられる。
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ペア A および B から検出された小型オーシストは同じ遺伝子型であることが示さ れた。2015 年にペア A の糞便からオーシストが確認され、2016年にペア B のメス がペアAより生まれたため、ペアBのコクシジウムはペアAより感染した可能性が ある。2015 年以前のペアAおよび2016年以前のペアBのオスの糞便検査結果は不 明のため、感染源の特定はできなかったが、感染拡大防止のため、繁殖前に駆虫薬を 投与し、駆虫できるまでペアリングさせないなどの対策が必要であると考えられる。
今回、感染個体に対して駆虫薬トルトラズリルを複数回投与したが、原虫オーシス トは継続して排出されていた。トルトラズリルは牛のアイメリア予防薬として認可さ れているが、今回検出されたコクシジウムともっとも近縁な E. bubonis に対する効 果は不明である。今回の感染個体も含め、フクロウ類のコクシジウム感染に対する治 療は海外でも報告が少なく(Redig, 2009)、現在のところ治療が困難であると考えら れる。他薬剤の併用あるいはトルトラズリルの投与間隔の短縮などの投薬方法の検討 や、対症療法も併用するなど、効果的な治療方法を検討する必要がある。さらに、近 年国内では愛玩飼育目的で、一般家庭でもシロフクロウを飼育しており、飼育フクロ ウ類のQOL の維持および向上のためにも、国内のフクロウ類におけるコクシジウム 感染状況の把握と継続的な獣医学的管理方法の検討も必要であると考える。
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