• 検索結果がありません。

データ元:動物由来薬剤耐性菌モニタリング(JVARM)

2016 年度に、農林水産省において「愛玩動物薬剤耐性(AMR)調査に関するワーキンググループ」

(以下「ワーキンググループ」という。)を開催し、愛玩動物における薬剤耐性菌モニタリングの調 査方法に関する有識者の意見を取りまとめるとともに、事前調査を実施した。これらを参考にして、

2017 年度に、疾病にり患した犬及び猫由来の薬剤耐性菌モニタリング調査を開始した。薬剤感受性 試験には、CLSI に準拠した微量液体希釈法を用い、収集した各種菌株の抗菌剤の MIC 値を測定した。

なお、BP は、CLSI で規定されている薬剤についてはその値を採用し、CLSI で規定されていない薬剤 については、EUCAST で規定されている値又は微生物学的 BP(二峰性を示す MIC 分布の中間点)を 採用した。

健康動物由来とは異なり、疾病にり患した動物由来細菌の薬剤耐性の調査では、抗菌剤による治療 の影響や疾病の発生状況の影響を受ける可能性があることに留意する必要がある。愛玩動物について も家畜と同様に健康動物の薬剤耐性の動向をベースラインの情報として把握することが重要と考えら れることから、疾病にり患した動物の調査を継続するとともに、ワーキンググループの検討結果を参 考に、今後、健康な愛玩動物を対象とした調査を進める予定である。

ⅰ. Escherichia coli

2017 年に 15 薬剤を対象として調査を行った。犬及び猫由来株のアンピシリン(ABPC)、ナリジ クス酸(NA)、犬由来株のシプロフロキサシン(CPFX)及び猫由来株のセファレキシン(CEX)に 対して 40%を超える耐性が認められ、一方、犬及び猫由来株のカナマイシン(KM)、コリスチン

(CL)及びホスホマイシン(FOM)に対する耐性率は 10%未満であった。ヒトの医療で重要な抗菌 剤については、犬由来株及び猫由来株で、セフォタキシム(CTX)に対しては 26.1%、33.8%、CL に 対しては 1.0%、0.0%、シプロフロキサシン(CPFX)に対しては 43.2%、39.0%の耐性率であり、メ ロペネム(MEPM)に対する耐性は認められなかった。

48

表 50. 疾病にり患した犬及び猫由来のEscherichia coliの耐性率(%)

薬剤 BP 動物種 2017 年

ABPC 32 犬 55.3

猫 64.0

CEZ 32 犬 31.2

猫 37.5

CEX 32 犬 31.7

猫 41.9

CTX 4 犬 26.1

猫 33.8

MEPM 4 犬 0.0

猫 0.0

SM 32 犬 29.6

猫 32.4

GM 16 犬 14.1

猫 12.5

KM 64 犬 6.5

猫 8.1

TC 16 犬 28.1

猫 24.3

CP 32 犬 12.6

猫 13.2

CL 4 犬 1.0

猫 0.0

NA 32 犬 61.8

猫 58.8

CPFX 4 犬 43.2

猫 39.0

FOM 256 犬 0.5

猫 1.5

ST 76/4 犬 24.6

猫 22.1

検査株数(n) 犬 199

猫 136

BP の単位は μg/ml。 CLSI に規定された BP。 EUCAST に規定された BP。

ⅱ. Klebsiella spp.

2017 年に 15 薬剤を対象として調査を行った。犬及び猫由来株ではアンピシリン(ABPC)、セフ ァゾリン(CEZ)、セファレキシン(CEX)、セフォタキシム(CTX)、ナリジクス酸(NA)、スル ファメトキサゾール・トリメトプリム(ST)、猫由来株ではストレプトマイシン(SM)、ゲンタマ イシン(GM)、テトラサイクリン(TC)に対して 40%を超える耐性が認められ、一方、犬及び猫由 来株のコリスチン(CL)、犬由来株のカナマイシン(KM)及び猫由来株のホスホマイシン(FOM)

に対する耐性率は 10%未満であった。ヒトの医療で重要な抗菌剤については、犬由来株及び猫由来株

49

では、CTX に対しては 41.7%、80.8%、コリスチン(CL)に対しては 1.4%、3.8%、シプロフロキサ シン(CPFX)に対しては 44.4%、84.6%の耐性率であり、メロペネム(MEPM)に対する耐性は認め られなかった。

表 51.疾病にり患した犬及び猫由来のKlebsiella spp.の耐性率(%)

薬剤 BP 動物種 2017 年

ABPC 32 犬 90.3

猫 96.2

CEZ 32 犬 47.2

猫 84.6

CEX 32 犬 44.4

猫 84.6

CTX 4 犬 41.7

猫 80.8

MEPM 4 犬 0.0

猫 0.0

SM 32 犬 26.4

猫 57.7

GM 16 犬 26.4

猫 61.5

KM 64 犬 8.3

猫 23.1

TC 16 犬 33.3

猫 57.7

CP 32 犬 25.0

猫 26.9

CL 4 犬 1.4

猫 3.8

NA 32 犬 51.4

猫 84.6

CPFX 4 犬 44.4

猫 84.6

FOM 256 犬 15.3

猫 7.7

ST 76/4 犬 41.7

猫 76.9

検査株数(n) 犬 72

猫 26

BP の単位は μg/ml。 CLSI に規定された BP。

FOM の BP は E. coli の値を、CEX 及び CL は EUCAST の値を用いた。SM は EUCAST でも設定されていないことから JVARM の値(平成 13 年度に得られた二峰性を示す MIC 分布の中間点)を用いた。

50

ⅲ. コアグラーゼ陽性Staphylococcus spp.

2017 年に 15 薬剤を対象として調査を行った。コアグラーゼ陽性Staphylococcus spp は、犬猫共 にS. pseudintermediusが最も多く(犬 91.7%、猫 70.8%)、次いで犬猫共にS. aureusが多かった

(犬 4.5%、猫 29.2%)。この他、犬ではS. schleiferi subsp. Coagulans(3.0%)及び S. intermedius

(0.8%)を収集した。

S. pseudintermedius については、犬及び猫由来ではテトラサイクリン(TC)、クロラムフェニコ ール(CP)、エリスロマイシン(EM)、アジスロマイシン(AZM)及びシプロフロキサシン

(CPFX)、猫由来株ではオキサシリン(MPIPC)に対して 40%を超える耐性が認められた。一方で、

犬由来株ではゲンタマイシン(GM)に対する耐性率は 10%未満であった。ヒトの医療で重要な抗菌 剤については、犬及び猫由来株で、AZM に対しては 53.3%、66.7%、CPFX に対しては 58.2%、88.2%

の耐性が認められた。

猫由来 S. aureus については、MPIPC、セファゾリン(CEZ)、セファレキシン(CEX)、セフォ

キシチン(CFX)、セフォタキシム(CTX)、GM、EM、AZM 及び CPFX に対して 40%を超える耐 性が認められた。一方で、SM に対する耐性率は 10%未満で、CP に対する耐性は認められなかった。

ヒトの医療で重要な抗菌剤については、CTX に対しては 61.9%、AZM に対しては 66.7%、CPFX に対 しては 61.9%の耐性率が認められた。

表 52-1. 疾病にり患した犬及び猫由来のStaphylococcuspseudintermediusの耐性率(%)

薬剤* BP 動物種 2017 年

MPIPC 0.5 犬 38.5

猫 68.6

GM 16 犬 6.6

猫 13.7

TC 16 犬 44.3

猫 52.9

CP 32 犬 41.8

猫 64.7

EM 8 犬 54.9

猫 70.6

AZM 8 犬 53.3

猫 66.7

CPFX 4 犬 58.2

猫 88.2

検査株数(n) 犬 122

猫 51

BP の単位は μg/ml。 CLSI に規定された BP。ABPC、CEZ、CEX、CFX、CMZ、CTX、SM 及び NA についても調査対象 としているが、BP が設定できないため、耐性率は掲載していない。

表 52-2. 疾病にり患した猫由来のStaphylococcusaureusの耐性率(%)

薬剤 BP 動物種 2017 年

MPIPC 4 猫 61.9

CEZ 4$ 猫 61.9

51

CEX 16$ 猫 61.9

CFX 8$ 猫 61.9

CTX 8$ 猫 61.9

SM 32$ 猫 4.8

GM 16 猫 47.6

TC 16 猫 14.3

CP 32 猫 0.0

EM 8 猫 66.7

AZM 8 猫 66.7

CPFX 4 猫 61.9

検査株数(n) 猫 21

BP の単位は μg/ml。 CLSI に規定された BP、$ EUCAST の ECOFF 値を採用

ABPC、CMZ 及び NA についても調査対象としているが、BP が設定できないため、耐性率は掲載していない。

ⅳ. Enterococcus spp.

2017 年に 13 薬剤を対象として調査を行った。犬及び猫由来株ではテトラサイクリン(TC)、エリ スロマイシン(EM)、犬由来株ではシプロフロキサシン(CPFX)に対して 40%を超える耐性が認め られた。ヒトの医療で重要な抗菌剤については、犬由来株及び猫由来株で、CPFX に対しては 42.7%、

34.7%の耐性が認められた。

表 53. 疾病にり患した犬及び猫由来のEnterococcus spp.の耐性率(%)

薬剤* BP 動物種 2017 年

ABPC 16 犬 26.7

猫 17.3

GM 32§ 犬 22.9

猫 19.4

TC 16 犬 65.6

猫 70.4

CP 32 犬 20.6

猫 20.4

EM 8 犬 61.8

猫 41.8

CPFX 4 犬 42.7

猫 34.7

検査株数(n) 犬 131

猫 98

BP の単位は μg/ml。

CEZ、CEX、CMZ、CTX、SM、AZM 及び NA についても調査対象としているが、BP が設定できないため、耐性率は 掲載していない。CLSI に規定された BP。

§GM は EUCAST でも設定されていないことから JVARM の値(平成 14 年度に得られた二峰性を示す MIC 分布の中間点)

を用いた。

52

関連したドキュメント