(1) エコシステムとしての情報システム
これまでの情報システムは概ね業界内で閉じたシステムを形成していた。しかし今 後は FinTech やブロックチェーンに代表されるように,SNS も含めて情報システム同 士が連動して機能していく。特に IoT の進展やブロックチェーンの拡大,機器のスマー ト化に伴い,あらゆる情報がデジタル化され,様々なシステムがネットワークにつなが り,それぞれの役割を果たすようになる。
(2) 中央管理型のアーキテクチャと組込システム及びP2P型のアーキテクチャとの融合 図表3.1は情報システム同士の連携イメージを表したものである。これまでの情報 システムは,ソフトウェアパッケージを利用していたものの,自社開発が基本であっ た。しかし2010年代になりクラウドサービスが徐々に普及し,情報システムは所有か ら利用へシフトしつつあり,CRM や ERP ソフトなどのソフトウェアパッケージもク ラウドサービスへと移行してきている。ただしクラウドサービスも基本的には中央管 理型のアーキテクチャである。一方組込みシステムは単独で稼働するケースが多いも のの,組込みシステムの集合が一つの情報システムとして機能するようになり,これ までの情報システム(クラウドサービス)と連携するようになっていく。この典型的な 例が自動車の自動運転システムと考えられる。組込みシステムとの連携は IoT 進展の 一環でもある。この IoT の進展とともに,情報システムとセンサーや様々な種類の機 器等との連携も増えていき,情報システムは個々のニーズや環境等の変化にリアルタ イムに対応できるようになる。この情報処理形態が進んだものが Industry4.0もしく はインダストリアル・インターネットであるとみることができる。ただしリアルタイム 性の要求される組込みシステム等の場合,ネットワークの遅延が問題になる可能性が ある。このような場合,組込みシステムの近くにサーバー(エッジサーバー)を置いて 処理するエッジコンピューティングの形態を採る。
図表3. 1 情報システム同士の連携イメージ
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ブロックチェーンを 使った情報システム クラウドサービス/
インターネット
組込みシステム によるLAN 組込みシステム
/センサー
情報システム
(イントラネット/
エキストラネット)
情報システム
(イントラネット/
エキストラネット)
エッジコンピュ ーティング IoTシステム
は連携またはサービスの利用を表す。
(出所)筆者作成
一方で P2P 型のアーキテクチャであるブロックチェーンの適用も増加していくもの と予想され,これまでの情報システムとは疎結合の形態で連携していくものと考えら れる。この場合ブロックチェーンは共同利用システム(コンソーシアム型)で使われる ケースが多いものと推定され,自社独自のデータ等を使った処理は自社の情報システ ムで処理することになると考えられる。
1.2で述べたように,1台の Web 端末から複数の情報システムが同時利用可能に なっているが,今後は個別企業の業務系システムの機能を接続サーバー(接続プログ ラム)から(オープン)API を経由して利用できるような情報システムも増加してくる ものと推定される。つまり端末機器から見ると,複数の情報システムを1つの情報シ ステムとして扱うことができ,UX がさらに向上していくことになる。これにより,情 報システムのあるべき姿は企業やシステム開発サイドから,これを利用する顧客へと 主導権がシフトしていくことになる。
(3) 細部に賢い機能が備わった情報システム
情報システムの端末は2000年代初め頃と比べて,機能が豊富になり,かつ使い勝手 は各段に良くなっている。しかし企業の業務フローを見ると,情報システムの主な役 割は,定型的な処理,特に大量データを正確にかつ高速に処理することであり,きめ 細かい処理は人が担当していた。グループウェアやデータウェアハウス等も,ユー ザーに対してきめ細かなサービスを提供していたとは言い難い。しかし今後は営業や マーケティングも含めて様々な領域において,AI が活用されるようになる。AI は情 報システムへも組み込まれ,人的ミスの削減や業務処理の効率化に寄与するようにな る。そして情報システムは半ば自律的に動く仕組みへと発展していくものと予想され る。つまり AI の活用により,コンピュータがどのような処理をすべきかを判断するよ うになり,人が入る役割は高度な判断が必要になるものにシフトしていく。また組込 みシステムに AI が搭載されるようになり,システム自体が賢くなっていくものと考え られる。AI モデル及び知識データはクラウドサービスを通じてスマート化した機器 にダウンロードされ,機能が高度化して(賢くなって)いく。もちろん先端の機器が賢 くなくてもクラウドコンピューティングにより,中央がコントロールする形態もありう る。
AI の活用により,これからの情報システムは処理の効率性や QCD[Quality(品質),
Cost(費用),Delivery(納期)]のみならず,ユーザーからはさらなる UX の向上が求 められるようになる。