本章においてはd-swipeの応用例を示す.
5.1 コマンド実行のショートカット
d-swipeの応用例として,まずコマンドを実行するためのショートカットに用いる事が挙げ
られる.例えば,ユーザがd-swipeをブックマーク操作に割り当てた場合,ユーザはWebブ ラウジング中に任意の場所における1ストロークのジェスチャのみを用いて,素早く閲覧中 のページをブックマークする事が可能となる.
端末における従来のアプリケーションにおいては,ジェスチャのみによるコマンドの実行 が可能であるものが少なかった(ジェスチャのみによるコマンドの実行が出来る例としては,
Chrome for iOSにおける左右スワイプによるページ遷移が挙げられる).この要因として,片
手操作時において可能なタッチジェスチャが限られている事が挙げられる.このため,多く のキーボードショートカットが使用可能であるデスクトップ環境とは異なり,モバイル環境 においては端末におけるGUI上のメニューを表示して,その中からコマンドを選択する必要 がある場面が多い.d-swipeによりユーザはより多くのコマンドをタッチジェスチャのみにて 素早く行う事が可能となる.
さらに,提案手法においてはスワイプ操作によりコマンドを実行するため,スワイプの移 動量によって量を伴った入力を行う事が可能となる.上記のブックマークの例を挙げて説明 する.ユーザはd-swipeによりブックマークのコマンドを実行した後(図5.1a,5.1b)に,指を 離さずに異なる方向へスワイプする(図5.1c).この時2回目のスワイプ量を,ブックマーク したいページの関心度合いとして入力する事が出来る.この場合,ユーザは関心度合いが高 い順にページの一覧を表示する事や,関心度合いが低いページを一括にて削除する事等の操 作を行う事が可能となる.
5.2 メニュー展開
5.1節にて示した応用例に加え,d-swipeによりメニューを展開する事も考えられる.表示 するメニューの例として,以下のものが挙げられる.
• 通常のメニュー
従来,ユーザはメニューボタンを押す事によりメニューを表示していた.メニューの表
示にd-swipeを用いる事により,ユーザはポインティングではなく任意の位置における スワイプにてメニューを表示する事が可能となる.
• マーキングメニュー
d-swipeにより,ユーザはマーキングメニュー[KB93]を表示する事が可能となる.この
場合,ユーザは画面から指を離すことなくメニューの表示を完了させる事が出来るため,
マーキングメニューを用いる事によりメニューの展開と項目の選択を連続的に行う事が 可能となる.表示するマーキングメニューとして,指の位置を中心に全方位(図5.2a),
(d-swipeの方向に対して)逆方向(図5.2b),(d-swipeの方向に対して)直角方向(図 5.2c),等のパターンが考えられる.
マーキングメニューの表示方法として指の位置を中心とした全方位への展開が一般的で あるが,ユーザがd-swipeを行った方向に存在するメニューを誤選択するおそれがある.
そこで,ユーザがメニューの展開と項目の選択を明確に出来るように,d-swipeを行っ た方向に対して逆方向に表示する事が考えられる.この際,図5.2b左に示すように,左 上スワイプを行った際に逆方向に表示すると,ユーザの指によってメニューの内容が隠 れる問題が生じる.そこで代替案として,図5.2cに示すようにd-swipeの方向に対して 直角方向に表示する事が考えられる.
• 画面端への表示
ユーザはd-swipeを用いてメニューを画面端に表示し,タッチ点のx座標またはy座標
に依存して項目を選択する事が可能となる.即ち,ユーザは図5.3a(x座標依存),図 5.3b(y座標依存),図5.3c(x-y座標依存)に示すように,メニューを展開する事が可 能となる.
図5.1: a)d-swipeによるブックマークのコマンドの実行.b)起動時と異なる方向へのスワイ プによる関心度合いの入力(小).c)関心度合いの入力(大).
図5.2: d-swipeによるパイメニュー展開.a)全方位.b)逆方向.c)直角方向.
図5.3: d-swipeによる画面端へのメニュー展開.a)x座標依存.b)y座標依存.c)x-y座標 依存.