本時では,理科の学習目標1である「水害の現状と発生原因を理解し,地域の自然や防災 に関心をもつこと」の達成を目指した。しかし,2013年台風18号で水害を体験した児童は 1人であり,17人の児童は水害について気付いていなかった。そこで,全員が水害の被害を 共有するために,第1時の学習活動は運動場に生じた水害による変化を観察し,その原因を 予想することとした。ここでは,まず,運動場を取り扱った理由を5点示す。1点目は児童 が水害を共有できること,2点目は水害が身近な災害として意識できること,3点目は児童 が地面の傾きと水の流れ方や集まり方の規則性を学習していないこと,4点目は運動場には 建物等の障害物がないため地面の傾きと水の流れ方や集まり方の関係が明瞭に観察でき理 解しやすいこと,5点目は,安全に観察・実験ができることである。次に授業の流れを示す。
導入では,児童の意識を水害に向けるため,台風18号(全降水量 228mm)の1時間ごと の気象庁の降水量のデータ(気象庁,2013)を児童全員に配付した後,運動場にどのような 水害被害が生じたかを予想させた。しかし,授業日は台風後2日目のため児童は運動場の表 面がしめっているだけで変化はないと予想した。そこで,教員は,児童に実際に運動場を観 察し予想を確かめるように指示した。運動場には川田川起源の伏流水路(パイピング)によ りできた噴出口(図3-4-2)とそこからの水の流れの痕跡があった。児童は,予想と異なる 地下伏流水の噴出口や模様が残った運動場の変化に驚いた。そして,噴出口の直径や深さと その数を調べた。噴出口の直径は,最大30㎝から1㎝のものまで様々で,その数は625個 であった。噴出口の深さは80cmに達するものもあった。水たまりは運動場の北西部に残っ ていた。
噴出口を観察させた後,教室に戻り噴出口からの水の流れの痕跡写真(図3-4-3)を電子 黒板に投影した。
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図3-4-3 噴出口からの水の流れの痕跡
また,投影写真と同様の痕跡写真を児童全員に配付した。水の流れの痕跡を写真で再度観 察をさせた理由は,2点ある。1点目は,肉眼では痕跡の部分と運動場の色の違いが少なく 見分けにくいが,写真ではコントラストを強調することにより痕跡が明瞭に浮かびあがり 観察しやすくなるからである(須藤,2002)。2点目は,配付した写真に気付いたことを書 き込ませることができるからである。児童は,水の流れの痕跡を色鉛筆でトレースし(図 3-4-4),それらが全て同一の方向に向いていることを記述した。
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図3-4-4 児童による水の流れの痕跡のトレース
児童は気付きを発表し,水の流れの痕跡ができた原因を話し合った。話し合いにより,水 の流れの痕跡が見られた原因は,運動場が傾いているのではないかという予想をたてた。本 時終了後,運動場に出た児童が,噴出口からの水の流れの痕跡を見付けることができたと報 告にきた。
2) 第2時
本時では,理科の学習目標1に関わる水害の発生原因について,児童自身が調べ理解する ことを目指した。児童は,まず,第1時で予想した運動場の地面の傾きと水の流れ方や集ま り方の関係を調べる測定器具を自作した。児童は,必要な材料を自宅から持参し,3つの測 定器具を自作した。1班の児童は,ペットボトルに水を入れ,基準となる水平面を書き込み,
地面の傾斜を観察する水準器を作製した(図3-4-5)。2・4班の児童はペットボトルの中にビ ー玉を入れ,ビー玉の動きで地面の傾斜を観察する測定器具を作製した。3班の児童は段ボ ールのゲージでビー玉を転がせる測定器具を作製した。
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図3-4-5 基準線入りペットボトル