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当該論文の内容

ドキュメント内 学位授与機関 関西大学 (ページ 46-106)

第 1 節 序

2 当該論文の内容

(1) [ * I]予備的事項 ア [ * 1]序文[ * 1a ]範囲

この注釈では,薬の処方及び投与における過失の主張を含んだ医療過誤訴訟における医師及び病院に適 用される注意義務の基準の証拠としての,添付文書または医師用卓上参考書(Physician's Desk

Reference(PDR),以下,PDRと記す)に記載された処方薬の使用に関する製薬会社の推奨事項について論

じている裁判例を,集めて,そして解析する。PDRは薬剤についての製品情報を編集する年一回の出版物 である。PDRに掲載する情報は製薬会社によって提供されて,そして医薬品添付文書に含まれた事柄に(ま ったく同じでないとしても)十分に類似している。

イ [*2][ * 2]要約とコメント (ア) [*2a][ * 2a ] 一般論

医療過誤訴訟の原告は,これまで,適用されるべき注意義務の基準及びその基準の違反を証明するため に,専門家の医学的証言を示すように要求されているが,医師が同業者に不利な証言をすることに消極的 であること等,証言を入手する際,しばしば実務的問題があった。その結果,医師の薬の処方と投与 (administration)に関連する注意義務の基準を確立する上で,専門家の医療証言の代替物または補足物と して,添付文書及びPDR における相当する記載事項の当該医薬品の使用に関する医薬品製造業者の推奨 が,使えるかどうかの問題は,きわめて重要となり得る(Comment, "Package Inserts for Prescription Drugs as Evidence in Medical Malpractice Suits," 44 U Chicago L Rev 398(1977))。

議会の指令に従って,食品医薬品局(以下,FDAと記す)は処方薬について医療関係者に知らせる規制 上の手続きを定めた(21 Code of Federal Regulations §§ 201.1-201.317)。FDAは,製薬会社が処方薬を出 荷する際には,添付文書をつけることを要求する(Ramon v Farr (1989, Utah) 770 P2d 131, 101 Utah Adv Rep 48, 82 ALR4th 155. For a description of the drug package insert preparation process, see Comment, "Package Inserts for Prescription Drugs as Evidence in Medical Malpractice Suits," 44 U Chicago L Rev 398 (1977))。添付文書は,薬の成分,用量,適応,禁忌,潜在的副作用,及び有害反応に 関係する同機関の通知システムの基礎となっている(Thompson v Carter (1987, Miss) 518 So 2d 609)。添 付文書情報は,薬を市場に出すために製薬会社が意図する用法について薬が安全で,そして効果的である という証明として製薬会社がFDAに提出したデータに基づいている(Thompson v Carter (1987, Miss)

518 So 2d 609)。FDAは,新薬が市販される前に,製薬会社が添付文書に記載した情報の範囲と正確さを

承認しなくてはならない (Ramon v Farr (1989, Utah) 770 P2d 131, 101 Utah Adv Rep 48, 82 ALR4th

155)。添付文書は製薬会社の試験結果に基づき,医師に(以下の事を)アドバイスする。(すなわち)(1)当

該薬が処方されるべきである症状(2)和らげることが推奨される不調(3)観察されるべきである予防的

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措置(4)結果として生じるかもしれない有害作用の警告である(Thompson v Carter (1987, Miss) 518 So 2d 609)。

医師は医薬品添付文書を,通常は参照しないけれども,年4回補訂される医師用卓上参考書(PDR)と 呼ばれる添付文書の編集物が毎年発行されて,医薬品メーカーの負担で無料で医療関係者に配られる (Thompson v Carter (1987, Miss) 518 So 2d 60, Ramon v Farr (1989, Utah) 770 P2d 131, 101 Utah

Adv Rep 48, 82 ALR4th 155)典型的な PDR 項目は,薬の商品名と一般名,薬の説明,その使用上の適応

と禁忌,警告,有害事象,投与と投薬量,薬の投与量の管理及び調整に関する情報を含む(Ramon v Farr (1989, Utah) 770 P2d 131, 101 Utah Adv Rep 48, 82 ALR4th 155)。

処方薬の使用で医師あるいは病院の過誤を主張している訴訟において,注意義務の基準の問題について,

当該添付文書あるいは PDR による製薬会社の推奨事項の証拠能力の有無が論争の中心である。いくつか の裁判所は,薬を使用する際の製薬会社の添付文書の推奨若しくは指示または PDRへの相当する記載事 項は,医師が薬を処方しそして投与することにおける注意義務の基準の問題において,証拠能力がないわ けではないが,注意義務の基準または薬の使用について受け入れられている実践の確定的な証拠ではなく,

さらに法律上は,過失,行為の絶対的な規則,注意義務の基準を確立するものではないと述べている([*3])。

また,その添付文書あるいはPDR での製薬会社の推奨事項が,薬を使用する際の,注意義務の基準の一 応の証拠(prima facie evidence)ではないが,何らかの証拠であり,裁判での専門家の医学的証言と共に 考慮され得るものであると述べている裁判所もある([*4])。

添付文書や PDR の製薬会社の推奨事項や指示は,薬の使用についての注意義務の基準の一応の証拠

(prima facie evidence)となるとした裁判所もいくつかある([*5])。そのうちのいくつかの裁判所は,一 応の証拠(prima facie evidence)原則の下では,製薬会社の推奨事項は,以下のとおりであると説明して

いる。(1)注意義務の基準の確定的な証拠ではない(2)説得責任(burden of persuasion)を転嫁し,被告

は推奨事項とは異なる行為を行った理由を明らかにするように要求される 又は(3)一般的にもしくは,

推奨事項が明確で薬の不適切な投与に起因し得る危険を警告している場合には,注意義務の基準を証明す ることにおいて専門家の医学的証言の代用となる。いくつかの裁判所は,この一応の証拠(prima facie evidence)原則について,製薬会社の推奨事項が明確で,そして明示的である場合にだけ,あるいは推奨 事項が薬の使用に明白な指示を提供して,そしてその不適切な投与に起因し得る危険を警告する場合にだ け適用可能であると条件をつけている([* 6])。

117過失なく真の疾患名とは異なる疾患名であると診断した場合の影響

医師が過失なく真の疾患名とは異なる疾患名であると診断した場合,添付文書やPDR の製薬会社の推 奨事項の証拠能力に影響が及ぶ場合がある。医師が,患者を,過失なく真の疾患名とは異なる疾患名と診 断した場合,製薬会社の推奨事項によれば,異なって診断した疾患名であったとすれば処方していた薬が 適切であった場合,真の診断名に対しては当該薬は不適切な治療であっても,当該推奨事項は,注意義務 の基準の証拠とはならない(Winkjer v Herr (1979, ND) 277 NW2d 579)。

②適応症と禁忌

117 ①~⑦の題は原文にはないが筆者が便宜上付けたものである。

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添付文書及びPDR の製薬会社によって列挙された適応症及び禁忌は,薬の使用についての過失の申し 立てを含んだ医療過誤の「注意義務の基準」の証拠の1つの可能な出典である。ある解説者によれば,添 付文書あるいは PDR での適応症の部分は,有効性の堅固な証拠によって支持された薬の使用のみを列挙 しているので,通常は,所与の状況で関連する代替的な治療法を考慮していない(Comment, "Package Inserts for Prescription Drugs as Evidence in Medical Malpractice Suits" 44 U Chicago L Rev 398 (1977))。この解説者によれば,適応症に挙げられていないということは明確な推奨ではないということで,

信頼できる証拠がないということである(Comment, "Package Inserts for Prescription Drugs as Evidence in Medical Malpractice Suits," 44 U Chicago L Rev 398 (1977))。一方,禁忌の部分は,既知の リスクを得られる可能性のあるすべての利益に対して比較衡量することに基づいて使用しないことを明確 に推奨している,最も確固たる説明になっており,そしてそれゆえ,薬の使用における注意義務の基準の 証拠とする目的からは,最も信頼できる製薬会社の推奨事項のカテゴリーということである(Comment,

"Package Inserts for Prescription Drugs as Evidence in Medical Malpractice Suits" 44 U Chicago L Rev 398 (1977))。

重篤な血液疾患という副作用のリスクがあるので,軽微な感染のためには使われるべきではないという Chloromycetin の製薬会社による推奨は,化膿性中耳炎(Mulder v Parke Davis & Co. (1970) 288 Minn 332, 181 NW2d 882, 45 ALR3d 920),カタル性鼻咽頭扁桃炎及び腸間膜リンパ節炎(Incollingo v Ewing(1971) 444 Pa 263, 444 Pa 299, 282 A2d 206, later proceeding 474 Pa 527, 379 A2d 79)の治療に 際してそれぞれ薬を処方した医師に対する医療過誤訴訟での過失の証拠になった。

製薬会社の添付文書に,粘液分泌が正常でない人に対しては,CompligenやQuadrigenを用いてのワ クチン注射をしないように明示的に警告していたため,医師がこのような患者にワクチン注射をすること の過失に関することについて,陪審問題として提起された(Ezagui v Dow Chemical Corp. (1979, CA2

NY) 598 F2d 727)。エストロゲンを含んでいる経口避妊薬の欄に血栓性静脈炎は禁忌とPDRに記載され

ているから,当該薬はこのような患者に処方されるべきではないという専門家の医学的証言があったので,

このような状況の下,薬を処方する際の注意義務の基準の証拠となった(Witherell v Weimer (1987) 118 Ill 2d 321, 113 Ill Dec 259, 515 NE2d 68)。マーカインは旁頸部ブロックで使われるべきではないという 製薬会社による推奨は,何らかの証拠ではあるが,その使用が過失を構成するような一応の証拠(prima facie evidence)ではない(Ramon v Farr (1989, Utah) 770 P2d 131, 101 Utah Adv Rep 48, 82 ALR4th 155)。

Mycifradinの製薬会社による,特に腎機能障害患者に対しての非経口耳毒性,及び当該薬以外に対して

の器官の耐性によってひき起こされた重度の全身感染のためだけに投与されるべきであるという警告は,

腎機能障害の疑いがある患者を当該抗生物質の注射で治療する際の注意義務の基準の証拠であった (Marchese v Monaco (1958) 52 NJ Super 474, 145 A2d 809)。陣痛を誘発するために使われる Pitocin が 胎児仮死には禁忌という製薬会社の警告は,そのような状況下で薬を与えることについては注意義務の基 準を確立した(Haught v Maceluch (1982, CA5 Tex) 681 F2d 291)。

dextranの製薬会社が血栓性静脈炎を適応症に列挙しなかったことは,dextran の製薬会社の推奨事項

が注意義務の基準を立証したという効力のある専門家による医療証言がないので,そのような症状を治療 するために当該薬を使用することにおいては,過失の証拠ではなかった(Riffey v Tonder (1977) 36 Md

App 633, 375 A2d 1138)。正反対の証拠が存在したため,PDRにおいて,アルコールあるいは薬物の乱用

を合併した憂うつ状態に罹患している患者での Etrafon の使用を避けるようとの記述がされていること

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は,このような症状の患者に当該薬を処方することにおいて精神科医の過失を立証するには不十分であっ た(Speer v United States (1981, ND Tex) 512 F Supp. 670)。

医師がある女性に避妊薬 Ovulen を処方した後,彼女に徐々に増強する強度の頭痛が生じ,最終的には 脳卒中に罹患したという医療過誤事件では,製薬会社による警告からの逸脱が医療過誤を構成しないとい う専門家の医学的証言は,正反対の専門家による証言があった陪審においては,過失を争点にしないよう にするには不十分であった(Hamilton v Hardy (1976) 37 Colo App 375, 549 P2d 1099)。phospholine

iodide は,高眼圧症の治療に使われるべきではないという製薬会社の推奨事項は,(実際には)高眼圧症に

罹患していたが過失なく緑内障にかかっていると診断され,当該医薬品に(緑内障は)適応があるとされて いた患者を当該薬で治療することにおいて,注意義務の基準の証拠ではなかった(Winkjer v Herr (1979, ND) 277 NW2d 579)。

製薬会社の文書において,脊椎麻酔Pontocaine を実施するかどうかの判断は,利点及び起こり得る合 併症の評価に基づいた医師の自由裁量であるとされたことは,少なくとも患者が神経系損傷に罹患してい るという兆候がほとんどない場合においては,当該薬の投与について注意義務の基準を確立しなかった (Smith v South Shore Hospital (1989, 1st Dist) 187 Ill App 3d 847, 135 Ill Dec 300, 543 NE2d 868)。胎 児の未熟さに関する医療過誤訴訟で,胎児の未熟さに対してSeconalの非経口投与が禁忌であるという製 薬会社の警告は,当該医薬品の経口投与で過失の一応の立証(prima facie case of negligence)をするには不 十分であった(Lhotka v Larson (1976) 307 Minn 121, 238 NW2d 870)。患者に与えられた Synthroid の 製薬会社によって提供された禁忌リストは,患者が避けるよう薦められた状態のいずれにも罹患していた という記録がなかったので,証拠として提出することができなかった(Schlesselman v Gouge (1967) 163 Colo 312, 431 P2d 35)。

高血圧を禁忌としてあげているエピネフリン含有キシロカインのPDR項目は,血圧を測らずに高血圧 の患者に当該薬を使用することは,注意義務の基準の範囲内でなかったという専門家の医学的証言と共に,

警告に耳を傾けなかった歯科医の過失に関する陪審問題を提起するものと判示された(Le Beuf v Atkins (1980) 28 Wash App 50, 621 P2d 787)。しかし別の裁判例では,製薬会社の添付文書の同じ薬についての 同じ警告は高血圧の患者に薬を与えることにおいて,それが薬を与える前に,歯科医が病歴をとるべきで あるかどうかに関連する問題に言及しないから,注意義務の基準の証拠ではないと判示された (Schlesselman v Gouge (1967) 163 Colo 312, 431 P2d 35)。

③投薬量 投薬方法

添付文書や PDR における薬の適切な投薬量についての製薬会社の推奨事項は,薬の使用に関する過失 の主張を含む医療過誤事案において注意義務の基準の証拠のもう一つの可能な情報源である。ある解説者 は,通常の投薬量についての製薬会社の説明が明確な推奨事項になっているが,しかしそれらの信頼性は 疑わしいかもしれず,そしてそれぞれの患者によって適量が異なる可能性は高いと言う(Comment,

"Package Inserts for Prescription Drugs as Evidence in Medical Malpractice Suits," 44 U Chicago L Rev 398 (1977))。

ヘビ咬傷を治療する蛇毒血清の適切な投薬量に関する製薬会社の説明は,血清の使用における適切な注 意義務の基準を確立するのに十分であった(Buck v United States (1977, MD Fla) 433 F Supp 896)。ネオ マイシンが経口であるいは筋肉注射によって与えられるとき,適切な投薬量についての製薬会社の推奨は,

傷の部位が血管に富んでいて,そして吸収率が同程度であったであろうという専門家の医学的証言があっ

ドキュメント内 学位授与機関 関西大学 (ページ 46-106)

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