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第5章  建築物を対象とした液状化対策工法の分類・整理

5.3   建築物のライフライン液状化防止・軽減対策

本節では、上下水道、電気・ガス、電話などのライフラインの中で、最も被害の大きかった下 水道(汚水管)について、小規模建築物、大・中規模建築物に区分して、建物の敷地内における その被害の概況と対策を取りまとめる。 

 

(1) 小規模建築物(戸建住宅など)での被害状況 

      戸建住宅など小規模建築物の敷地内の下水道(汚水管)の被害については、地震時の地盤の挙 動や液状化現象による建物・敷地の沈下に伴い発生した段差によって、敷地内の管路と桝(ます)

との取合い部や管路の屈曲部・直管部などの接合部が外れたり、建物基礎躯体からの取出し部分 では配管が縦方向のせん断力を受けて切断するなどの損傷が、多数発生している。 

この損傷により液状化した土砂が汚水管内に流入することにより下水道本管を閉塞させたこ とが、応急復旧を遅らせた要因の一つにもなった。また、建築物の傾斜に伴って配管が逆勾配 となり、汚水を流下することができない状況も見受けられた。 

                 

(2) 大・中規模建築物での被害状況 

マンションなどの集合住宅や小・中学校の校舎などの大・中規模建築物は、その殆どが支持 杭または摩擦杭で施工されており、建築物本体には大きな被害は発生しなかったが、地盤改良 を実施していない建築物については、建築物周囲の地盤沈下によって建物基礎躯体からの取出 し部分で排水管が縦方向のせん断力を受け、配管が切断、損傷するなどの被害が発生している

(上水道の給水管も同様)。また、建築物によっては基礎躯体部分に可とう継手を採用している 例もあったが、これは圧密沈下対策として設置しているものが多く、今回の震災による大きな 沈下量には追随出来ずに破断するなどの被害が生じている。 

さらに、大規模マンション等については、敷地内の埋設管の経路が長く、排水勾配が取れな くなった配管については、それぞれの管理組合で汚水ポンプの設置を含む露出配管で応急復旧 を行ったほか、敷地内の配管にたるみや亀裂の発生箇所の確認等にも時間を要した。 

配管直管接合部の被災 基礎部分の配管の被災 配管屈曲部の被災

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(3) 敷地内のライフライン対策 

①小規模建築物(戸建住宅、自治会集会所・老人クラブ集会所など) 

小規模建築物では、建物の沈下・傾斜を抑制するような敷地全体の地盤対策を図ることが 根本的な解決方法となるが、既成市街地において全体的に対策を進めることは困難である。

しかし、主に戸建住宅敷地内で損傷した排水管から液状化した土砂が流入することによって 下水道本管へ多大な影響を与えたとの報告があることから、宅地内で確認された配管の切断 やずれ等の防止対策を進めることが重要である。 

敷地内での対策としては、基礎躯体からの取出し部には可とう継手を設置し、管路と桝の 取合い部や屈曲部・直管部の接続部には、伸縮継手を設置することが望ましい。ただし、可 とう継手の採用には、小規模建築物の場合は隣地との空地が少ない場合が多いため、可とう 継手の設置が困難であったり、取出し部が多くなるとコストが割高となることが考えられる ため、可とう継手の設置が可能な位置まで配管を床下転がし配管とすることにより、埋設の ための掘削の削減や建物からの取出し箇所の減少を図りコストを下げる効果が期待できるほ か、万一、再液状化による被害が発生した場合においても、埋設管の延長を少なくすること で、被災する箇所を減少させることができると考える。 

市の自治会集会所や老人クラブ集会所などの土間スラブの建築物は床下転がし配管は出来 ないことから、可とう性のある配管材を使用したり、配管ルートをできるだけ短くするなど で可とう継手や伸縮継手を極力少なくする設計が求められる。 

   

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図 5-3-1  屋外排水管に可とう継手、伸縮継手を使用した例

   

   

   

   

表示例 桝(ます)

表示例 桝(ます)

図 5-3-2  床下転がし配管のイメージ

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※継手の規格等 

可とう継手については、30〜50cmの沈下に追随できる性能が望ましい。 

伸縮継手については、10cm程度の伸縮性能を持つ継手を桝の接合部及び直管部(4m前後に1箇所)

に設置することが望ましい。 

 

       

図 5-3-3  汚水排管・雨水排管の対策イメージ    ※液状化に伴う沈下対策への適用には別途検討が必要。

回転エルボが回転

伸縮継手が延長 自在継手が回転

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②大・中規模建築物(公共施設・マンションなど) 

既存の大規模建築物で液状化により建築物の周囲が沈下した建築物の復旧を行う際に は、今後の液状化が発生した場合の地盤沈下を予測して、沈下量に見合う可とう継手を採 用することが望ましい。また、地面の挙動により排水管と桝の取合い部や管路の屈曲部・

直管部の接続部には継手が離脱するのを防止するため伸縮継手を採用することが望まし い。 

新築の大規模建築物の場合は、建物直下に加えて建物周囲にも地盤改良を施すことで、

地盤の沈下を抑制することによって、下水道をはじめライフラインの被害を減少させるこ とができる。 

小・中学校の校舎、体育館などの公共建築物は、災害時の拠点にもなる重要な施設であ るが、今回の震災において建築物周囲の沈下によってライフラインが損傷を受けたことを 鑑み、ライフラインの液状化対策も重要なファクターであると考えられる。 

また、杭で支えられた建物は、周辺地盤の沈下によって建物の出入り口に段差が生じ、

迅速避難に支障が生じたことや、小・中学校など避難所となる施設は受け入れに対しても 支障が生じることを鑑み、出入り口の段差を緩和する措置を施すことが望まれる。 

 

対策案を示すと 

・建築物直下を含めた外周の液状化対策を行う方法(新築時) 

・ピット内への配管により、建築物からの取出し部を最小限として沈下対策を施す方法(新 築時) 

・ブラケット利用による配管により、建築物からの取出し部を最小限として沈下対策を施す 方法(新築時・改修時) 

・建築物からの取出し部に可とう継手や伸縮継手を多用する方法(新築時・改修時) 

・可とう性のある配管材料を使用することで、地盤の液状化に伴い継ぎ手部が破断し土砂が 管内に流入することを極力防ぐ方法(新築時・改修時) 

・建物周囲に配管トレンチを設置する方法(敷地内の排水管以外の配管は勾配が必要でない ことから全経路トレンチを設置するとより効果的)(新築時・改修時) 

・出入り口に段差を生じさせない方策として、建物周囲に地盤改良を施すことや、 

第Ⅲ編 1.2.3 に示す踏掛版の設置や 4.1.3 に示す段差抑制工法を施す。(新築時・改修時) 

など、施設の重要度やライフラインの規模などを勘案して、対策を考慮する必要がある。

特に被災時に被災者の避難や上下水道等の確保の拠点となる施設は、十分な対策を施す必要 がある。 

        参考文献 

1)

時松孝次、田村修次、鈴木比呂子、勝間田幸太:

2011

年東北地方太平洋沖地震における地盤災害、

東京工業大学都市地震工学センター、地震工学研究レポート

No.118, 21-47, June, 2011.

 

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1.  IT試験の概要 

1.1  試験内容

液状化による杭の被災の有無の確認を目的として,小学校二校の支持杭を対象としてIT試験 を実施した。試験は図-1.1 調査地案内図に示す「入船南小学校の校舎棟」および「高洲小学校の 校舎棟」における各々1本の既存既製コンクリート杭(計2本)を対象とした。

ここで,入船南小学校の校舎棟は直下およびその周囲 5.1m幅のエリアに,地盤改良(バ イブロフローテーション:

1.7m正方形配置,深さ 12m)が施された校舎であり,高洲小学校は,無処理の校舎であ

る。

試験を実施した両小学校の杭の仕様を表-1.1 に示す。なお,両校共に杭最上部はSC杭

(外殻鋼管付きコンクリート杭)であり,フーチング直下の杭表面は鋼管となっている。

-1.1

  IT試験実施杭の仕様と試験数量

 

図-1.1  調査地案内図

2.IT試験結果 

表-2.1.2 杭の健全性判定基準

 (a) 先端反射以浅に顕著な反射が無い例(カテゴリーⅠ)

 (b) 先端反射以浅に顕著な反射が無い例(カテゴリーⅠʼ)

   〔先端付近でトリミング現象が生じている〕

 (c) 先端反射以浅に下向きの反射が見られる例(カテゴリーⅡ)

 (d) 繰返し反射が見られる例(カテゴリーⅢ)

杭の健全性判定基準

健全性評価 カテゴリーⅠ,Ⅰʼ:健全である(○)

       カテゴリー  Ⅱ  :部分的なクラック,断面欠損の疑いあり(△)

       カテゴリー  Ⅲ  :杭の連続性が損なわれている(×)

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