顔 画像というイメー ジ空間 の中から目的 の顔画像を探し 出す探索問 題に於いて, 基 本的に は選抜 法に属する2 つ の適合度割 当て 法が提案さ れて いる[Nishio 97]. そ れ はbias 法とファ ジイ 推論を用いたfuzzy 法である.ここではファ ジイ 推 論やファ ジイ
論理との混乱を避けるためにファ ジイ 推論によって適合度を決定するた めのこの 手 法そのものを,他のrating all 法やbias 法と同様の形式でfuzzy 法と呼 ぶことと す る. bias 法は1 つの個体のみを選抜して適合度1.0 を与え,そ の他の個体 にはある バイアス 値を一律に適合度 とし て与える方法である.これはSmith の選抜 法の特 殊 なケース と考えてよい. fuzzy 法はbias 法の改良の中から考案さ れた. 1 つ の個体 を選抜して1.0 の適合度を与えることはbias 法と同じであるが, 選抜に漏れた個 体 に与え る適合度は,選抜さ れた個体とそ の他の個体との関係から,ファ ジイ 推 論によ って決定さ れる.
全ての個体の適合度を直接評価するrating all 法と比較し てbias 法とfuzzy 法で はユー ザー はター ゲット と最もよく似た顔線画を1 つ 選抜する だけで良く 負荷 が非常 に小さ い.し かし, 最終的 に得ら れた韻線画はrating all 法程にはター ゲット と似 たものにな らない.rating all 法とfuzzy 法の違いの1 つは, 前者で は全て の個 体 へ の適合度が類似 度という人間の感覚尺度に基づいて 決定さ れる のに対して, 後者では1
つ の個体だけは感覚尺度によって選抜さ れるが,そ の他の個体の適合度は線 画を描 く パラメータ という物理尺度 に基づいて決定さ れていることであ る.本章ではfuzzy 法にお けるファ ジイ 推論過程に人間の感覚尺度を導入することによ ってrating all 法 によ り近い 適合度決定を行う方 法を提案 する[杉本98]. あ る1 つ の顔 画 像は これを 描く パラメータ で作ら れる多 次元空 間( 以後,顔空間と呼 ぶ) の1 点 に 配置されて
いるが, これを感覚的類似 度に基づいて顔画像が配置さ れて いる空間(以後,感覚距 離空間 と呼 ぶ)へ写像レ この感覚距離空間でファ ジイ 推論を行うことで 人間の感覚 が 適合度の評価に反映さ れるよう に成る.
rating all法はユー ザー の負荷が余 叫 こも大きくIGA のインターフェイス として は 実 用的ではな い.大き過ぎ る負荷はとき にはユー ザー の感覚的 判断 を不正確にするこ と があ る.感覚的抑 断の作業が単純で 簡単であ ればある程,感覚的 判断基準も単純に なり,それが不正確になったり一貫性が失われたりする危険性が少なく成 るといえる.
本章で提案する感覚距 離空 間で のファ ジイ 推論によって適合度を決定する方 法にお い ては,ユー ザー はター ゲット と 最もよく似た個体を選択するという単純な 作業 のみを 行えばよく ,そ の他の多く の感覚的帽 断は,予 め用 意された感覚的基準に基づ いて構 成される空間の中で ,ファ ジイ 推論によって一律 に行われる.こ のため,感 覚的 判断 の一 貫性や 再現性が比較的 確保されて いるといえる.このような理由から本手 法は感 覚的 判断に付随 する恣 意性やあいまい性をできるだけ排除し つつ,適 合度 決定 の過程 に人間 の感覚 を活用した方 法であり, 人間 のイメー ジ空間の中にある解を探索 するよ うな 人間の感覚でし か目的関数が構成できない探索 問題 に有効であ る.
7.2 節で は顔画 像イメー ジ探索で 用いる顔画 像と既 に提案さ れた2 つ の適合度 割 当て 法を説明レrating all 法とこれらの2 つの適合度割当て 法を実験的 に比較し た 結果を示す.そ の後,顔空間で 実行さ れるfuzzy 法の問題点とそ の改 善方 法を示す.7.3
節で はファ ジイ 推論 過程に人間 の感覚 尺度を反映させ るため に導入した感 覚距 離空間 の構成方法を述べ,更にfuzzy 法をこ の感覚距離空間で実行す るため の定式 化 を行う. 7.4節では顔空間で のfuzzy 法と感覚距離空間でのfuzzy 法の被験者実験 による 比較結果を示 す.
7。2 顔 画 像イメー ジ探 索7.2.1 顔空間
本章で用いる顔画像は,目,鼻,口など,顔の構成要素の形状を変化させる12 個 の パラメータ を持って いる一 各パラメータ は3 ビット の変化領城 を持ってお り,0 から7 まで8 段階の変化が可能であ る.このため GA における顔画像の染色体は3G
ビット で 構成さ れる. 12 個 の各パラメータ を軸に持つ空間を顔 空間と定義 する と,2''
×1^=2 町 固の異なる顔が描ける.任意の1 つ の顔 月 ま, この12 次元の顔 空間 の1 つ の点 に対応づけられ,式(7.2.1)のように表現される.
F ニ( 几 ,f ,f … ,八I) ( mill ≦ /, ≦ ■'■ iiiux ) (V.2.1)
こ こでi ^ millと 几maxは顔 空 間の 各軸 几 の下 限 値 と上限 値 で あ り , こ こ で はそ れぞ れ Oと7 の 値 を取 る . こ の顔 空 間 の原 点 り は式(7.2.2)のよ う に定 義 さ れ る .
θ 二( ∂qタ ∂ い θ2
ダ ゜, ∂!,)
染 色体 =全 て0
o, =ト'S' yljj j
`゜1 (7.2.2)
原 点 (平 均 ) 染 色体 = 全 て1
図7.2.1イメー ジ探索実験に用いた顔画像の例
図7.2.1 に顔 画像の例を示す.図の左端 に全ての ビット が Oの顔, 右端に全ての ビット が1 の顔,更 に中央に2 つ の両極の顔の中心である原点に位置する顔を示し た.
原点 に位置する顔は平均 的な顔と考えることができる.
図7.2.2 顔画像イメー ジ探索のためのインターフェイス
7.2.2 顔画像イメー ジ探索
ユー ザー が 意識の中に持っている顔画像イメー ジを探索し,それを猫き出 すため の 顔画像イメー ジ探索 問題を解くシステム をlGA を 用いて構築する.顔空 間の中か ら 目的 の顔画像イメー ジ(以後,ター ゲット と呼ぶ)を探し出す探索 問題は GA によ って解くことができる.し かしこ 各世代では個体に対する適 合度をユー ザー 自 身が決 定しなけ ればな らな い.なぜな らば,ター ゲット はユー ザー の意識 の中に存 在し てお り,そ のター ゲット と個体の間の類似度を評価できるのはユー ザー だけである .こ の
ため,ユー ザー が適合度又は適合度を決定するために必要な 情報を人力 する ためのインターフェイス 画面を図7.2.2 に示すよう に設計した.ユー ザー の感覚的な 判断に於
いて配置的な影 響を極力少なくする ために中央にター ゲット を表示し , 各世代 の個体 群はター ゲット の回り に等距離 にラン ダム な順序で並べた.実 際のイメー ジ探索で は,
このター ゲット はユー ザー の意識の中だけに存在する ものである が,こ の実験 では 被 験者に特定 の顔を実験の期間を通して完全に記憶させることは困難であっ たので,こ のよ うに画面上で提示する形式を採った.勿論,ター ゲット の情報は一 切G A 本体 へ は与えられておらず,GA はユー ザー の入力し た情報のみに基づいて適 合度を 決定す る.
7。2.3 適合度割当て戦略
(I )rating all 法
ユー ザー は 各世代で個体群の全ての顔とター ゲット の顔画像とを1 対 比較して適 合 度を9 段階で評価し,図7.2.2 の中の各個体を表示し でいるサ ブウィン ドの 右端 にあ る ゲー ジをマウス でスライ ドして適合度を直接人 力する.人間は顔つきを 容易に見 分 けるこ とができるが,多くの世代を通して 表示される全ての顔に適 合度を割り当てる
のは厄 介な ことに違いない.事 実,顔画像のイメー ジ探索の実験を通して,ユー ザー は繰り 返し 行わなければならない感覚によ る評価 の要求 に対して精神的な集 中力を失 ってい く 傾向かあるのが解っ た.このことは人間の感覚的判断 の質の低下と IGA の 遅い収束に結びつく .
(II )bias 法
こ の方 法は , 選抜す る個体 が1 個 になっ ただけで, Smith の選抜 法の特殊なケース であるといえる.ユー ザー はター ゲット に最も似ている顔画像をマウス でクリック
してト 個だけを 選抜する. 選択さ れた顔 には 最大適合度(1.0)が与え られ, 選抜に 漏れた他 の顔画 像にはある バイアス 値( 例えば, 0.1) が一律 に与え られる.我々 の 実 験では予 備実験の試行錯誤 の結果から バイアス 値を0.05 とし た.こ の方 法で は,
次 の世代の再生成が選抜さ れた顔画像に依存する度合い が非常に大きく,一度 の選抜 の誤りや 判断の揺らぎ がそ の後の進化の進行に大きく 影響するという問題がある.
(Ill)fuzzy 法
fuzzy 法の処 理手順を 説明するために 顔空間を模式的に3 次元で 表現したも のを 図7.2.3 に示す.まずユー ザー はター ゲット 罰こ近い顔画像ア を 選択し, この顔 画像 に適合度1.0 を与える .次にそ の他の顔画像 几 にはこの選択さ れた顔画 像Pと の関 係からファ ジイ 推論によって 計算さ れる適合度を与える.適合度を決定するファ ジイ 推論 の入力は顔画 像Pと顔画像 几 との類似関 係を表す 尺度 の1 つであ る空間で の距
離と 角度, 更 に世代数であ る.こ の距離と角 度は図7.2.3 の顔 空間上でそ れぞ れ式(7.2.3)(7.2.4) のよう に定義する.
(7.2.3)
角度=∠凡 把 (7.2.4)
ファ ジイ 推論は表7.2.1 に示した25 個のファ ジイルール によって行われる.この表 で,例えばルール5 は次のように解釈する.
if (Distance is small AND Angle IS large
AND Generation is small) then Fitness is medium.
こ の人力と出力の関係はKohonen が提案したメキシカンハット・アル ゴリ ズム の考 え に基づいて 設定さ れて いる[Kohonen 89]. 初期の 世代では 最適な 顔を 選 択する こ とはユー ザー にとって 非常 に難しい.なぜなら,ラン ダム に作成さ れた顔は 非常に多 様であ るからである.そ のため進化が進んでいな い初期の世代では,特定 の顔 に偏る
p)(選 抜 さ れ た 顔 画 像)
(ター ゲット)
図7.2.3ファ ジイシステム の人力(距離,角度) の定義