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第一節 総説(Rn. 1-3)

【条文】

257条1項 違法な行為を行った他の者 に犯行の利益を確保させる目的で,そ

の者を援助した者は,5年以下の自由 刑又は罰金に処する。

3項 本犯への関与を理由として可罰的 である者は,庇護を理由としては罰せ られない。ただし,本犯に関与してい ない者に対して庇護を教唆した者につ いては,この限りではない。

【成立要件概観】

Ⅰ 構成要件

 1.客観的構成要件

  ⑴ 主体:本犯者以外の者   ⑵ 客体

   ⒜ 他人の違法行為(本犯)

   ⒝  本犯によって取得された利益

(ein durch die Vortat erlangter Vorteil)

  ⑶  行為態様:利益を確保する際の援 助行為(Hilfeleistung bei der Vor-teilssicherung)

 2.主観的構成要件   ⑴ 故意

  ⑵  本犯者に利益を確保させる目的

(Absicht der Vorteilssicherung)

Ⅱ 違法性

Ⅲ 責任

法定刑─5年以下の自由刑又は罰金 ただ し,先行犯罪の法定刑を超えない範囲 未遂処罰なし

まずは,ドイツの連邦通常最高裁の判示を 通じて,庇護罪がいかなる犯罪かを確認す る。

「庇護罪の本質は,司法妨害である。つま り,妨害行為がなければ被害者又は国家機関 が本犯者の責任を追及することで実現される はずの適法状態の回復を妨害するということ である。本犯者に対する責任追及によって行 われる被害者に加えられた損害を回復し,本 犯によって得られた利益を本犯者から再び剥 奪する可能性を,庇護罪の行為者は失わせる か,減少させる。」(BGH NStZ 1994, 187(1993 年11月16日))

違法行為から得られた利益については,国

家機関又は被害者によって原状回復がなされ るのが本来であり,原状回復の見込みを侵害 するのが庇護罪である。したがって,庇護罪 は,犯行の影響を除去するという司法作用を 保護するものであるが,それと同時に,原状 回復請求権をもつ被害者の保護にも資する点 で個人的法益に対する罪という側面も持つ。

公共の利益も同時に保護される限り,庇護罪 に同意することは認められない。

司法作用に対する罪である点では財産犯に 分類することは必ずしも適当ではないもの の,実際には本犯が財産犯であるのが典型的 である。したがって,財産犯概論の対象とし てここで紹介する。

典型例としては,犯罪によって本犯者が取 得した被害品を隠匿したり保管したりする行 為である。

本章に対応するのは,Rengier, §20, Begün-stigung, 361-369頁である。

第二節 成立要件の検討 第一款 主体

第一項 本犯の正犯者の除外(Rn. 19)

明文上,「他の者」と定められているため,

本犯者は庇護罪の主体になりえず,自己庇護 は不可罰である。

第二項 本犯の共犯者

1 .本犯の共犯者の庇護罪による可罰範囲

(Rn. 19)

257条3項1文によって,本犯の共犯者に ついても庇護罪で処罰されないと定められて いる。これは,共罰的事後行為と理解されて いる。ただし,257条3項2文は,本犯に関 与していない者に庇護を教唆した場合には庇 護罪の教唆が成立すると定めている。学説で は,この定めについては疑義が示されてい る。

2.本犯の幇助と庇護罪の区別(Rn. 18)

本犯の既遂以前の関与者は専ら本犯の幇助 として処罰される。また,本犯の終了後の関 与者については専ら庇護罪として処罰され る。問題となるのは,本犯の既遂後,終了前 の関与者である。この段階での幇助がありう

ると考える場合,本犯の幇助と庇護罪の関係 が問題となる。

この点,BGHSt 4, 132(1953年4月23日)

は,幇助と庇護罪は排他的関係に立つとし て,行為者の意図が本犯行為を成功させるこ とに向けられているか,本犯が得た利益の確 保に向けられているかによって区別してい る。これに対して,257条3項1文により幇 助を優先すべきという議論もなされている。

第二款 客体

第一項 先行する違法行為(本犯)(Rn. 5)

本犯には構成要件該当性・違法性は必要で あるが,責任は不要である。賍物罪と異な り,財産に対する違法行為には限られていな い。未遂も含めていかなる犯罪であれ,剥奪 可能な利益を得た限りは,あらゆる犯罪が本 犯たりうる。本犯は財産犯が典型ではある が,例えば,収賄罪も本犯たりうる。

第二項 本犯によって取得された利益 1.本犯者の元での利益の残存(Rn. 6)

本犯者に対する責任追及による利益の剥奪 を妨害するという庇護罪の性質上,庇護行為 の時点で,本犯者の元に利益が残存している ことが必要になる。

2.代替利益(Ersatzvorteile)

⑴ 直接性(Rn. 7, 8)

問題は,いかなる範囲で利益が残存してい ると評価されるかである。違法行為に由来す る当初の利益が別個の利益に転換した場合

(代替利益,と呼称される)でも,なお庇護 罪が成立しうるかが問題になる。

257条の文面上,代替利益を含むことも可 能である。しかし,257条の処罰範囲を過剰 に拡張することを回避すべく,違法行為から

「直接」取得した利益に限定すべきと考える のが判例・通説である。例えば,BGH NStZ 2008, 516(2008年4月29日)は,窃盗犯人 が盗品を売却した代金を振り込んだ口座か ら現金を引出して本犯者に渡す行為につい て,庇護罪の成立を否定している。直接の利 益は盗品であって,その売却代金は直接性を 欠くため庇護罪の客体にならないからであ

る。

⑵ 直接性の例外(Rn. 9)

金銭については直接性の例外とされてい る。両替・口座移動・投資がなされても,物 の同一性は問題にならず,現金と同等の処分 可能性だけが問題だからである。

例えば,詐欺によって得た小切手をフラン クフルトの口座に入金した後,ルクセンブル クの銀行に振込んで株と外国国債に投資し,

さらに売却した金銭について,現金化して本 犯者に渡した行為について,BGHSt 36, 277

(1989年10月24日)は庇護罪を認めている。

その際,BGHは,経済的考察方法によると,

金銭的価値を有する利益がいかなる形態で残 存しているかは重要ではないと判示してい る。

第三款 行為態様 第一項 定義

利益の確保を援助する行為をいかに定義す るかについては争いがある。少数説は,行為 者の認識上,利益確保に適したあらゆる行為 を含むと解している。しかし,通説は,利益 の確保に客観的に適しているとともに,主観 的にも利益を確保するつもりの行為と理解し ている。つまり,援助行為とは,利益剥奪か ら本犯者を守り,原状回復の見込みを悪化さ せるのに客観的に適した行為でなければなら ない。

第二項 問題となる行為類型 1.盗品の売却援助(Rn. 11)

盗品の売却を援助する場合,直接に得られ た利益である盗品は本犯者から失われる。そ れにもかかわらず,経済的な換価によって本 犯者が利益を剥奪されることから保護されて いれば,援助行為に該当すると理解されてい る。ただし,単なる換価の援助では足りず,

利益の剥奪からの保護という要素が必要であ ることに注意が必要である。

例えば,BGHSt 2, 362(1952年5月15日)

は,盗品である自転車の売却先を探すことに 関与する行為について,盗品の経済的価値を 本犯者に確保するとともに,所有権者のため

に盗品が剥奪されることを妨害しているとし て庇護行為に該当すると判示している。

なお,盗品の売却援助は賍物罪にも該当し うる(219頁)。庇護罪と賍物罪の双方の成 立要件が充足されていれば観念的競合になる。

2.物の保護(Rn. 12)

盗品を修理したり壊れないように保護した りする場合については,主観的に利益の確保 に向けられたものとはいえないとして援助行 為に該当しないと解されている。

3.不作為(Rn. 13)

保障人的地位が認められる限り,不作為に よる援助もありうる。例えば,盗品を発見し た警官が何もしない場合である。

第四款 主観的要件 第一項 故意(Rn. 14)

故意の対象に本犯の存在も含まれる。しか し,いかなる種類の犯罪であったかにまで故 意は及ぶ必要はない。本犯者が違法行為に よって利益を得たことに対する故意で足り る。

第二項 主観的超過要素 1.意図の必要性(Rn. 15)

通説は,本犯者に利益を確保させることに ついて意図が必要と解している。そのような 解釈によって,庇護罪の客観的な構成要件の 広範さを制限できるからである。単に,本犯 者の利益確保が必然的な帰結であるという認 識では足りない。行為者が,原状回復の見込 みを悪化させ,本犯者を剥奪から保護するこ とを意図していることが要求される。

2 .被害者への盗品売却援助事例(Rn. 16, 17)

本犯者に利益を確保させる目的という要件 によって処罰範囲が制限される具体例として 議論されているのは,本犯者から被害者に盗 品を売却することに関与する場合である。

この場合,第三者への売却の援助と同様,

本犯者に経済的価値が確保されていることに 注目すると客観的構成要件の充足は認められ

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