6
.
﹁ なま け者 の嫁 とり
﹂依 田千 百子
﹃金 徳順 昔話 集﹄ 二六 一頁
︒ 20
.
﹁ 藁縄 三本 が嫁 三人 に﹂
﹃6
│7 全羅 南道 新安 郡︵ 2︶
﹄ 四七 頁︒ 21
.
﹁ 粟稲 三本 で長 者に なっ た話
﹂﹃ 6│ 7全 羅南 道新 安郡
︵2
︶﹄ 六 三頁
︒ 28
.
﹁ 藁縄 三本 が⁝
﹂韓 相壽
﹃韓 国民 譚選
﹄一 四七
〜一 五二 頁︒ 29
.
﹁ 怠け 者と 粟稲 一本
﹂崔 来沃
﹃全 北民 譚 語文 叢書 18﹄ 一七 六頁
︒ 30
.
﹁ 粟稲 一本 でど んど ん成 功し てい たが
﹂任
#
宰﹃任
#
宰 全集!
第四 章 日本 昔 話 と韓 国 昔 話の 比 較 考察 すで
に︑
﹃ 集成
﹄﹃ 大成
﹄に よる 指摘 のよ うに
︑昔 話の 研究 にお いて は︑ 日本 昔話
﹁藁 しべ 長者
﹂型 と同 じ話 型と し て
︑韓 国昔 話﹁ アワ 一つ ぶで 大臣 の娘 を貰 う﹂
﹁ 藁縄 一 本 で長 者 に なる
﹂と い う 昔 話が 指 摘 され て お り︑ 両国 の 先 行 研 究に よっ て︑ 韓国
・日 本 昔話
﹁藁 し べ 長者
﹂話 型 の 出典 と し て︑ イ ンド 説 話 集﹃ カタ ー
・サ リ ッ ト・ サー ガ
﹄︑ 仏 教 説話 集で ある
﹃ジ ャー タカ
﹄︑ 仏 典﹁ 根本 説一 切有 部毘 奈耶
﹂巻 第三 十二
・﹃ 六度 集経
﹄巻 三第 二十 二な どが 指摘 さ れ てい るこ とが 分か った
︒ まず
︑韓 国と 日本 昔話 の話 型に つい て考 察し てみ よう
︒韓 国昔 話は
︑交 換す るモ チー フか らみ ると
︑ 1﹁
粟一 粒﹂ 型 粟一 粒↓ 鼠
↓ 猫↓ 牛
↓ 大臣 の娘 2﹁ 藁縄 一本
﹂型 一本 の藁 縄↓ 壺
↓ 驢馬
↓ 大臣 の娘 と
いう ふう に︑ 二つ の亞 型に 分け るこ とが でき る︒ 一方
︑日 本昔 話は
︑ a﹁
三年 味噌 型﹂
― 415 ― 韓国昔話「藁縄一本で長者になる」型の研究
大根
︵蓮 葉︶
↓ 味噌
↓ 刀︵ 武士
︶ b﹁ 観音 祈願 型﹂ 蜜柑
↓ 反物
↓ 馬↓ 田 畑 と
いう 二つ の亞 型が 認め られ てい る︒ 韓国 昔話 と日 本昔 話と は︑ モチ ーフ まで 一致 する わけ では ない が︑ どち らか と い うと
︑従 来︑ 韓国 昔話 の2
﹁藁 縄一 本﹂ 型と 日本 昔話 の﹁ 観音 祈願 型﹂ とが 類似 して いる と指 摘さ れて きた
︒い わ ば
︑モ チー フの 違い は︑ 韓国 と日 本の 文化 的な 相違 にも とづ いて いる と言 える
︒ そこ で韓 国と 日本 昔話 の話 型の 特徴 につ いて 考え るた めに
︑日 本昔 話﹁ 藁し べ長 者﹂ 話型 比較 対象 とす る韓 国昔 話 二 八話 の内 容を 一覧 表に した 比較 表︿ 表2
﹀を 参照 とし
︑比 較考 察を 行う こと にし たい
︒
︵一
︶発 端1
︿主 人公
﹀ 日本 昔話 は﹁ 藁し べ長 者
﹂分 析 表﹂ によ る と︑
﹁ 若い 子
﹂﹁ 頭 のき く 子
﹂﹁ 継 子﹂ など 様 々 な人 物 が 登場 す る
︒そ の 中 でも
﹁親 孝行 な息 子﹂ や﹁ 貧し い 人﹂ の例 が 多 く見 ら れ︑
﹁ 観音 祈 願 型﹂ に は﹁ 貧し い が 信仰 心 が 深い 若 者
﹂の 例 も ある
︒日 本昔 話の 主人 公は
︑善 人と いう 印 象を 与 え るも の が 多い
︒と こ ろ が︑ 韓 国昔 話 は︑ 怠 け者 の 登 場 が多 い
︒ 主 人公 の性 格は
︑昔 話や 説話 の結 論に おい て︑ 偶然 に起 きた 思い がけ ない 結果 では なく
︑因 果応 報に よる 結果 とい う ふ うに 読み 取る こと もで き︑ 人物 設定 は話 の展 開に おい て大 事な モチ ーフ であ ると 考え られ る︒ 本論 にお いて
︑日 本昔 話の 数よ り比 較対 象と なる 韓国 昔話 の数 が少 ない とは 言え
︑日 本昔 話﹁ 藁し べ長 者﹂ 類話 の 場 合は
︑登 場人 物や 語り の展 開は 様々 であ るが
︑韓 国 昔話 の 場 合は
︑怠 け 者 の息 子 が 家 から 追 い 出さ れ る 例 が多 く
︑
韓国昔話「藁縄一本で長者になる」型の研究 ― 416 ―
二 八話 の中
︑十 七話 にも 至っ てい る︒
︵二
︶発 端2
︿契 機﹀
*
︵
︶の 番号 は︑
︹ 表2
︺に よる 事例 番号 を表 わす
︒ 両国 とも
﹁藁 筋﹂
﹁ 藁す べ﹂
﹁藁 縄﹂ の 事例 が 多 く見 ら れ る︑ 韓国 昔 話 の 場合 は
︑二 二 三﹁ 粟一 粒 で﹂ 型 に おい て
︑ 交 換す るも のの 始発 は﹁ 粟﹂ であ り︑ 日本 昔話 は︑ 山口 県大 島郡 東和 町
﹁馬 の 毛#
﹂ の よう な 珍 しい 事 例 も見 ら れ る が
︑い ずれ にせ よ︑ わず かな もの から 次々 と物 を交 換し
︑利 益を 得る とい う展 開に
︑変 わり はな いよ うで ある
︒ 日本 昔 話 の場 合
︑﹁ 観 音 祈願 型
﹂は
︑﹁ 観 音の お 告 げ$
﹂︑ 新 潟 県 北蒲 原 郡 豊 浦町
﹁神 様 の 夢の お 告 げ%
﹂︑ 鹿 児 島 県 薩 摩 郡 下甑 島
﹁ 仏 のお 告 げ&
﹂ な ど の事 例 が 見ら れ る が︑
︹表 2︺ に よる と
︑韓 国 昔 話の 場 合 は︑
﹁ 初 め に 見 つ か っ た 物を 持っ て東 へ向 って 歩け
﹂と いう
﹁先 祖の お告 げ﹂
︵ 19︶ の例 一つ のみ であ る︒
︵三
︶交 換 日 本
:
!
観 音の お告 げ︑ 藁↓ 蜜 柑↓ 絹 か反 物↓ 馬↓ 家・ 畑↓ 長 者に なる
⁝﹁ 観音 祈願 型﹂ 難 題︑ 藁↓ 大 根↓ 三 年味 噌↓ 刀
↓ 米↓ 長 者に なる
⁝﹁ 三年 味噌 型﹂ 韓 国
:
!
怠 け者↓ 家か ら追 い出 され る︑ 藁縄
↓ 水が め︵ また は︑ 水瓶
︶↓ 米
↓ 馬↓ 村 長の 娘↓ 謎 を 出す
⁝二 三三
﹁藁 縄一 本﹂ 型
"
若 い男
︑科 挙試 験を 受け に出 る︑ 粟一 粒↓ 鼠
↓ 猫↓ 雄 牛⁝ 大 臣の 娘と 結婚
⁝ 二 二三
﹁粟 一粒 で﹂ 型
― 417 ― 韓国昔話「藁縄一本で長者になる」型の研究
前述 した よう に︑ 何を 交換 する の かと い う こと に よ って
︑日 本 昔 話 は﹁ 観音 祈 願 型﹂
﹁三 年 味 噌型
﹂に
︑分 類 さ れ て きた
︒韓 国は
﹁藁 縄一 本型
﹂と
﹁粟 一粒 で型
﹂に 分け られ る︒ 同じ 話型 と指 摘さ れる 日本 の﹁ 観音 祈願 型﹂ と韓 国 の
﹁藁 縄一 本型
﹂に は︑
﹁ 藁す べ﹂ と﹁ 藁縄
﹂と いう わず かな もの から 次々 と物 を交 換し て行 く︒ 特に
﹁観 音祈 願型
﹂ と
﹁藁 縄一 本﹂ 型の 特徴 は馬 が登 場し
︑死 んだ 馬が 生き 返っ て︑ その 馬が 幸運 を呼 ぶと いう 場面 にあ って
︑他 の話 型 に は見 られ ない
︒ 一方
︑日 本昔 話の 場合 は観 音の お告 げに よる か︑ また は偶 然な 出会 いに よっ て︑ 思い がけ ない 幸運 を手 に入 れた と い う例 が多 い︒ しか し︑ 韓国 では 日本 のよ うに
︑善 意の 交換 で 利益 を 得 ると い う 型の ほ か
︑預 け たも の が なく な る と︑ 代 わり に
︑ も っ と高 価 な もの を 求 め︵ 1︑ 2︑ 4︑ 6︑ 23︑ 21︑ 28︑ 29︑ 30︑ 31︑ 32︶︑ 利 益 を 得 ると い う モチ ー フ が多 く 見 ら れ る
︒あ る い は
︑す で に 死 ん だ 人 を ま る で 生 き て い る よ う に 人 を だ ま し て
︑利 益 を 得 る と い う 事 例
︵5
︑9 10︑
︑ 12 13︑ 14︑ 17︑ 25︑ 27︑
︶も 見ら れる
︒
︵四
︶結 末 さら に︑ 日本 昔 話は 兵 庫 県 宍栗 郡 千 種町
﹁大 家 の 婿に な る!
﹂︑ 鹿児 島 県 大 島郡 徳 之 島町
﹁姫 君 が 嫁 にな る"
﹂︑ 岐 阜 県吉 城郡
︵上 宝村
︶﹁ 姫 様の 婿に なる
#
﹂︑ 愛媛 県北 宇和 郡三 間町
﹁長 者の 婿に なる
$
﹂︑ 鳥 取県 岩 美 郡国 府 町
﹁婿 に な る%
﹂ と六 つの 例が ある
︒そ の中
︑鳥 取県 岩美 郡国 府町
﹁婿 にな る﹂ 話を 除 く 五 話が
︑身 分 の 高い 人 と の結 婚 で 結 果 がも たら され てい る︒
﹁ 三年 味噌 型﹂ にお ける
﹁刀
﹂の 場 合︑ 日 本に お い ては 武 士 と いう 身 分 との 関 わ りが 考 え ら れ る︒
韓国昔話「藁縄一本で長者になる」型の研究 ― 418 ―
一方
︑韓 国昔 話の 場合
︑長 者に なる 結果 のほ か︑ 村長 にな るか
︵8
︶︑ ま たは
﹁粟 一粒 で﹂ 型の
﹁大 臣の 娘と 結婚
﹂ の よう に︑ 身分 の高 い女 性と の結 婚︵ 1︑ 2︑ 4︑ 5︑ 19︑ 23︑ 29︶ とい う結 末も みら れる
︒身 分の 高い 女性 との 結 婚 とい うの は︑ 男性 の身 分変 化も 予想 され
︑身 分社 会で あっ た朝 鮮に おい ては
︑出 世の 意味 とし て読 み取 れる
︒ ま
と
め
︵一
︶本 稿に おけ る考 察の 結果
︑日 本で は︑
!
難 題︑ 藁︑ 大根︑三 年味 噌︑ 刀︑ 米︑ 長者 にな ると いう 三年 味噌 型と
︑
"
観 音 の お 告 げ︑ 藁︑ 蜜 柑
︑絹 か 反 物
︑馬
︑家
・畑
︑長 者 に な る と い う﹁ 観 音 祈 願 型﹂ と い う 二 つ の 系 統 が あ り
︑
﹃宇 治拾 遺﹄
﹃今 昔﹄
﹃ 古本 説話
﹄は
︑﹁ 観音 祈願 型﹂ に属 する
︒ 韓 国に は
︑
!
若い 男︑科 挙 試験 を 受 け に 出 る︑ 粟 一 粒︑ 鼠︑ 猫︑ 雄 牛︑ 大 臣 の 娘 と 結 婚 と い っ た
︑﹁ 粟 一 粒 で 型
﹂ と
︑
"
怠け 者︑ 家 に出 さ れ る︑ 藁縄
︑水 か め︑ 米︑ 馬︑ 村 長の 娘 謎
︑長 者 に なる と い う︑
﹁藁 縄 一 本﹂ 型が あ る こ と が分 かっ た︒
︵二
︶右 の事 項の 範囲 から で も︑ 交換 の 成 立す る 条 件 が異 な る︒ つ まり
︑韓 国 昔 話1
﹁粟 一 粒﹂ 型で は
︑例 え ば﹁ 鼠 が 粟粒 を食 べた
﹂こ とか ら︑ その 責任 を求 めて 鼠を 捕ま えて くる よう に求 める
︒い わば
︑交 換は 要求 した 結果 とし て 生 まれ てい る︒ とこ ろが
︑韓 国昔 話2
﹁藁 縄一 本﹂ 型で は︑ やむ をえ ない 状況 にお いて 交換 が生 まれ るも ので
︑そ のこ とが 観音 と い う超 越的 な存 在の 介在 する 必然 性と かか わる のだ が︑ これ は日 本昔 話の 交換 とよ く似 てい る︒
︵三
︶日 本の 昔 話︑
﹃宇 治 拾 遺﹄ や﹃ 今昔
﹄で は
︵特 に﹃ 今 昔﹄ の場 合
︶︑ 観 音 に助 け を 求め
︑お 告 げ によ っ て
︑偶 然
― 419 ― 韓国昔話「藁縄一本で長者になる」型の研究
な 出会 いか ら物 の交 換が でき て︑ 裕福
︵ま たは 成功
︑出 世︶ にな ると いう
︑宗 教的 思想 を背 景と する 事例 が多 く見 ら れ る︒ しか し︑ 韓国 昔話 事例 の中 では
﹁先 祖 のお 告 げ﹂ の 事例 は 見 られ る が
︑﹁ 観 音の お 告 げ﹂ の事 例 は 現在 の と こ ろ 見当 たら ない
︒ 日本 昔話
・説 話で は︑ 観音
︑地 蔵な どに 助け られ たり
︑お 告げ を受 ける とい うモ チー フが 中心 で登 場人 物た ちは ど ち らか とい うと
︑受 け身 で偶 然と なり ゆき たい に身 を任 せる とい った 印象 が強 い︒ これ に対 して 韓国 昔話 には
︑相 手 の 責任 を求 めて 替わ りの もの を要 求し たり
︑人 をだ まし て幸 運を 手に 入れ ると いう 事例 が多 くみ られ る︒ この よう な 点 から 考え ると
︑日 本昔 話に 比べ
︑韓 国昔 話で は仏 教的 要素 は強 調さ れて いな いと 考え られ る︒
﹃ ジャ ータ カ﹄ や仏 典を 出典 とし なが ら︑ 韓国 昔 話﹁ 藁 しべ 長 者﹂ 類 型に お い て︑ 仏 教的 要 素 が読 み 取 れな い と い
ソ ン キ ソ ル
う こと につ いて
︑成 耆説 氏は
﹁朝 鮮時 代に は︑ 仏 教が 圧 迫 され て い たこ と と
︑崇 儒 政策
︵儒 教 を 崇め る と い う政 策
︶ に よっ て︑ 仏教 的色 采か らど んど ん離 れて いっ たと 考え られ る!
﹂ と︑ 指摘 して いる
︒
︵四
︶日 本 の場 合
︑結 婚 の事 例 六 話 の中
︑五 話 が 身分 の 高 い人 と の 結 婚 で あ る︒
﹁三 年 味 噌 型﹂ に お け る﹁ 刀﹂ の 場 合
︑日 本に おい ては 武士 を意 味す るで あり
︑韓 国昔 話と 同様 に身 分や
︑出 世と の関 わり が考 えら れる
︒ 韓国 昔話 には
︑長 者や 出世 のほ か︑ 大臣 の婿 にな るな ど結 婚に 成功 する 事例 が多 く見 られ るが
︑日 本昔 話は
︑婿 に な る話 は少 なく
︑長 者に なる とい う事 例が 多い
︒韓 国昔 話に おい て身 分の 高い 人と の結 婚の 事例 から みる と︑ 身分 社 会 であ った 朝鮮 時代 にお いて
︑出 世が 特に 強調 され てい る︒
︵五
︶日 本昔 話・ 説話 には 現在 とこ ろ︑ 失敗 譚は 見 当 たら な い が︑ 韓国 昔 話 は 次々 と 物 を交 換 し︑ 最 後に は
︑必 ず し も 裕福
・結 婚に 成功 する とい う事 例だ けで はな く︑
︵ 3︑ 6︑ 7︑ 11︑ 23︑ 28︑ 30︶ 話の よう な失 敗譚 も見 られ る︒ さら に︑
﹁ 根本 説一 切有 部毘 奈耶
﹂に み え る﹁ 他の 商 人 たち が 主 人 公を 殺 そ うと 企 て る場 面
﹂と
︑︵ 表 3︶
﹁藁 一 本
韓国昔話「藁縄一本で長者になる」型の研究 ― 420 ―