11 回のホモ接合による常染色体劣性型 OPMD 患者 は家系数ベースで約 5%存在した。11 回ホモ接合で発 症する常染色体劣性型OPMDの発症年令は中央値65 歳(55歳〜69歳、n=4)と遅いうえに、眼症状の発現が数 年以上遅れる可能性が示された。この結果からは、眼症 状に欠ける場合でも、OPMD を鑑別から外すべきではな いと思われる。
4. 優性アレルのホモ接合による重症化
12回のホモ接合患者と13回のホモ接合患者を各1名 ずつ経験した。後者は、30 歳台発症で、誤嚥性肺炎を 繰り返し、43 歳から全身に近位筋優位の筋力低下が進 行した。17 回の患者よりもさらに顕著に早発・重症であり、
ホモ接合は相乗的に作用していることが示唆された。
【結 論】
1. リピート数と発症年令の間に逆相関があることにつ いて有意差を持って確認した。
2. 遺伝子型による表現型の特徴
(GCN)10/12 晩発・軽症(60歳台発症)
(GCN)10/17 初期から四肢の障害、遠位筋罹患
(GCN)11/11 晩発、眼症状の発現が遅れる 3. 優性アレルのホモ接合で相乗的に重症化する 4. 臨床的に眼咽頭遠位型ミオパチーと区別しがたい
患者が一部存在する。
【学会発表】
南 成祐, 島田綾子, 相生優子, 埜中征哉, 西野一三:
眼咽頭型筋ジストロフィーの表現型とGCNリピート数. 第 54回日本神経学会学術大会, 東京, 2013.5.30.
平成25年度
Ⅲ. 筋強直性ジストロフィー1型・2型の検査法に関する 検討
【緒 言】
筋強直性ジストロフィーには1型と2型があり、遺伝子 変異はいずれも繰り返し配列の異常伸長である。1 型
(DM1)ではCTGが50回〜数千回に、2型(DM2)では CCTGが75回〜1万回以上にまで増大する。
遺伝子診断では、この異常な伸長を判定する。今回、
筋強直性ジストロフィー(1 型および2 型)の遺伝学的診 断について、近年の保険収載や技術的進歩を踏まえた 検査手順を提示することを目的とした。
【方 法】
① 保険適用の調査
② 検査会社の受託検査の調査
③ 推奨されている検査手法の概説、および問題点の整 理
④ 方法の改良や検討
(ア) DM1のnon-RIサザンブロット法における新規標
識法の検討
(イ) DM1の中断配列の解析法の検証
(ウ) DM2のrepeat-primed PCR法:プローブハイブリ を必要としないフラグメント解析法の検討、およ
び3’側解析の開発
(エ) DM2のnon-RIサザンブロット法の確立
⑤ それらを踏まえて診断手順を検討する。
【結果と考察】
1. 検査の保険適用
遺伝性疾患を対象とする「遺伝学的検査」は平成 18 年度から保険導入され、二年ごとに対象疾患や付帯条 件が見直されてきた。保険点数は当初2,000 点であった が、現在は 4,000 点になっている。筋強直性ジストロフィ ーについては、平成 24 年度に収載され、1 型か2 型か の限定はなく、検査手法についても制約はない。
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2. DM1の遺伝学的検査手法の概説
DM1 の遺伝学的検査では、①サザンブロット法、②通 常のPCR法、③repeat-primed PCR法の3種類の方法を 組み合わせて行うことが一般的に推奨されている。サザ ンブロット法は、現在のところ、大きな異常伸長アレルのリ ピート回数が分かる唯一の方法である。しかしながら、手 間と時間がかかるという欠点がある。また、100 回未満の 短い伸長を見逃す恐れがある。一方、通常のPCR法は、
正常者の大半について簡単かつ迅速に除外診断が可 能で、また、100 回未満の短い伸長を検出できる。しかし、
大きな伸長を検出することができないため、患者を直接 陽性判定できない。また、ホモ接合の正常者も判定でき ない。その後、repeat-primed PCR(RP-PCR)法が開発さ れた(原報では triplet repeat-primed PCR を略して TP-PCR法と呼んでいるが、DM2との汎用性からRP-PCR法 の名称で統一した)。この方法は、片方のプライマーをリ ピート内部に置くことで PCR 産物のラダー伸長が得られ、
陽性と陰性のどちらの判定も可能である。唯一の欠点は、
リピート回数が約100回以上になると、伸長ラダーから陽 性判定は問題なくできるものの、リピート回数は求められ ない点である。これらの手法の他には Long-PCR 法があ るが、結局はプローブハイブリが必要な手間や、長大な 伸長に対する不確実性といった面から、日常の臨床検査 においては優越性がさほどない。
3. DM1のサザンブロット法を検査会社が受託
検査会社による受託項目を大手三社について調査し たところ、各社ともDM1の遺伝学的検査をサザンブロット 法で受託していることが分かった。ビー・エム・エルは正 式項目としており、三菱化学メディエンスは正式上市で はないがWeb掲載しており、エスアールエルはWebサイ トに掲載はないが特別依頼項目として依頼には応じてい ただける。今回、陽性例の見本を取り寄せたが、三社とも、
長大な伸長の検出に向くEcoR I消化と、Bgl IやBamH I などの短い伸長の検出に向く消化の両方を行うという基 本ルールが守られていた。またスメア-バンド見逃しの主 因であるバックグラウンドの汚れも少なく、見本を見る限り では技術的な問題はとくにないように思われる。スメア-バ ンドのリピート回数の表し方は、エスアールエルが中央値、
ビー・エム・エルと三菱化学メディエンスは何回〜何回と なっていた。以上から、DM1 のサザンブロット解析は、手 間がかかる手法であるために個々の病院検査室で行うこ とは困難であるが、検査会社が受託をしており、十分信 頼性のある結果が得られると思われる。
自前でサザンブロット法を行う場合、現在は non-RI 標
識プローブが使用可能である。定評のある DIG 標識(ロ シュ)はもちろん、今回、アルカリフォスファターゼを酵素 反応で標識する新しい方法(日立アロカ)を試し、遜色な い結果が得られた。
図4. DM1のnon-RIサザンブロット解析
4. RP-PCR法では、DM1リピート中断配列により偽陰性
を生じる
RP-PCR法は簡便に陽性・陰性の両方の判定ができる
優れた方法であるが、患者の数%において、リピート配
列の 5’端側解析では陽性になるのに、同じ患者の 3’端
側解析では伸長ラダーが認められなかったり、不規則で 不十分だったりすることが分かってきた。それらをサザン ブロット解析すると、リピート領域全体は確かに伸長して いた。ということは、少なくともリピート 3’末端付近に CTG 繰り返しとは異なる何らかの配列があることが推測される。
じつは、2009 年に CCG 中断配列が存在する家系が初 めて報告されており、現在までに数件の論文が確認され た。それらによると以下のようなことが分かってきている。
#中断配列の大半がCCGであるが、他にはGGC, CTC が見つかっている。#その位置は、世代間で変化するこ とがある。#リピート伸長を抑制する傾向がある。#非典 型的な臨床症状に関与する可能性がある。
図5. DM1のRP-PCR解析で認められる偽陰性
3症例の5’端解析と3’端解析を掲載した。5’端では異
常伸長ラダーが陽性であるが、3’端では陰性ないし不完 全である。数%の患者にこのような 3’端解析の偽陰性が 54
見つかる。
5. DM1リピート中断配列の解析方法の検証
そこで、臨床遺伝学的な意義を追求するためには、ま ずは個々の患者の中断配列を同定する必要があると考 え、過去の論文に習い、1 名の患者 DNA を対象として
RP-PCR 変法による解析を試みた。すなわち、通常用い
る(CTG)5プライマーの最後のCTGを各種の中断配列に 置き換えた中断配列解析用リピート内プライマーを用い
て RP-PCR変法を行う手法である。すると、CCG 解析用
プライマーのときのみ複数のピークを持つ増幅産物が得 られた。この増幅産物全体をシークエンス解析したところ、
ピーク位置にほぼ一致して CCG 中断配列が現れた。さ らに、ピークのない場所にも、CCG 中断配列が連続する 領域があることがわかった。これは、中断配列が密に存 在すると逆にプライマーがアニールできないためと説明 できる。以上のように、RP-PCR 変法〜シークエンス解析 によってリピートの末端付近の中断配列の解析がある程 度は可能なことが確かめられた。今後、患者数を増やし て解析し、臨床遺伝学的な意義を追求する計画である。
また、リピート深部の解析手法は今後の課題として残った。
図5の3症例目では、CCG中断配列解析用プライマ ーを使用したときに増幅産物のピークが現れ、そのシー クエンス解析でGCG配列が多数見つかった。
図6. 中断配列のRP-PCR変法を用いた解析
6. DM2の遺伝学的検査手法の概要
つぎにDM2の遺伝学的検査であるが、DM1と同様な 手法が用いられる。ただし、サザンブロット法の信頼性は DM1 のときのようには高くなく、初期の研究によれば、約 20%の患者で偽陰性となるとも言われていた。その理由 は、平均でも5000回=すなわち20000塩基対もの長大 な伸長がある上にモザイシズムが顕著なため、スメア-バ ンドの検出が DM1 以上に難しいからと考えられている。
そのため、DM2ではPCR法とRP-PCRの役割がむしろ 中心的である。まず、健常者の90%以上はPCR法で正 常へテロ接合として陰性判定できる。日本人において DM2は大変まれであることが我々の研究で分かっている ため、この除外スクリーニングはとくに効果的である。また、
RP-PCR 法では、サザンブロット法で見逃してしまうような
患者も含め、99%以上の診断感度があるとされている。よ って、DM2ではRP-PCR法による検査が最も重要である。
検査会社では DM2 の遺伝学的検査は行われていな い。
7. DM2のRP-PCR法をさらに確実な方法に改良
DM2において RP-PCR 法は99%の診断感度を持つ
重要な検査法であるため、簡便性と信頼性の更なる向上 を狙って改良を行った。第一に、プローブハイブリによる 増感検出を不要とするべく、PCR条件をチューニングし
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