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「市民参加」としての衣服の処分行動

1. 研究目的

本章の目的は,第 3 章で示した家庭における消費者教育の枠組みのうち,「市民参加」と しての衣服の処分行動のあり様に接近することである。序章で述べたように,衣服のリユ ース・リサイクルは円滑に進んでいるとは言い難い現況にあるが,近年の衣服の消費行動に は変化が生じつつあることも指摘されている。そこで本研究は,特に子ども服を商品とし て取り扱うリサイクルショップに着目して衣服のリユース・リサイクルに関する実態を把 握し,消費者教育の主概念を構成する「市民参加」としての衣服の処分行動について考察 する。

2. 研究方法

研究は次のように進めた。まず(1)衣服のリユース・リサイクルに関する人々の意識や 行動を既往研究等から探る。次に(2)リサイクルショップにおけるヒアリング調査を通し て,リサイクルショップを介した中古子ども服の流れ,及び,リサイクルショップを利用 する消費者の実態を把握する。(3)調査から得られた知見を,第 3 章で示した家庭におけ る消費者教育の枠組みに当てはめて,衣服を通した消費者市民教育の内容について検討す る。

3. 結果と考察

3.1. 既往研究からみた衣服のリユース・リサイクル

ここでは衣服のリユース・リサイクルに関する既往研究から,中古衣服やリサイクルショ ップに対する消費者の意識についてまとめてみたい。南 1)は,長崎市内の一般消費者を対 象に衣服の使用状況とリユース意識についてアンケート調査を行っている。これによると 図表 21 のように,衣服を処分する方法は「一般ゴミ(56)」として廃棄する人が最も多か った。次いで多かった回答は,「タンスの肥やし(32)」という,いわゆる「死蔵」で,こ れは「知人への譲渡(28)」や「リサイクルショップ利用(12)」,「リユース・リサイクル

(10)」を上回っていた。

玉田 2)は人が衣服を捨てられない理由を概観して,生活と生産とが直結していた時代や 中古衣服をできる限り有効利用する循環システムが機能していた時代には,衣服を捨てる という発想は有り得なかったし,また,家族の思い出の詰まった衣類を捨てられない心情 もあった。しかし現代生活では,効率的な居住空間を考えると思い出の服も処分するしか ない現実にあることを詳述している。また,近藤ら 3)が廃棄物の特性によって家庭廃棄物 33 種類の分類を行ったところ,和服,外出用洋服,セーター・シャツ類は,カスケード利 用の可能性がきわめて大きく,廃棄容易性のきわめて小さいグループに属することが示さ れた。山田ら4)は大学生を対象に調査を行い,調査対象者の約 7 割が有効利用の方法がわ

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からないために不要衣服をゴミとして廃棄している実態を明らかにしている。林 5)は,こ れまでの繊維製品リサイクルの流れを生活者レベルでのリユースの視点,産業レベルでの 技術的リサイクルの視点,国際的輸出入レベルでの流通・循環の視点に整理し,現在はリサ イクルの入り口である家庭からの排出システムが整備されていないためにリサイクルシス テムが有効に機能していないことを指摘している。さらに,大学生を対象としたリサイク ルに対する意識と行動調査から,回収システムの明快性がリサイクル実践を促すことも立 証している。

要するに衣服は,特別な思い入れやカスケード利用性が感じられるうちは死蔵され,そ れらが解消される頃,おもむろに廃棄されているといえる。このような衣服の大部分がま だ着用可能で衣服としての機能を充分果たすことができるであろうことは想像に難くない。

また,南 1)が行った古着の着用に対する抵抗感の有無についての調査では,抵抗感が「あ る」・「すこしある」と答えた人は 37%であったのに対し,抵抗感が「あまりない」・「ない」

と答えた人は 64%であった。この傾向は特に若い世代で顕著であった(図表 22)。また,

古着に関するイメージを複数回答でたずねた結果では,「安い,お得(76)」,「掘り出し物 がある(68)」等のポジティブなイメージが大半を占めていた(図表 23)。

世代が若いほど,古着の活用に前向きであることは林 5)の研究でも報告されており,現 在は死蔵・廃棄されている衣服が中古衣服として扱われるならば,衣服本来の寿命を延ばす ことが可能であることを示唆しているといえる。

図表 21 衣服の主な処分方法(複数回答)

(出所) 南(2013)24頁

8

32 28 10

56

0 10 20 30 40 50 60

その他 タンスの肥やし 知人に譲る リユース・リサイクル 一般ゴミ

58

図表 22 古着に対する抵抗感の有無(年齢群の比較)

図表 23 古着に対するイメージ(複数回答)

  (出所) 南(2013)23頁

34

16

11

2 15

9

18

10

0 10 20 30 40

抵抗がない どちらかというと抵抗がない どちらかというと抵抗がある 抵抗がある

10‐30代 40‐80代

( % )

   (出所) 南(2013)25頁

8

33 30 8

28 22 2

25

68 15

76

0 20 40 60 80

その他 探すのが大変、時間がかかる

サイズがない 古臭い、部屋着などの用途がメイン 何かしらの欠陥がありそう 清潔感がない、雑然としている

(値段が)高い

(服選びなど)面白い 掘り出し物がある おしゃれ 安い、お得

59

3.2. リサイクルショップを介した中古子ども服の流れ

前節では,衣服のリユース・リサイクルに関する人々の意識や行動を既往研究から把握し たが,ここでは衣服のリユースの中継地点となるリサイクルショップに注目する。熊本市 内において,子ども服を取り扱うリサイクルショップを対象としたヒアリング調査6)~9)を 行い,地域におけるリサイクルショップの実態把握を試みた。

ヒアリング対象としたのは,熊本市内で中古子ども服を扱うリサイクルショップ 4 店舗 で,営業年数は 1 年から 8 年以上と幅があった。4 店のうち 1 店はショッピングモール内の テナントとして営業しているが,他は路面店である。ヒアリングは 2013 年 3 月から 4 月に 実施し,それぞれ 2 回以上,各約 1 時間のヒアリングと店内見学を行った。ヒアリング内 容は,リサイクルショップに持ち込まれる中古衣服についてとリサイクルショップ利用者 についてである。図表 24 はフリーペーパーや店舗チラシ,メンバーズカードに記された各 店舗の PR 等から抜粋した各店の概要である。尚,店舗名,及び,ヒアリング対象者の名前 は,ヒアリング対象者の了解の上,伏せて表記している。

図表 24 調査対象店舗の概要

概 要

1 「もったいない運動」に参加しよう。高価買い取り実施中。

キッズ,レディースを中心としたリサイクル SHOP です。やんちゃで,元気っ 子,成長はうれしいケド,すぐサイズアウト・・・。もっともっとうちの子,

おしゃれをさせたい!! そんなママ,パパを応援します!! USED,古着,中古,

色々言い方はあるけど,世界共通『もったいない』がテーマです。

ベビー服から 160 ㎝サイズまで,人気ブランド服も豊富に揃っています。おも ちゃやベビーカーなどの育児グッズも買取中。キッズスペースもある広いフロ アで,「お得に」「ゆったりと」お買い物を!

子ども服・子ども用品のリサイクルショップ,賢いママの強い味方! 店内で は子ども服・ベビー服・子ども靴などの衣料のほか,ベビーカーやチャイルドシ ート,歩行器などをおトクに変えます。もちろん買い取りもしてもらえて,現 在は冬服買い取りを受付中。

※ 出所)『PRIMA』2013.4,Vol.6,p.18,発行:Free Style「Prima」編集部,『ワイ ヤーママ熊本版』1 月号,2012.12.14,p.3,発行:株式会社ブレイントラスト,

等から筆者作成

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ヒアリングの結果,子ども服リサイクルショップに持ち込まれる中古衣服は,ブランド 服,ノンブランド服,フォーマル服,死蔵衣服に分類されることがわかった。ブランド服 とは,ヒアリング対象者の言葉をまとめると「知名度の高いブランドの子ども服」であり,

具体的にはラルフローレン,バーバリー,ヒステリックグラマー,ギャップ,デニムアン ドダンガリー等のブランド名が挙げられていた。フォーマル服は入学式,卒業式,発表会 用のスーツ,ワンピース,ドレス等,儀礼的場面で着用される衣服である。死蔵衣服とは,

ここでは衣替え等の衣服整理の際に排出されたと思われる一見して古いデザインの子ども 服を意味するが,何年前のデザインを「古い」とするかは店舗や査定者によって異なり,3 年から 10 年の幅があった。またブランド服であると同時に死蔵衣服でもある場合の分類は,

その服の状態によるとしていた。ブランド服,フォーマル服,死蔵衣服に分類されないも のがノンブランド服に相当する。

図表 25 は,子ども服リサイクルショップを介した中古子ども服の流れを示している。ま ず,①家庭で不要となった子ども服が,消費者 A によってリサイクルショップに持ち込ま れ,各店舗の基準によって査定される。②査定価格が消費者 A に了承されない場合は返却 される。また,商品価値がないと査定された中古子ども服は,消費者 A と交渉の上,無料 引取りされるか,店舗によっては消費者 A に返却される。

③買い取られた中古子ども服は,必要な場合は洗濯,補修等を行い店頭に陳列される。

陳列形態は概ね,ブランド服,フォーマル服は設置されたそれぞれのコーナーに陳列され,

ノンブランド服は「ベビー」,「80」,「90」…「160」,「男児用」,「女児用」のようにサイズ,

性別ごとに分けて陳列される。④陳列された中古子ども服は,消費者 B によって選択,購 入される。売れ残り商品は,状況によって値引き販売,均一価格販売,福袋販売等の販売 促進が行われる。

⑤最終的に売れ残った商品は不良在庫となり,商品価値がないと査定されて無料引き取 りされた中古子ども服とともに,産業廃棄物として処理業者に引き渡される。業者に引き 渡した後,中古子ども服がどのように処分されるかについては,各店とも把握していなか った。⑥ウエスとしてリサイクル可能なものは自動車工場へ引き渡すルートもある。この ルートを保有しているのは 1 店舗だけだった。この店では,商品とならない中古子ども服 の海外寄付を試みたこともあったが,寄付したはずの中古子ども服が実際は販売されてい たことが判明する等,送付先で意図していた活用法がなされない場合があったため,現在 は行っていなかった。商品とならない中古子ども服のウエスリサイクルへのルートを検討 している店舗もあった。また,⑦当該店舗が販売したと思われる中古子ども服が再び持ち 込まれる場合もある。ある店舗では,特にフォーマル服を購入した客に対して,不要にな った場合は再度持ち込むよう積極的に呼び掛けていた。

子ども服のリサイクルショップを利用する消費者の状況については,買取りを目的に利 用する消費者 A と購入を目的に利用する消費者 B とがあるが,そのどちらも母親が大半を 占める。しかし消費者 B の中には,帰省する孫のための着替え用に中古子ども服を購入す

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