• 検索結果がありません。

⑴ 2015年度入学学生の状況

 近年、保育者を目指す学生のピアノ歴は全体的に 浅く、本学の平成27年度入学生では入学前5年以上 のピアノレッスン経験者は全体の18%、幼児期に3 年程度或いは高校の授業でのピアノ経験者が52%、

残りの30% は初心者である。

 本学では幼児教育学科の学生に2年間のピアノレ ッスンを実施(1年次:選択科目、2年次:卒業必 修科目)しておりピアノ初心者の学生にも保育者と しての音楽表現が出来る力を身に付けられるように カリキュラムを作成し、その他様々なサポートも行 っている。特に平成22年度からは入学予定者に対し て入学前ピアノレッスンを実施し、入学後のスムー ズなレッスンへの移行を促している。また、平成27 年度から授業後の補習・春季夏季休暇中補習も実施 している。

⑵ ピアノ指導とその計画

 2年次前期15回の授業では1年次後期に引き続 き、幼児教育現場での実践的音楽表現力・指導力を 修得するため、以下の項目を目標として実演授業を 実施する。

1 ピアノ演奏に関する基本的な知識・技能を理 解・修得する。

2 ピアノ演奏に必要な練習準備の方法・必要性 を理解・修得する。

3 歌いながらピアノ伴奏を一人で演奏する弾き 歌いに関する基本的な知識・技術を理解・修 得する。

4 ピアノ演奏・弾き歌い演奏を通して音楽活動 の楽しさ・喜びを体験し、仲間と共有し共に 向上していく。

 上記の目標を達成する為、次のように授業を進め た。

 各人のピアノ技能に応じて初級クラス・中級クラ ス・上級クラスに分け、交替で個人レッスンするこ とで人の演奏を聴いて自分の学びとし、人前で演奏 することで社会人に求められる態度や責任感を獲得 するように課した。テキストは『ブルグミュラー25 の練習曲』(全音楽譜出版社、2008)、『ソナチネアル バム1・2」(全音楽譜出版社、2005)、『魔法の伴奏 で保育力アップ 「表現」がみるみる広がる!保育ソ ング90』(明治図書出版社、2012)。『保育ソング」

(明治図書出版社、2012)、『こどものうた200』(チャ イルド社、1998)等を用い、保育園・幼稚園等での 実習に向けて更に童謡弾き歌いの技能を高めると共 に、就職試験に備えて自由曲のレパートリーを作れ るよう指導した。弾き歌い課題曲には保育園・幼稚 園実習を念頭に、季節に合わせた歌・園生活や行事

報 告 保育者志望学生のためのピアノ指導⑶

― 岡山短期大学幼児教育学科における「音楽Ⅰ(C)」の授業を中心として ― 白 神 厚 子

抄 録 本稿は、岡山短期大学における保育者志望学生のピアノ指導についての概要及び具体的内容に

ついて整理したうえで、実際の指導成果についての考察を行ったものである。とくには、岡山短 期大学の2年生前期開講科目である「音楽Ⅰ(C)」を考察対象としている。考察の結果、一定の 指導効果をあげていることがわかった。

キーワード

音楽Ⅰ(C)、保育者、ピアノ指導、幼児教育

〈連絡先〉白 神 厚 子

岡山短期大学 幼児教育学科 e-mail address:ashiraga@owc.ac.jp

白 神 厚 子 に合わせた歌を選曲しており、これらの課題曲をマ

スターすることで自信を持って実習に臨めるように 配慮した。

 全15回の授業のうち、1回目に(バスごっこ・お もちゃのチャチャチャ)2曲の暗譜での春休み課題 曲実技人前演奏、5回目に(ちょうちょう・おべん とう・かえるの合唱・春がきた)9回目に(せんせ いとおともだち・おかえりのうた・かたつむり・み ずあそび)13回目に(たなばたさま・しゃぼんだま・

おばけなんてないさ・ありさんのおはなし)各4曲 の暗譜での童謡弾き歌い実技人前演奏を実施し、14 曲の弾き歌いレパートリーを持つことが出来るよう シラバスを作成している。

 2年次前期は6月から行われる保育園実習のため 授業の時間割変更が多く、ピアノレッスンの間隔が 短くなり14曲全ての課題曲を仕上げることが困難な 学生が増える傾向にある。シラバスに15回の授業内 容を具体的に記し、より一層丁寧に授業計画を説明 することで実技人前演奏の期日に合わせて計画的に 予習・復習の自主練習に取り組み、成果を上げられ るよう求めた。各回の授業内容をマスター出来なか った学生には授業後の補習を行うことで遅れを取り 戻させるよう努め、特に童謡弾き歌い14曲の暗譜で の演奏が達成出来なかった学生には、その都度補習 で完成させるように丁寧に指導している。

 さらに15回目に実施する自由曲実技人前演奏に臨 めるようにすると共に就職試験の準備として「ブル グミュラー25の練習曲」「ソナチネアルバム1・2」

等から各人の技術進度に応じた自由曲を暗譜で演奏 できるようにレッスンを行った。

 春休み課題曲実技人前演奏の平均得点率は49%、

童謡弾き歌い実技人前演奏の平均得点率は77%、自 由曲実技人前演奏の平均得点率は69%、音楽Ⅰ(C)

としての最終成績(実技人前演奏の得点を含む専門 的学習成果の得点に汎用的学習成果の得点を加えた 成績)の平均得点率は74%となった。音楽Ⅰ(B)の 平均得点率の結果を踏まえ春季休暇中補習を行った が、学習意欲が低く補習に出席しなかった学生が春 休み課題曲の平均得点率を下げていると見られる。

 最終成績の得点率を入学前ピアノレッスン受講回

数別に見ると、0回73%、1回76%、2回74%、3 回72%、4回76%、5回64%、6回78%、となり1 年次後期と比べて受講回数5回の学生も徐々に成績 の改善が見られる。

 2年次前期の時点で退学者は4名で、内2名は受 講回数0回、受講回数1回と2回が各1名となって おり、受講回数の少ない学生が学習意欲を失いやす い傾向が続いていると言える。最終成績には前述の 通り、実技人前演奏の得点以外に専門的学習成果の 得点と汎用的学習成果の得点が含まれている。その ため純粋なピアノ実技演奏の得点と多少の差が見ら れるが、概ね学生の実技レベルは平均的に上昇して いる。

 本稿は、2年生の必修科目である音楽Ⅰ(C)の学おわりに 習成果についてまとめたものである。その結果とし て、学生の実技レベルは上昇していた。

 今後も継続的に指導を続け、その都度、指導の改 善等していきたい。

引用・参考文献

ブルグミュラー『ブルグミュラー25の練習曲』全音 楽譜出版社,2008.

ツェルニー『ツェルニー100番練習曲 解説付』全音 楽譜出版社,2005.

ツェルニー『ツェルニー40番練習曲』全音楽譜出版 社,2005.

ツェルニー『ツェルニー30番練習曲』全音楽譜出版 社,2008.

木村ケイ編『指づかいつきバイエルピアノ教本』全 音楽譜出版社,1998.

小林美実『こどものうた200』チャイルド1998.

全音楽譜出版社出版部編著『全訳ハノンピアノ教本』

全音楽譜出版社,2008.

全音楽譜出版社出版部編著『ソナチネアルバム1・

2』全音楽譜出版社,2005.

岩口摂子・高見仁志編集『魔法の伴奏で保育力アッ プ「表現」がみるみる広がる!保育ソング90』明 治図書出版社,2012.

保育者志望学生のためのピアノ指導⑶

【資料】平成27年度教育計画(シラバス)1頁目

白 神 厚 子

【資料】平成27年度教育計画(シラバス)2頁目

保育者志望学生のためのピアノ指導⑶

【資料】平成27年度教育計画(シラバス)3頁目

白 神 厚 子

IInstruction of the Piano for the Student who wants to be a Childminder ⑶

― Mainly on a Class of “Music I” (C) in the Preschool Education Subject of Okayama College ―

Atsuko Shiraga Abstract

 This paper performed consideration about the real instruction result after having arranged it about a summary about the piano instruction of the childminder choice student in the Okayama college and concrete content. I do in particular “music I” (C) which is an opening of a course subject with consideration in earlier period of second grader of the Okayama college. As a result of consideration, I understood that I achieved a constant instruction effect.

Key Words

 Music I (C), childminder, instruction of the piano, preschool education

岡山学院大学・岡山短期大学 紀要 39, 71 - 77, 2017

はじめに

 本稿は、「幼児期の教育」に関わる保育者を志望す る学生のためのピアノ指導が、シラバスに沿って、

いかにその指導が展開され、入学時から卒業時まで 学生の実技進度がどのように到達したかを考察した ものである。授業のみならず、入学前ピアノレッス ン・授業後補習・春季夏季休暇中補習を通してピア ノ指導を行うという試みが、各期の成績にどのよう に反映されているか併せて検証することとしたい。

本稿では、2015(平成27)年度入学学生の2年生前 期の「音楽Ⅰ(D)」の授業を対象としている。

1.岡山短期大学幼児教育学科における2015年度 入学学生の状況とピアノ指導の計画

⑴ 2015年度入学学生の状況

 近年、保育者を目指す学生のピアノ歴は全体的に 浅く、本学の平成27年度入学生では入学前5年以上 のピアノレッスン経験者は全体の18%、幼児期に3 年程度或いは高校の授業でのピアノ経験者が52%、

残りの30% は初心者である。

 本学では幼児教育学科の学生に2年間のピアノレ ッスンを実施(1年次:選択科目、2年次:卒業必 修科目)しておりピアノ初心者の学生にも保育者と しての音楽表現が出来る力を身に付けられるように カリキュラムを作成し、その他様々なサポートも行 っている。特に平成22年度からは入学予定者に対し て入学前ピアノレッスンを実施し、入学後のスムー ズなレッスンへの移行を促している。また、平成27 年度から授業後の補習・春季夏季休暇中補習も実施 している。

⑵ ピアノ指導とその計画

 2年次後期15回の授業では2年次前期に引き続 き、幼児教育現場での実践的音楽表現力・指導力を 修得するため、以下の項目を目標として実演授業を 実施する【資料】。

1 ピアノ演奏に関する基本的な知識・技能を理 解・修得する。

2 ピアノ演奏に必要な練習準備の方法・必要性 を理解・修得する。

3 歌いながらピアノ伴奏を一人で演奏する弾き 歌いに関する基本的な知識・技術を理解・修 得する。

4 ピアノ演奏・弾き歌い演奏を通して音楽活動 の楽しさ・喜びを体験し、仲間と共有し共に 向上していく。

 上記の目標を達成する為、次のように授業を進め た。

 各人のピアノ技能に応じて初級クラス・中級クラ ス・上級クラスに分け、交替で個人レッスンするこ とで人の演奏を聴いて自分の学びとし、人前で演奏 することで社会人に求められる態度や責任感を獲得 するように課した。

 テキストは『ブルグミュラー25の練習曲』(全音楽 譜出版社、2008)、『ソナチネアルバム1・2』(全音 楽譜出版社、2005)、『魔法の伴奏で保育力アップ「表 現」がみるみる広がる!保育ソング90』(明治図書出 版社、2012)、『こどものうた200』(チャイルド社、

1998)等を用い、保育園・幼稚園への就職を想定し てピアノ技能の更なる向上と豊かな音楽表現力の獲 得を目指した。2年次後期を迎えた学生は保育園実 習・施設実習・幼稚園実習を体験しており、より明 確な目的意識を持って授業に臨むことができる。園

報 告 保育者志望学生のためのピアノ指導⑷

― 岡山短期大学幼児教育学科における「音楽Ⅰ(D)」の授業を中心として ― 白 神 厚 子

抄 録 本稿は、岡山短期大学における保育者志望学生のピアノ指導についての概要及び具体的内容に

ついて整理したうえで、実際の指導成果についての考察を行ったものである。とくには、岡山短 期大学の2年生後期開講科目である「音楽Ⅰ(D)」を考察対象としている。考察の結果、一定の 指導効果をあげていることがわかった。

キーワード

音楽Ⅰ(D)、保育者、ピアノ指導、幼児教育

〈連絡先〉白 神 厚 子

岡山短期大学 幼児教育学科 e-mail address:ashiraga@owc.ac.jp

関連したドキュメント