第 6 章 結論
6.3 課題・展望
6.3.2 展望
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6.1 銀行建物 1890~1981 年1873~2018 年の銀行建物の通史的な変遷を明らかにするための一節として、銀行業の業 法を画期とする 1890~1981 年の銀行建物の外観の変遷について検証した。
銀行業の業法である銀行条例がされた制定された 1890 年から、銀行条例が施行された
(1928 年 1 月)翌年の 1929 年までの銀行建物について、国内五銀行(三井銀行・三菱銀 行・安田銀行・住友銀行・第一銀行)の建物外観に共通する建築要素を通して草創期の銀 行建物はどのような建物であったのかを検証した。以下が結論として示された。
①国内ではじめての銀行建物としては、1873 年に第一国立銀行が竣工している(設計・施 工:清水組)。そして 1890 年以降の銀行建物では、1920 年前後からの銀行建物の外観に おいて、角地、窓防護、外装石、ベースメント、ペロン、オーダー、コーニス、レリー フ、平屋根、アーチの建築要素が共通してみられるようになっていた。
②1890~1929 年の銀行建物では、折衷主義とされる明治・大正期の銀行建物では、建築様 式だけではなく建築要素についても取捨し組み合わせ整理されて建物外観がつくられ ていた。
③そして全体の 60%以上の銀行建物で採用されていた建築要素 9 項目のうち、オーダーと レリーフの 2 項目は装飾性以外に建築的な機能性を持たない建築要素であり、その他の 建築要素 7 項目のうち角地、窓防護、外装石は銀行業務の機能的な建築要素として調査 対象としたものである。ペロン、コーニス、ベースメント、平屋根の 4 項目については、
それぞれ様式としてのかたち(装飾性)だけではなく、銀行建物における機能性を兼備 している建築要素といえる。1890~1929 年の銀行建物に共通する建築要素については、
様式的なかたち(装飾性)と機能を併せもっていたことが共通の建築要素となった(60%
以上の銀行建物で採用された)一つの要因であることが考察された。
1890~1929 年の銀行建物は、殖産興業を目的とした銀行制度における産業金融の建物とし て威厳・信頼などを表現するために、古典主義様式を採用した。建築様式の意味から採用
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されたものではなく、かたちとして様式の部分(建築要素)を組み合わせて設計されたも のだったことが示されている。
1928 年 1 月、銀行業務の明確化、銀行の組織・経営面での強化などを目的として、銀行 条例にかわる銀行法が施行された。業法の変化および 1930 年以降の社会・経済環境の変化 により、1920 年前後以降 60%以上の銀行建物に共通して採用された建築要素および銀行建 物の外観は 1930 年以降どのように変化したのか。1930~1981 年に東京都内で建設された 三菱銀行および大阪府内で建設された住友銀行の銀行建物を対象として、1890~1929 年の 銀行建物の外観に共通する建築要素が 1930 年以降の銀行建物ではどのように変化したの か(建築要素の有無・採用率)により検証した。以下が結論として示された。
①1890~1929 年の銀行建物の外観に共通する建築要素である角地、窓防護(格子)、外装 石、ベースメント(基壇)、ペロン、オーダー(ピラスター)、コーニス、レリーフ、アー チ、平屋根のうち、1930 年以降も採用された建築要素は角地と平屋根の 2 要素で、1981 年の銀行建物まで採用されている。角地と平屋根以外の 8 項目の建築要素については、オ ーダー、レリーフ、アーチは 1944 年前後、ベースメントは 1950 年前後、窓防護、外装石、
ペロン、コーニスは 1962 年前後で銀行建物から確認されなくなったことが示された。
②1930~1981 年の銀行建物の外観の変化について、段階的に古典主義様式の外観から機能 的・現代的な外観に変化していることが示された。1930 年から 1950 年前後までは古典主 義様式または古典主義様式の建築要素をもった銀行建物が確認され、1946 年前後からは古 典主義様式の建築要素はみられないが建物外観に古典主義様式の構成やモチーフを継承し た機能的・現代的な銀行建物が確認されはじめていることが示された。すなわち銀行建物 の外観は、1946 年前後から 1950 年代初期の間で古典主義様式から古典主義様式のイメー ジを継承した機能的・現代的なかたちへと変化して、それらの銀行建物は 1962 年前後まで 確認されている。そして 1962 年前後以降は、カーテンウォールや硝子による外観の銀行建 物に変化したことが確認された。
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6.2 銀行の大衆化と銀行建物外観の建築要素の変化銀行建物は銀行の営業を目的としていることから、銀行業務の変化は銀行建物の外観の 変化に影響を及ぼすと考え、1873 年の第一国立銀行設立以来の変化とされる銀行の大衆化 という変化に着目して、銀行業務の変化を検証した。銀行の大衆化という銀行業務の変化 に対して銀行建物はどのように変化したのか、銀行業務の変化と銀行建物の変化を照合す ることで銀行業務と銀行建物の変化の関係、銀行建物の変化の要因を検証することを目的 として銀行の大衆化を調査・分析した。
①個人取引への経営方針および個人取引の金融商品の展開に対応して、銀行建物外観も変 化していることが確認された。銀行で経営方針として大衆性預金拡大が示され、個人顧客 向けの商品・サービスを提供する業務のための銀行建物外観に変化していることが確認さ れている。それまでの古典主義様式の建築要素を採用して重厚・威厳などをイメージさせ る銀行建物外観から、古典主義様式の外観の構成やモチーフを採用しながら明るく誰でも 入りやすい銀行建物外観へと変化していることが確認された。銀行取引により対象顧客が 変化したことに合わせて、銀行建物外観も変えられたことが示された。
②銀行大衆化の銀行勘定と銀行建物外観の変化の関係。銀行勘定は銀行業務の結果として 集計され、銀行における勘定は銀行業務(資産・負債)の性質を表す係数とされている。
そこで産業金融から個人取引拡大への銀行の変化(大衆化)について、銀行勘定を指標と して 銀行建物の変化と銀行勘定の変化に直接的な関連性を検証することはできなかった。
③銀行店舗には、地域の特性、その店舗が対象とする顧客に合わせた銀行建物外観の変化 があり、店舗によって建物外観の変化に違いがあることが示された。東京都の都心部・副 都心部の周辺の区・市部への店舗配置と、都心 3 区内での店舗配置は対象とする顧客の違 いから店舗展開の方法が違うことが示された。銀行の大衆化に伴う銀行の店舗展開の方針 では人口増加地域とされていたが、人口量の減少および人口増減率がマイナスの都心 3 区 内での店舗展開(廃止・移転・再開・名称変更など)が確認された。東京都内の銀行建物
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について、都心 3 区内の銀行建物外観と都心 3 区以外の銀行建物外観では、1890~1929 年 の銀行建物外観に共通する建築要素の採用率の変化に差異があることが確認された。都心 3 区内の銀行建物外観における 1890~1929 年の銀行建物外観に共通する建築要素の減少は、
都心 3 区以外の銀行建物外観より年代的に遅いことが示された。個人取引増大を経営方針 とした銀行業務へ転換しているが、地域別の銀行の対象顧客の違い(都心 3 区の主に法人 と都心周辺部および市部の主に個人)による銀行建物外観の変化の違いが確認された。
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6.3 課題・展望6.3.1 課題
本論では、1890~1981 年の五銀行(三井・三菱・安田・住友・第一)を対象として、銀 行建物の外観について、銀行建物外観に共通する建築要素およびその変化(推移)と、銀 行の大衆化という銀行業務の変化と銀行建物外観の変化との関係を検証した。
課題は以下の 6 点と考える。
①五銀行としてデータ、調査・分析を進める。1890~1929 年の銀行建物外観については 五銀行を対象としたが、1930~1981 年の銀行建物外観の調査については三菱銀行と住 友銀行を対象とした。店舗配置の地域展開についても、東京以外の都市(大阪・名古 屋など)を対象とした調査、銀行建物外観の変化との関係の検証が必要である。
②銀行建物の変化については、資料・データの観点から銀行建物の外観を研究対象とした。
しかし銀行建物として、銀行業務と直接的に関係する建物内部に関する研究が必要で あると考える。
③銀行業務の検証に関して、銀行業務を構成する指標を増やすことが必要である。銀行の 大衆化における銀行業務の指標として貸出、決済業務に関する勘定およびデータによ る分析調査により銀行業務の変化がより精緻化されると考えられる。
④国内銀行におけるシェア、影響度から都市銀行の銀行建物を対象とした。合併・統合な どによる連続性の確保に関する問題はあるが、地方銀行、貯蓄銀行、特殊銀行等の銀 行建物についても研究対象としたい。
⑤銀行業務の変化と銀行建物の変化の関係については、統計分析による検証が必要である と考える。銀行業務と銀行建物外観の変化の関係について更に明らかにすること。
⑥1981 年から 2018 年までの銀行建物に関する研究を継続すること。高度経済成長期以後 の銀行建物外観の調査により 1873 年から 2018 年までの銀行建物外観に関する通史的 な変遷を明らかにする。また金融制度改革、フィンテックなど銀行業務の大きな変化