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皮膚透過代替膜としての Strat-M

®

の有用性評価

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前章では、ヒト皮膚透過性を模倣する人工膜として、シリコーン膜の評価を 行った。シリコーン膜はある範囲の薬物の透過性を予測する上では有用であっ たが、正確な予測ができない薬物もあることから、製品開発のために用いる材 料としては理想的ではない。以下に改めて、製品開発という視点でヒト皮膚代 替膜の必要性について論じる。

過去20年間で、35種類以上のTDDSs 製剤が米国、欧州、日本で承認されて

いる39)In vitro皮膚透過試験は新しいTDDSs製剤を開発するのに有用であると

考えられているが、近年ヒト皮膚や動物皮膚を用いない評価法が必要とされて きている。すでに、Parallel artificial membrane permeability assay(PAMPA)や Skin-phospholipid vesicle-based permeation assay(PVPA)で使用される人工膜が、

経口投与に適した薬物のスクリーニングの試験期間短縮のために近年使用され

ている 40-42)。皮膚透過性は他の粘膜透過性よりもかなり低いため、莫大な化合

物ライブラリーからの候補化合物の選択は時間を費やす。それゆえに、人工膜 や3次元培養ヒト皮膚モデルがTDDSs製剤を開発するためのヒトや動物皮膚の 代替膜として使用されてきた経緯がある10, 21, 22, 43)。今までの皮膚や膜透過性の 検討では、代替膜やヒト、動物皮膚に対する化合物の透過係数PFluxを指標 に試験されていた3, 10, 44)。Sinkoらは、角層に含まれる脂肪酸やセラミドを導入

したPAMPAについて報告している18)。このPAMPAはモデル化合物に対するヒ

ト皮膚と合成膜の透過係数が 1 対 1 の相関ではなかったが、おおよそのヒト皮 膚透過性を予測するのに用いることができた。

In silicoアプローチは化合物の物理化学的特性値から、透過係数Pを予測する

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ために用いられている4, 7, 45)。予測されたP値は、皮膚に適用された化合物の安 全性や有用性の評価や理解をより容易にする。したがって、代替膜とヒト・動 物皮膚の溶解度パラメータや親水・親油特性間の近似性は、様々な製剤や適用 条件(有限容量や無限容量)で良い予測を構築するのに必要となる。

Strat-M®は最近発売され、商業的に存在している、皮膚を模倣した多層人工膜

である。この膜はスルホン酸のポリエーテルから出来ている。しかしながら、

皮膚透過性を予測する代替膜としての可能性はまだ十分評価されていない。

そこで本研究では、Strat-M®を介する水溶液からの物性の異なる化合物の透過 性を調べ、透過係数P、拡散パラメータDL–2、分配パラメータKLをヒト皮膚の それと比較・評価した。

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