─ 医師,訪問看護師,ケアマネジャー,ホームヘルパーのアンケート結果より ─
Attitudes Toward Care of the Dying and Frequency of Spiritual Care in 4 Professions Involved in Home Care of Elderly Adults with Terminal Non-cancer Disease
近 藤 由 香1) 久保川 真由美2) Yuka Kondo Mayumi Kubokawa
キーワード:在宅療養,終末期非がん高齢者,ターミナルケア態度,スピリチュアルケア
Key Words: home care, elderly adults with terminal non-cancer disease, attitudes toward care of the dying, spiritual care
本研究の目的は,在宅療養中の終末期非がん高齢者にか かわる4専門職種のターミナルケア態度とスピリチュアル ケア実施頻度を明らかにすることである。これらを明らか にすることによって,終末期の非がん高齢者が,残された 人生をその人らしく過ごすことができるケアを創出するこ とに寄与できると考える。
Ⅰ.用語の操作的定義 1.終末期非がん高齢者
高齢者の終末期は,「病状が不可逆的かつ進行性で,そ の時代に可能な限りの治療によっても病状の好転や進行の 阻止が期待できなくなり,近い将来の死が不可避となった 状態」(日本老年医学会,2012)とされている。本研究で は,医師が終末期と判断し,主要疾患ががん以外である高 齢者を,終末期非がん高齢者という。
2.ターミナルケア態度
態度とは,事物に処するかまえ・考え方・行動傾向であ る(新村,1998,p.1610)。本研究では,在宅ケアにかかわ る在宅療養支援診療所医師・訪問看護師・ケアマネジャー・
ホームヘルパーの終末期ケアに関する態度であり,中井ら
(2006)が翻訳し作成したFrommelt attitudes toward care of the dying scale(FATCOD,Form B)( 以 下,FATCOD-B-J とする)をもって,ターミナルケア態度とする。
3.スピリチュアルケア
トータルペインを構成する要素であるスピリチュアリ ティは,現在では,身体的・精神的,社会的苦痛と並列的 に並ぶ概念ではなく,身体的・精神的・社会的苦痛すべて を包括し基盤となる性質のものであると考えられており
(青木,2004;比嘉,2006),終末期にある対象者を把握す るための重要な要素とされている。本研究におけるスピリ チュアリティとは,日本人高齢者のスピリチュアリティを
「自己」「他者や環境」「超越的なもの」の3層からなる重 層的構造であるとした竹田・太湯(2006)のものとする。
そして,そのスピリチュアルケアは,「自己の存在や生き る意味の探求といったスピリチュアリティを支えることに よって,対象者が拠り所を見いだし,人間らしく,その人 らしく生きることを支援すること」(竹田・太湯,2006, p.62)とする。
Ⅱ.研究方法 1.研究デザイン
実態調査研究。
2.研究期間
2012年9月〜2013年3月。
3.研究対象者と調査方法
在宅死の割合は,都市部・郡部で差異があり,多い都 県・少ない都県(厚生労働省医政局指導課在宅医療推進 室,2014)がみられる。本研究では,都市部・群部で在 宅死が多い都県・少ない都県の2都県を調査した。2都 県の在宅療養支援診療所医師(以下,医師とする),訪問 看護師(以下,訪看とする),ケアマネジャー(以下,ケ アマネとする),ホームヘルパー(以下,ヘルパーとす る)が,それぞれ勤務する在宅療養支援診療所,訪問看護 ステーション,在宅介護支援事業所,訪問介護事業所は,
全数4,744事業所(在宅療養支援診療所1,354,訪問看護ス テーション421,在宅介護支援事業所1,516,訪問介護事業
所1,453)であった。訪問看護ステーション以外は,それ
ぞれ500事業所を無作為抽出した(訪問看護ステーション は,2都県の全数が421事業所であったため全数を対象と した)。
在宅療養支援診療所500事業所,在宅介護支援事業所500 事業所,訪問介護事業所500事業所,訪問看護ステーショ ン421事業所の合計1,921事業所に質問紙を郵送した。各専 門職の対象数を揃えるため,事業所1か所につき,1名の 専門職の回答を依頼した。質問紙は自記式質問紙であっ た。研究目的と趣旨,匿名性の保持,任意性,公表予定等 を記載した文書と質問紙を事業所に郵送し,事業主より対 象者に文書と質問紙を配布してもらった。返送をもって研 究参加に同意したものとした。
4.調査内容
⑴ 基本的属性
基本的属性の質問項目は,性別,年齢,所属機関が1か 月でかかわっている事例数,在宅ケアの経験年数,これま でに経験した在宅ケアでかかわった終末期の事例数,終末 期研修の有無(終末期全般)などについてであった。
⑵ ターミナルケア態度尺度
ターミナルケア態度尺度であるFATCOD-B-Jを使用 した。この尺度は,米国のFrommelt(1991)が開発した 家族以外のケア提供者のターミナルケア態度を測定する 死にゆく患者へのターミナルケア態度尺度であり,中井 ら(2006)が,日本語版(FATCOD-B-J)を作成し,そ の内的整合性・再現性の信頼性を確認したものである。
FATCOD-B-Jは,3つの下位尺度である因子Ⅰ〈死にゆ
く患者へのケアの前向きさ〉16項目,因子Ⅱ〈患者・家族 を中心とするケアの認識〉13項目,因子Ⅲ〈死の考え方〉
1項目の全部で30項目の質問紙で構成されている。「全く
そうは思わない」から「非常にそう思う」までの5件法の リッカートスケールであり,「全くそうは思わない」から
「非常にそう思う」の5つをそれぞれ1点から5点として 計算する。得点範囲は,下位尺度の因子Ⅰ〈死にゆく患者 へのケアの前向きさ:以下,因子Ⅰとする〉が16〜80点,
因子Ⅱ〈患者・家族を中心とするケアの認識:以下,因子
Ⅱとする〉が13〜65点,因子Ⅲ〈死の考え方:以下,因子
Ⅲとする〉が1〜5点で,ターミナルケア態度総得点は 30〜150点であり,ターミナルケア態度が積極的になるほ ど得点が高くなるように配点されている。なお,通常は下 位尺度の因子Ⅲは使用しないことが望ましいとされている
(宮下,2005)ことより,今回の調査においては,下位尺 度の因子Ⅰ,因子Ⅱ,総得点を算出した。質問紙は,著作 者の承諾を文書で得てから使用した。
⑶ スピリチュアルケア実施頻度
竹田(2010)は,スピリチュアルケアの実践内容につ いて,「症状のコントロール/生理的ニーズの充足をはか る」「関心を向ける」「コミュニケーションをはかる」「寄 り添う/ともにいる」「希望を与える」「価値・信念を支え る/その人らしさを尊重し支える」「死の受容・人生の統 合に向けて支援する」「人と人の関係を保てる/環境を整 える」「自然とのふれあい・気分転換等,より生きる喜び を支援する」「ケアの道具として自分自身を使う」「相手を 大切に日々のケアを行う」の11要素を文献検討より抽出し ている。本研究では,竹田(2010)が抽出した11項目を,
スピリチュアルケア実施頻度の項目とした。竹田(2010, p.520)は,スピリチュアルの特定の苦悩に対する個別的 なケアは,看護職のかかわりのみでは不十分である場合が あり,他職種で実践することの必要性を指摘している。以 上より,本研究で作成した質問紙は,訪看と医師,ケアマ ネ,ヘルパーの専門職を対象とした。
質問は,「全く実施していない」から「すべてに実施し ていた」までの5件法で行い,得点化した。質問紙は,著 作者の承諾を文書で得てから使用した。調査の施行前,在 宅看護領域の教育を専門とする看護教員2名にプレテスト を行い,妥当性を検討した。
5.分析方法
基本的属性については単純集計を行った。基本的属性
とFATCO-B-Jとの間は,t検定または一元配置分散分析
を行った。基本的属性とスピリチュアルケア実施頻度と の 間 は,Mann-WhitneyのU検 定 ま た はKruskal-Wallis検 定を行った。t検定に関しては,等分散性を仮定できない
場合は,Welchの検定を行った。一元配置分散分析は,等
分散性を仮定でき,有意差がある場合,Bonferroniの方法 による多重比較を行った。等分散性を仮定できない場合
は,Kruskal-Wallis検定を行った。FATCOD-B-Jおよびス ピリチュアルケア実施頻度との間では,Spearmanの順位 相関係数の検定を行った。分析は統計ソフト『IBM SPSS Statistics ver. 21』を用いた。有意基準はp<.05とした。
6.倫理的配慮
研究目的と趣旨,匿名性の保持,任意性,公表予定等を 記載した文書と質問紙を事業所に郵送し,事業主より対象 者に文書と質問紙を配布してもらった。質問紙の返送を もって研究参加に同意したものとした。質問紙は無記名と し,データはコード化し,プライバシーの保護を確保し た。本研究は,茨城キリスト教大学倫理審査委員会の承認 を得て実施した(承認番号12−17)。
Ⅲ.結 果 1.対象者の概要(表1)
419事業所からの回答があり,回収率は21.8%であっ た。そのうちすべての質問項目に回答をした295名(295 事業所)を分析の対象とした。有効回答率は15.5%であっ た。対象者は,医師54名,訪看104名,ケアマネ85名,ヘ ルパー52名であった。対象の性別は,医師は男性が51名
(94.4%)であったが,訪看,ケアマネ,ヘルパーはほと んどが女性であった。年齢は職種全体では,41〜50歳が 129名(43.7%)で最も多かった。在宅ケアの経験年数は,
医師と訪看の半数以上が10年以上を経験していた。また,
在宅ケアでかかわった終末期の経験事例数は,医師と訪看 の7割以上が21事例以上であった。終末期研修の参加は,
訪看が8割以上と最も多くみられた。ケアマネとヘルパー は,医師や訪看に比べて,在宅ケアの経験年数や終末期の 経験事例数が少なかったが,終末期研修は,半数以上が参 加していた。対象者のリビングウィルを把握しているかに ついては,すべてを把握しているが,医師は14.8%,訪看 は9.6%,ケアマネは5.9%,ヘルパーは3.8%であり,職種 全体は8.5%と低い傾向であった。
2.基本的属性とターミナルケア態度(表1)
基本的属性とターミナルケア態度との関連について,表1 に示した。対象者の基本的属性とFATCOD-B-Jとの関連に おいては,対象者の性別および年齢とFATCOD-B-J得点に 有意差はみられなかった。在宅ケアの経験年数は,4職種 全体において,因子ⅠとFATCOD-B-J合計点では,10年未 満と10年以上との間に有意差がみられた(p<.05)。終末 期の経験事例数は,訪看とケアマネでは,因子Ⅰ(p<.05) において,4職種全体では,因子Ⅰ(p<.001)と因子Ⅱ
(p<.01),FATCOD-B-J合計点(p<.001)において20事