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寮 レースの住ん

ドキュメント内 早稲田大学 博士学位申請論文 (ページ 194-200)

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であり、英語圏に留学をしたいと考えている。また、2011年3月から2011年6月までは、

二人目のルームメイトであるうたこと一緒に住んだ。うたこは4年生であり、就職活動で 大変忙しい。専攻は、社会学である。

この寮がグレースの生活の基盤である。では、グレースは、この寮で、どのような経験 をしていたのであろうか。また、そこでの学びとは、どのようなものであったのだろうか。

6-2-4-3. 「ミニ社会」への参加

海外が初めてであり、一人で暮らしも初めてであるグレースは、留学当初、寂しさを感 じていた。寮では、自分で何でもしなければならないことに苦労し、毎日の生活が本当に 大変だったと、次のように語っている。

実は、これは、なんか、一人暮らし?みたいな、感じ、初めてです。いつも、家族と一緒(に)だ から。でも、私の両親は、家にあんまりいな(ん)ですから、まあ、ちょっと違う、ちょっと同じ、な 感じなんだけど、さみしい、かな。(インタビュー①より)。

これまでのフィリピンでの生活と日本での寮生活の違いを「全然」とは語らず、「ちょっ と」と表現しているのには理由がある。それは、グレースの家族関係である。グレースが

「まあ、ちょっと違う」と表現したのは、フィリピンで暮らしていた時は、お手伝いさん がしてくれていた食事や洗濯、掃除を寮では、自分でしなければならない点である。しか し、それと当時に「ちょっと同じ」と表現したのは、グレースの両親は、普段グレースと 一緒に住んでいないため、いつも一人であるということである。このようにグレースは、

留学当初、寮での一人暮らしに、少し複雑な心境を持っており、一人でいることに寂しさ を感じていた。

グレースは、これまで、ほとんど料理をしたことがなかった。最初の頃は、食べ物が異 なる日本で何を作っていいかわからず、毎日のように、インスタントラーメンか冷凍餃子 をレンジで温めて食べていた。経済的な理由から、平日の外食は極力避け、できるだけお 金を使わないようにしている。

しかし、そのようなグレースも、徐々に寮の生活に慣れ、「一人暮らし」ができるような ってきた。それには、ルームメイトであるのりかの存在が大きい。グレースは、のりかが 話しかけてくれたことにより、徐々に心を開き、寮の生活に慣れていった。グレースとの

りかが部屋に一緒にいれば、のりかが積極的にグレースに話しかけてくれるという。その ことについて、次のように語っている。

ほんとに、くだらない話も、写真も。例えば、「今日かわいいねこちゃんみたんだけど、これ見 る?」って。そういうのがあったんですよ。「何してるの?」「何たべてるの?」「一緒に食べよう よ」とか、「今からお風呂なんだけど、どう?」とか。(インタビュー②より)。

グレースとのりかは、一緒に時間を過ごすことが多く、とにかく話すことが多かった。

グレースに対して、のりかは、本当に小さなことでも、今日あったことを話してくれたと いう。そして、グレースも、それにつられるかのように、少しずつ話すようになったので ある。そんな風に気兼ねなく話しかけてくれるのりかは、グレースの寂しい心の中を埋め ていってくるような存在であったのであろう。グレースは、のりかと日々の共同生活を通 して、徐々に友人関係を深め、寮での暮らしに慣れていったのである。

グレースは、のりかとの思い出をたくさん持っている。その中でも一番の思い出は、バ レンタイン・デーでの出来事である。バレンタイン・デーに、グレースは、のりかに「今、

チョコレートが食べたいから、買いに行こう」と誘われた。グレースは、夜中でしかも雪 が降っていたので驚いたが、しぶしぶ付き合うことにした。コンビニエンス・ストアまで、

自転車で行くことにしたが、外に出たとたん、思った以上の大雪で自転車に乗ることがで きず、ひっぱって行くことになった。その時の様子について、笑いながら次のように語っ ている。

傘はもっていなかったんですよ。自転車に傘はやっぱヤバイかなって思って、雪だし(笑い)。

結局、思い出で写真撮ったんですよ。何やってんの、私たちみたいな(笑い)。で、チョコレート は、一枚の bar。それだけ買って、何やっての私たち(笑い)。風邪引いちゃうよって。それから、

一緒にお風呂入って(笑い)、ほんとくだらない(笑い)。(インタビュー②より)。

グレースは、「ほんとくだらない」といいながら、このエピソードを実に楽しそうに語っ た。このように、グレースとのりかは、「くだらない」ことまで話すことができる関係にな っており、二人が親密な友人関係を構築していることがわかる。グレースは、のりかと話 すことで「お互いに常に得るもの、学ぶものがあった」と振り返る。例えば、言語面では、

グレースは日本語を熱心に勉強しており、のりかに対しても積極的に日本語を使用してい た。一方、のりかは、留学を考えているため、英語を熱心に勉強しており、グレースに英 語の質問をよくしていた。二人は、月曜日、水曜日、金曜日は、英語で話す日であり、火 曜日と木曜日は日本語で話す日、そして土曜日と日曜日は、どちらでもいい日と決めてい た。そして、間違えばお互いに直し合うというルールを作り、実行していた。寮の中で、

日本語を使用することについて、グレースは次のように語っている。

日本人に囲まれて、毎日使って、(日本語が)すごい上達しましたよ。日本に来る前に聞くのは 大丈夫でしたけど、話せなかったんですよね。(自分が)言いたいことはわかるんですけど、言 えないんですよ。それから、いろんな扉が開いたっていうか。(インタビュー③より)。

グレースは、自分の日本語について「すごい上達」したと感じている。そして、日本語 が上達したことにより、自分の言いたいことが表現できるようになり、「いろんな扉が開い た」と語っている。これは、グレースにとって大変大きな出来事であった。グレースによ ると、その扉の一つとは、留学生をはじめ、日本人学生などいろいろな人と知り合いにな れたことであるという。また、別の扉とは、日本について日本人を通して学ぶことができ たことであるという。このことから、「いろいろな扉」が開いたおかげで、グレースは、日 本語でさまざまなことにアクセスが可能になっていったことがわかる。そこから、グレー スの世界が一気に広がっていったと言い換えることもできるであろう。そのような日本語 の扉を開けてくれた寮は、グレースにとって、どのような存在なのであろうか。次のよう に語っている。

寮は、(間)初めての友達でしたね。最初の、寮生とかルームメイト。だいたい、日本人と教室 で会えないんじゃないですか。あと、他の授業 [してても]でも、日本人の学生って話してくれな いんですよ。話しかけても、あまり、友達になっても、少ない。だから、寮での日本人の友達は 貴重。大切だと思うんですけど、ほんとに。(インタビュー③より)。

グレースにとって、寮は、「初めての友達」であった。この「初めての友達」には、実は、

二つの意味が含まれている。一つは、寮そのものが友人のように、さまざまな扉を開ける 機能を持っていたということである。寮生活において、日本語が上達したと感じたグレー

スは、それ以降、寮という「友人」を通して、他の「友人」にも出会ったということを意 味しているのである。また、もう一つの意味は、グレースの語りの後続部分から、わかる ように、寮生活を通して築いた友人関係を表している。グレースは、寮以外では、なかな か日本人の友達ができないと感じている。そのため、寮での友人というのが貴重な存在と なってくるのである。実際、グレースは、ルームメイトや同い年の寮生だけではなく、1 年生にも積極的に声をかけ、友人になっていった。寮生のあいは、インタビューの中で、

グレースのことを「日本語がすごく上手で、4月に入学したばかりの私たちでも、すごい 気さくに関わってきてくれて、まるで何年も友達でいるかのように仲良くなりました」と 語っている。また、同じ1年生であるきみこもグレースとキッチンでの会話を通して、親 しくなっていったという。グレースとあいときみこが仲良くなった最初のきっかけは、名 前の呼び方であった。あいは、インタビューの中で「最初みんな『グレースさん』って呼 んでたんですけど、『さん』とかいいからって言われて(笑い)、『グレースだから』って言 われて(笑い)、グレースだからって言った瞬間に打ち解けたっていうか、ん、感じがしま す」と語った。あいもきみこも、寮の中でグレースは、「すごく愛されキャラだった」と語 った。グレースがあいときみこと、そのような親しい関係を構築できた背景には、寮の共 同生活がある。

共同生活って全然違うんですよね。ほんとにみんなで一つのsocial room, kitchenも一緒でお風 呂も、だからそれが共同生活。アパートみたいな感じになると、日本人がいても結構 [絡む]接 するのがないと思いますね。(インタビュー③より)。

グレースは、寮における共同生活は、アパートなどに住むことと全く違うと感じている。

そして、グレースが日本人と接することができるのは、寮という環境で共有する空間があ ることが大きいと考えていることがわかる。グレースとあいときみこは、お互いの部屋は 離れているにもかかわらず、毎日のようにキッチンという同じ空間で、しかも同じ時間帯 に一緒になることが多かった。そして、お互いに「何作ってんの?」、「今日もラーメンな の?」、「授業どうだった?」などと声をかけ、自然に会話が弾んだという。この3人の友 人関係は、キッチンの会話を通して深まっていったのである。グレースとあいときみこが、

これほど親しい友人関係を構築できたのは、寮において、このようなキッチンという共有 する空間および時間があったからなのである。

ドキュメント内 早稲田大学 博士学位申請論文 (ページ 194-200)

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