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提出された資料から、本品目の再発又は難治性のMMに対する有効性は示され、認められたベネフィ ットを踏まえると安全性は許容可能と考える。本薬は、主にMM細胞表面の細胞膜上に発現するSLAMF7 と結合し、MM細胞に対して、Fc 受容体を介したNK細胞との相互作用によりADCC活性を誘導する こと等により、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられる新有効成分含有医薬品であり、再発又は難治性の MMに対する治療選択肢の一つとして、臨床的意義があると考える。また機構は、本薬の効能・効果、

用法・用量、製造販売後の検討事項等については、さらに検討が必要と考える。

専門協議での検討を踏まえて特に問題がないと判断できる場合には、本品目を承認して差し支えない と考える。

以上

審査報告(2)

平成28年8月30日

申請品目

[販 売 名] エムプリシティ点滴静注用300 mg、同点滴静注用400 mg

[一 般 名] エロツズマブ(遺伝子組換え)

[申 請 者] ブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社

[申請年月日] 平成27年12月24日

1. 審査内容

専門協議及びその後の医薬品医療機器総合機構(以下、「機構」)における審査の概略は、以下のと おりである。なお、本専門協議の専門委員は、本品目についての専門委員からの申し出等に基づき、「医 薬品医療機器総合機構における専門協議等の実施に関する達」(平成20年12月25日付け 20達第8 号)の規定により、指名した。

1.1 有効性について

機構は、審査報告(1)の「7.R.2 有効性について」の項における検討の結果、再発又は難治性の多発 性骨髄腫(以下、「MM」)患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(CA204004試験、以下「004試験」)

において、主要評価項目とされた無増悪生存期間について、対照群として設定されたレナリドミド水和 物(以下、「レナリドミド」)及びデキサメタゾン(以下、「DEX」)の併用投与(以下、「Ldレジメ ン」)群(以下、「Ld群」)と比較して、エロツズマブ(遺伝子組換え)(以下、「本薬」)、レナリ ドミド及びDEXの併用投与(以下、「ELdレジメン」)群(以下、「ELd群」)で有意な延長が検証さ れたこと等から、当該患者に対する本薬の有効性は示されたと判断した。

専門協議において、以上の機構の判断は専門委員により支持された。また、専門委員からは、以下の 意見が出された。

 本薬は、血清中 M タンパクの測定に用いられる血清タンパク電気泳動法(SPEP)及び血清免疫固 定電気泳動法(IFE)により検出され、完全奏効の判定等に影響を及ぼす可能性がある旨を医療現場 に情報提供することが望ましい。

機構が考察した内容は、以下のとおりである。

本薬が完全奏効の判定等に影響を及ぼす可能性があることについては、医療現場にとって有用な情報 と考えることから、添付文書等を用いて、医療現場に適切に情報提供する必要があると判断した。

以上より、機構は、上記について適切に対応するよう申請者に指示し、申請者はこれに従う旨を回答 した。

1.2 安全性について

機構は、審査報告(1)の「7.R.3 安全性について」の項における検討の結果、本薬投与時に特に注意

を要する有害事象は、infusion reaction、感染症、二次性悪性腫瘍、白内障及びリンパ球減少症であると判 断した。

また、機構は、本薬の使用にあたっては、造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識と経験を持つ医 師によって、有害事象の観察や管理等の適切な対応がなされるのであれば、本薬は忍容可能であると判 断した。

専門協議において、以上の機構の判断は専門委員により支持された。また、専門委員からは、以下の 意見が出された。

 004 試験におけるヘルペスウイルス感染症(帯状疱疹を含む)に対する予防投与の有無別の当該事 象の発現状況については、予防投与の必要性を判断する上で重要な情報であることから、資材等を 用いて、医療現場に情報提供することが望ましい。

機構は、予防投与の有無別のヘルペスウイルス感染症(帯状疱疹を含む)の発現状況について説明を 求め、申請者は以下のように回答した。

004試験におけるヘルペスウイルス感染症(帯状疱疹を含む)の発現状況は表 43のとおりであった。

43 ヘルペスウイルス感染症(帯状疱疹を含む)の発現状況(004試験)

MedDRA PT

(MedDRA ver.17.0)

例数

予防投与あり 予防投与なし

ELd 73

Ld 84

ELd 245

Ld 233 ヘルペスウイルス感染症 1(1.4) 0 42(17.1) 21(9.0)

帯状疱疹 1(1.4) 0 18(7.3) 9(3.9)

口腔ヘルペス 0 0 17(6.9) 13(5.6)

ヘルペスウイルス感染 0 0 7(2.9) 0

機構が考察した内容は、以下のとおりである。

004 試験において、ヘルペスウイルス感染症に対する予防投与は設定されていなかったこと、並びに 004試験の結果、ELd群においてGrade 3以上のヘルペスウイルス感染症の発現率は低かったこと(審査 報告(1)7.R.3.4参照)及びヘルペスウイルス感染症は休薬等により管理可能であったことから、現時点 において、ヘルペスウイルス感染症に対する予防投与は必須ではないと考える。ただし、予防投与の有 無別のヘルペスウイルス感染症(帯状疱疹を含む)の発現状況については、資材等により、医療現場に 情報提供する必要があると考える。

加えて、専門協議の実施後に、現在実施中である未治療のMM患者を対象とした国内第Ⅱ相試験

(CA204116試験、以下、「116試験」)において、ELdレジメンが投与された患者1例16で間質性肺疾患

(以下、「ILD」)による死亡が認められた旨が、申請者より報告されたことから、機構は、本薬投与に よるILDの最新の発現状況について説明を求め、申請者は以下のように回答した。

004試験におけるILD(MedDRA SMQの「間質性肺疾患」に該当する事象)の発現状況は表44のとおり であった。

16 7 歳男性。ELdレジメン投与開始122日後(第5サイクル)に、労作性呼吸困難のため入院した(本薬、レナリドミ ド及びDEXの最終投与日は、それぞれELdレジメン投与開始121、121及び120日後)。ステロイドパルス療法を施 行したが、ILDの増悪を認め、ELdレジメン投与中止50日後にILDにより死亡した。ILDについて、レナリドミドと の因果関係は否定されなかった一方で、本薬及びDEXとの因果関係は否定された。

44 ILDの発現状況(004試験)

MedDRA PT

(MedDRA ver.17.0)

例数(%)

ELd 318

Ld 317

Grade Grade 3以上 Grade Grade 3以上

ILD 7(2.2) 1(0.3) 7(2.2) 3(0.9)

肺臓炎 4(1.3) 0 3(0.9) 2(0.6)

ILD 1(0.3) 0 4(1.3) 1(0.3)

閉塞性細気管支炎 1(0.3) 1(0.3) 0 0

細気管支炎 1(0.3) 0 0 0

ELd群及びLd群において、死亡に至ったILDは認められなかった。ELd群及びLd群において、重篤 なILDはそれぞれ2/318例(0.6%)及び4/317例(1.3%)に認められた。事象の内訳は、ELd群で肺臓 炎及び閉塞性細気管支炎各1例、Ld群で肺臓炎及びILD各2例であり、うち、ELd群の閉塞性細気管支 炎1例、Ld群の肺臓炎2例及びILD 1例では、治験薬との因果関係は否定されなかった。ELd群及びLd 群において、治験薬の投与中止に至ったILDは、それぞれ1/318例(0.3%)及び1/317例(0.3%)、治 験薬の休薬に至ったILDはそれぞれ3/318例(0.9%)及び2/317例(0.6%)に認められ、治験薬の減量 に至ったILDは認められなかった。

また、国内第Ⅰ相試験(CA204005試験、以下、「005試験」)、004 試験、海外第Ⅰ相試験(HuLuc63-1701試験)、海外第Ⅰb/Ⅱ相試験(HuLuc63-1703試験)、海外第Ⅰb相試験(CA204007試験)、海外 第Ⅰ相試験(HuLuc63-1702試験)、海外第Ⅱ相試験(CA204009試験)、海外第Ⅱa相試験(CA204010試 験)、海外第Ⅱ相試験(CA204011試験)及び海外第Ⅱ相試験(CA204112試験)の本薬投与例における

ILDは13/729(1.8%)に認められた。死亡に至ったILDは認められなかった。重篤なILD及び治験薬の

投与中止に至ったILDは、それぞれ7/729例(1.0%)及び3/729例(0.4%)に認められた。

実施中の臨床試験17及びデータベース固定後にILDが認められた臨床試験(005試験)において、重 篤なILDは10例に認められた。死亡に至ったILDは1例16、Grade 3以上のILDは9例であり、うち、

4例は治験薬との因果関係は否定されなかった。

機構が考察した内容は、以下のとおりである。

004試験において、ELd群とLd群との間でILDの発現状況に明確な差異は認められなかったこと等から、

現時点において、本薬投与によるILDの発現について、明確に結論付けることは困難であると考える。し かしながら、116試験において、ILDにより死亡に至った日本人患者が認められていること等を考慮する

と、ILDの発現状況について、添付文書等を用いて医療現場に適切に情報提供するとともに、製造販売後

も引き続き情報収集する必要があると判断した。

以上より、機構は、上記について適切に対応するよう申請者に指示し、申請者はこれに従う旨を回答 した。

1.3 臨床的位置付け及び効能・効果について

機構は、審査報告(1)の「7.R.5 臨床的位置付け及び効能・効果について」の項における検討の結果、

17 116試験、海外第Ⅰ/Ⅱ相試験(SWOG S1211試験)、海外第Ⅲ相試験(CA204006試験)及び海外compassionate use

試験(CA204022試験)

Ld レジメンとの併用投与において、本薬は、再発又は難治性の MM に対する治療選択肢の一つとして 位置付けられることから、添付文書の臨床成績の項において、004 試験に組み入れられた患者の前治療 歴等を記載し、効能・効果に関連する使用上の注意の項で以下の旨を注意喚起した上で、本薬の効能・

効果を申請どおり「再発又は難治性の多発性骨髄腫」と設定することが適切であると判断した。

 本薬による治療は、少なくとも一つの標準的な治療が無効又は治療後に再発した患者を対象とする こと。

 臨床試験に組み入れられた患者の前治療歴等について、「臨床成績」の項の内容を熟知し、本薬の有 効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。

専門協議において、以上の機構の判断は専門委員により支持された。

以上より、機構は、上記のように効能・効果及び効能・効果に関連する使用上の注意の項を設定する よう申請者に指示し、申請者はこれに従う旨を回答した。

1.4 用法・用量について

機構は、審査報告(1)の「7.R.6 用法・用量について」の項における検討の結果、用法・用量に関連 する使用上の注意の項において以下の旨を注意喚起した上で、本薬の用法・用量を申請どおり「レナリ ドミド及びデキサメタゾンとの併用において、通常、成人にはエロツズマブ(遺伝子組換え)として 1 回10 mg/kgを点滴静注する。28日間を1サイクルとし、最初の2サイクルは1週間間隔で4回(1、8、

15、22日目)、3サイクル以降は2週間間隔で2回(1、15日目)点滴静注する。」と設定することが適

切であると判断した。

<用法・用量に関連する使用上の注意>

 本薬と併用するレナリドミド及びDEXの投与に際しては、「臨床成績」の項の内容を熟知し、投与 すること。また、併用薬剤の添付文書を熟読すること。

 本薬単独投与での有効性及び安全性は確立していない。

 レナリドミド及びDEX以外の抗悪性腫瘍剤との併用による有効性及び安全性は確立していない。

 本薬投与時にあらわれることがあるinfusion reactionを軽減させるために、本薬の投与前に、抗ヒス タミン剤(ジフェンヒドラミン等)、H2受容体拮抗剤(ラニチジン等)及び解熱鎮痛剤(アセトアミ ノフェン等)を投与すること。また、本薬と併用するDEXは、経口投与(28 mgを本薬投与の3~

24時間前に投与)と静脈内投与(8 mgを本薬投与の45分前までに投与完了)に分割して投与する こと。

 本薬は 0.5 mL/分の投与速度で点滴静注を開始し、患者の忍容性が良好な場合は、患者の状態を観

察しながら、投与速度を以下のように段階的に上げることができる。ただし、投与速度は 2 mL/分 を超えないこと。

投与時期 投与速度(mL/分)

投与開始0~30 投与開始30~60 投与開始60分以降

1サイクル 初回投与 0.5 1 2

2~4回目投与 1 2

2サイクル以降 2

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