提出された資料から、アルコール依存症患者における飲酒量の低減に対する本剤の有効性は期待でき、
認められたベネフィットを踏まえると安全性は許容可能と考える。本剤はアルコール依存症治療におけ る選択肢のひとつを提供するものであり、臨床的意義はあると考える。なお、効能・効果、用法・用量、
製造販売後の検討事項等の適切性については、専門協議においてさらに検討する必要があると考える。
専門協議での検討を踏まえて特に問題がないと判断できる場合には、本剤を承認して差し支えないと 考える。
審査報告(2)
平成
30
年10
月25
日 申請品目[販 売 名] セリンクロ錠
10 mg
[一 般 名] ナルメフェン塩酸塩水和物
[申 請 者] 大塚製薬株式会社
[申請年月日] 平成
29
年10
月17
日[略語等一覧]
別記のとおり。
1. 審査内容
専門協議及びその後の機構における審査の概略は、以下のとおりである。なお、本専門協議の専門委 員は、本品目についての専門委員からの申し出等に基づき、「医薬品医療機器総合機構における専門協 議等の実施に関する達」(平成
20
年12
月25
日付け20
達第8
号)の規定により、指名した。専門協議では、審査報告(1)に記載した機構の判断は専門委員に概ね支持された。
機構は、下記の点について追加で検討し、必要な対応を行った。
1.1 オピオイド系薬剤との併用について
機構は、本剤は
μ
及びδ
オピオイド受容体アンタゴニストであり、μ又はδ
オピオイド受容体アゴニ ストの薬理作用を減弱させるおそれがあることから、本剤とこれらのオピオイド系薬剤の併用時のリス ク及び当該リスクに関する注意喚起が必要と考える。申請者は、この点について以下のように説明している。
本剤とオピオイド系薬剤の併用時のリスクとして、①オピオイド系薬剤の薬理作用の減弱、②オピ オイド系薬剤を長期間使用後に本剤が投与されることによるオピオイドの離脱症状の発現、③緊急 の手術等でオピオイド系薬剤が過量投与されることによる呼吸抑制の発現が考えられる。
機構の医薬品副作用データベースにおける離脱症状及び呼吸抑制関連の有害事象の国内の報告状 況等を踏まえ、②又は③のリスクが高いと考えられるオピオイド系薬剤については、緊急の手術等 でやむを得ず投与する場合を除き併用禁忌とし、これらのオピオイド系薬剤を1
週間以内に投与し た患者は禁忌とすることが適切と考える。また、オピオイド依存症の患者、オピオイドの離脱の急 性症状がある患者についても、禁忌とすることが適切と考える。
②又は③のリスクが低いと考えられるオピオイド系薬剤については、添付文書の併用注意の項に記 載し、①のリスクについて注意喚起することが適切と考える。以上の対応は適切であるとする機構の考えは、専門委員に支持された。
54 1.2 本剤の適正使用について
本剤の適正使用について、本剤を以下の
3
点を満たす医療機関で使用することに問題はないとする機 構の考え(審査報告(1)7.R.6参照)は、専門委員に支持された。① 国際疾病分類等の適切な診断基準に基づくアルコール依存症の診断ができる医師がいること。
② 心理社会的治療を含むアルコール依存症治療が実施可能な体制があること。
③ 専門医療機関76)であること又は専門医療機関との連携が可能なこと。
なお、本剤はアルコール依存症の専門医療機関に加えて、現在アルコール依存症患者が通院している 精神科、消化器内科、プライマリ・ケア医等の医師が所属する、専門医療機関以外での処方も想定され ているが、アルコール依存症患者に対する心理社会的治療の経験が十分でない医師においても適切な心 理社会的治療を実施できるようにするためには、心理社会的治療に関するツールの提供のみでは十分と は言い難く、十分な診療経験のある医師による講習を実施する等、より実効性の期待できる方策を検討 すべきとの意見が専門委員から示された。
機構は、本剤を処方する医師が適切な心理社会的治療を実施できるよう、当該医師が所属する学会と も連携し、適切な方策を検討するよう申請者に指示し、申請者より、以下の対応を行うことが説明され た。
アルコール依存症を専門とする学会(日本アルコール関連問題学会及び日本アルコール・アディク ション学会)において、非専門の医療機関又は医師が本剤を処方する場合も想定し、アルコール依 存症の診断、治療体系等の情報を記載した手引きを作成する。この手引きについて、アルコール依 存症を専門とする学会に加え、本剤を処方する可能性のある精神科、消化器内科、プライマリ・ケ ア医等の医師が多く所属する関連学会に依頼し、広く学会員に周知する。
アルコール依存症治療の十分な経験がない医師が適切に診断及び心理社会的治療の実施が可能と なるよう、本剤を処方する可能性のある医師が所属する学会の学術総会等の機会を利用して、アル コール依存症を専門とする学会による講習会を開催する。アルコール依存症を専門とする学会から、本剤を処方する可能性のある精神科、消化器内科、プライマリ・ケア医等の医師が多く所属する関 連学会に依頼し、アルコール依存症治療の十分な経験のない医師が本剤を処方する場合には、講習 会を受講するよう広く周知する。
本剤の処方が想定される医師及び本剤の処方が確認された医師のうち、心理社会的治療の経験が十 分でない医師に対して、申請者からも講習会への参加を強く促すことで、本剤を処方するすべての 医師が適切な心理社会的治療を実施できるように努める。
非専門医療機関において、専門医療機関との連携が可能となるよう、アルコール依存症を専門とす る学会と協力し、非専門医療機関からの紹介患者の受入が可能な医療機関をリスト化し、情報を提 供する。機構は、以上の申請者の対応は適切と考えるものの、本対応に関連して以下の承認条件を付すこと が適切と判断した。
[承認条件]
本剤の安全性及び有効性を十分に理解し、アルコール依存症治療を適切に実施することができる医 師によってのみ本剤が処方されるよう、適切な措置を講じること。
また、申請者による本剤の適正使用推進のための方策は適切であるとする機構の考えは専門委員に 支持された。
1.3 医薬品リスク管理計画(案)について
機構は、審査報告(1)の
7.R.7
における検討及び専門協議における専門委員からの意見を踏まえ、現時点における本剤の医薬品リスク管理計画(案)について、表
46
に示す安全性検討事項及び有効性 に関する検討事項を設定すること、表47
に示す追加の医薬品安全性監視活動及びリスク最小化活動 を実施することが適切と判断した。表46 医薬品リスク管理計画(案)における安全性検討事項及び有効性に関する検討事項
安全性検討事項
重要な特定されたリスク 重要な潜在的リスク 重要な不足情報
なし ・オピオイド系薬剤との併用
・肝機能障害患者への投与
・注意力障害・浮動性めまい・傾眠
・自殺行動・自殺念慮
・錯乱・幻覚・解離等の精神症状
・敵意・攻撃性
なし
有効性に関する検討事項
・飲酒量低減達成後の予後
表47 医薬品リスク管理計画(案)における追加の医薬品安全性監視活動及び追加のリスク最小化活動の概要
追加の医薬品安全性監視活動 追加のリスク最小化活動
・市販直後調査
・特定使用成績調査
・市販直後調査による情報提供
・医療従事者向け資材(適正使用ガイド)の作成及び配布
・関連学会と連携した適正使用の推進
以上を踏まえ機構は、上記の事項を検討するための製造販売後調査を実施するよう申請者に求めた。
申請者は、アルコール依存症患者を対象として、表
48
に示す特定使用成績調査を実施することを説 明した。表48 特定使用成績調査計画の骨子(案)
目 的 アルコール依存症患者を対象として、本剤の安全性及び有効性(飲酒量低減達成後の予後)につ いて検討する
調査方法 中央登録方式 対象患者 アルコール依存症患者 観察期間 1年間
予定症例数 安全性解析対象症例として350例
主な調査項目
・患者背景(本剤の使用目的、診断日、飲酒歴、家族の飲酒問題、既往歴・合併症等)
・本剤の投与状況(処方開始日、1回投与量、1カ月当たりの投与回数、投与継続の有無等)
・併用薬、心理社会的治療(実施の有無、治療内容)
・アルコール依存症関連データ(飲酒量、飲酒日数、飲酒量低減達成状況、肝機能・腎機能・糖 代謝関連検査値等)
・有害事象の発現状況
機構は、以上について了承するが、本調査により得られた結果について、速やかに医療現場に情報提 供する必要があると考える。
2. 審査報告(1)の訂正事項
審査報告(1)の下記の点について、以下のとおり訂正するが、本訂正後も審査報告(1)の結論に 影響がないことを確認した。