提出された資料から、本品目の重度
AGHD
に対する有効性は示され、認められたベネフィットを踏ま えると安全性は許容可能と考える。本剤は、週1
回投与のhGH
製剤であり、重度AGHD
における治療 の選択肢を提供するものであり、臨床的意義があると考える。専門協議での検討を踏まえて特に問題がないと判断できる場合には、本品目を承認して差し支えない と考える。
以上
審査報告(2)
令和
2
年11
月9
日申請品目
[販 売 名] ソグルーヤ皮下注
5 mg、同皮下注 10 mg
[一 般 名] ソマプシタン(遺伝子組換え)
[申 請 者] ノボ ノルディスク ファーマ株式会社
[申請年月日] 令和
2
年2
月27
日[略語等一覧]
別記のとおり。
1.
審査内容専門協議及びその後の機構における審査の概略は、以下のとおりである。なお、本専門協議の専門委 員は、本品目についての専門委員からの申し出等に基づき、「医薬品医療機器総合機構における専門協 議等の実施に関する達」(平成
20
年12
月25
日付け20
達第8
号)の規定により、指名した。1.1 有効性、臨床的位置付けについて
機構は、以下のように考えた。hGH 製剤で未治療の
AGHD
患者を対象とした国際共同第III
相試験(4054試験)の成績から、主要評価項目であるベースラインから投与
34
週時までの躯幹部体脂肪率の 変化量について、プラセボ群に対する本剤群の優越性が示され、他の体組成に関連する主なパラメータ についても、プラセボ群と比較して本剤群で改善傾向が認められた。4054
試験の延長期間においても本 剤を継続投与することでこれらの効果は維持され、また、hGH 製剤で治療中の日本人AGHD
患者を対 象とした国内第III
相試験(4244試験)においても、ベースラインから投与52
週時までの腹部脂肪組織 パラメータの変化量は、ノルディトロピン群と同様に本剤群でも維持された。以上の結果等から、本剤 の有効性は示されていると解釈して差し支えない。臨床的位置付けについて、4054試験において、躯幹部体脂肪率、躯幹部体脂肪量等の変化量はノルデ ィトロピン群と比較して本剤群で小さく、申請者が説明しているように、投与群間での被験者背景の偏 りや、GH 曝露量の違いにより本剤とノルディトロピンで脂肪組織に対する効果が異なる可能性が考え られる。一方で、心血管系事象等のリスク因子である内臓脂肪組織等の変化量はノルディトロピン群と 同程度であり、hGH製剤で治療中の日本人患者を対象とした
4244
試験では、CT
スキャンによる腹部脂 肪組織パラメータの変化量はノルディトロピン群と同様に本剤群でも維持されたことを踏まえると、本 剤の有効性がノルディトロピンと比較して明らかに劣ると判断されるような成績は得られていない。添 付文書において、本剤とノルディトロピンで体組成の各評価部位に対する効果の異同がわかるよう、4054
試験等の臨床成績を適切に情報提供する必要があると考えるが、AGHD
患者では数年から生涯にわたっ てGH
の補充療法が必要であり、既存のhGH
製剤(連日投与製剤)ではアドヒアランス不良等が指摘さ れている状況も踏まえると、本剤はAGHD
患者に対する治療選択肢の一つになり得る。専門協議において、以上の機構の判断は、専門委員に支持された。
1.2 安全性について 1.2.1 代謝系障害について
機構は、以下のように考えた。4054試験及び
4043
試験において、投与開始前の血糖コントロールが 良好に管理されている糖尿病を有する患者に本剤が投与された結果、臨床的に問題となるような血糖コ ントロールの悪化は認められず、臨床的に問題となる有害事象は認められなかった。4054
試験及び4244
試験では、ベースライン時に糖尿病を合併していない被験者において、ノルディトロピン群の3
例で新 規の糖尿病の発症が認められ、4054
試験の本剤群の1
例でグリコヘモグロビン増加を発現し、投与中止 に至った被験者も認められたが、本剤ではノルディトロピンと比較して糖代謝への影響が大きい傾向は 認められなかった。本邦では既存のhGH
製剤において糖尿病を有する患者は禁忌とされており、糖尿病 を有する日本人患者は本剤の臨床試験に組み入れられていない。一方で、AGHD患者に対して本剤を投 与することにより、糖代謝を悪化する要因である内臓脂肪の減少、筋肉量の増加等の体組成の改善が認 められている。コンセンサスガイドライン等では、糖尿病治療と同様のモニタリングをした上での糖尿 病を有する患者に対するhGH
製剤の投与は可能とされており、海外での糖尿病を有するAGHD
患者へ のhGH
製剤の投与に関する報告において、顕著な糖代謝の悪化は認められていない。これらを踏まえる と、糖尿病を有するAGHD
患者において、投与開始前の血糖コントロールが良好に管理されており、投 与後に慎重な血糖モニタリングを実施することを前提とした上で、本剤の投与を禁忌としないことは許 容可能と考える。なお、臨床試験においては糖尿病を有する日本人患者での本剤の安全性等は検討され ていないことから、製造販売後調査において糖尿病を有する日本人患者における血糖コントロールの悪 化及び糖尿病を有さない患者での新規の糖尿病発症の状況について情報収集する必要があると考える。専門協議において、専門委員より以下の意見が出された上で、以上の機構の判断は支持された。
・
AGHD
におけるGH
補充療法は、不足しているGH
を補充することであり、GH欠乏は、骨格筋量 の低下や腹腔内脂肪・臓器脂肪の増加を介してインスリン抵抗性の増大を招き、糖代謝を悪化させ たり、脂肪肝炎・肝硬変・肝臓癌のリスクを増加させることがある。血糖コントロールの悪化は管 理可能であることも踏まえると、本剤投与開始前の血糖コントロールが良好に管理されており、投 与後も血糖モニタリングを行うことを前提とすれば、本剤の投与を禁忌としないことは妥当と考え る。・ 製造販売後調査においては、本剤投与開始前に糖尿病を合併していない患者における本剤投与後の 耐糖能悪化についても情報収集することが必要と考える。
また、米国では既存の
hGH
製剤も含めて「増殖網膜症及び重症非増殖糖尿病網膜症」が禁忌とされて いることを踏まえ、本邦における糖尿病網膜症に関する注意喚起の要否について、機構は、以下のよう に考えた。GH が細胞増殖作用を有することを踏まえると、本剤の投与により増殖性の糖尿病網膜症が 増悪する懸念はあると考える。一方で、公表文献においてGH
補充療法と糖尿病網膜症との関係につい て明確なエビデンスが示された状況とは考えられず(J Clin Endocrinol Metab 2000; 85: 634-6、CurrMed Chem 2006; 13: 3307-17
等)、コンセンサスガイドラインにおいても糖尿病網膜症を合併する患者への
GH
補充療法は禁忌とされていない。また、欧州ではhGH
製剤において糖尿病網膜症に関する禁忌は 設定されておらず、ノルディトロピンの市販後安全性情報(patient years of exposure:1,000,000
人・年超)において糖尿病網膜症に関する報告は、黄斑症の既往を有する患者の
1
例のみであった。以上を踏まえ ると、現時点ではGH
補充療法と糖尿病網膜症発現との関連性の有無について結論付けるまでに至って いない状況と考えることから、現時点では、「増殖網膜症及び重症非増殖糖尿病網膜症」を有する患者を禁忌と設定するにはエビデンスが乏しく、引き続き、市販後も糖尿病網膜症を合併する患者での網膜 症の増悪について注視していくことが適切と考えた。
専門協議において、専門委員より以下の意見が出された上で、以上の機構の判断は支持された。
・ 網膜症の発症には網膜局所での
IGF-I
の発現が重要であり、網膜でIGF-I
を過剰発現させたマウス では血液-網膜関門の破綻を来すのに対し、全身でIGF-I
を過剰発現するマウスでは網膜に変化はな いとの報告(J Biol Chem 2009; 284: 22961-9)もあるが、現時点では、GH補充が糖尿病網膜症に影 響を与えるという明確なエビデンスがなく、GH補充の目的が欠乏しているGH
の作用を正常化す る点にあることを考えると、糖尿病網膜症を禁忌にする必要性は低いと考える。・ 製造販売後調査においては、糖尿病網膜症の発症又は増悪についても情報収集することが必要と考 える。
以上を踏まえ、機構は、添付文書における注意喚起及び製販後調査における情報収集内容について申 請者に対応を求め、適切な対応がなされたことを確認した(製造販売後の検討事項については「1.6 医 薬品リスク管理計画(案)について」の項を参照)。
1.3 効能・効果について
機構は、以下のように考えた。4054試験等において、本剤の有効性が示されており、安全性は許容可 能と考えることから、本剤の効能・効果を
4054
試験等の対象患者を踏まえて既存のhGH
製剤と同様に、国内ガイドラインにおける
GH
補充療法の対象とされる重症AGHD
とすることに特段の問題はない。な お、効能・効果は既存のhGH
製剤と同じ表現となるように整備することが適切である。専門協議において、以上の機構の判断は、専門委員に支持された。
機構は、効能・効果を以下のように整備するよう申請者に求め、適切に対応がなされたことを確認し た。
[効能・効果]
成人成長ホルモン分泌不全症(重症に限る)
1.4 用法・用量について 1.4.1 開始用量について
機構は、以下のように考えた。第
III
相試験では、いずれの試験も開始用量は、60
歳以下で1.5 mg、 60
歳超で
1.0 mg、経口エストロゲン製剤を投与している女性で 2.0 mg
として検討された。hGH
製剤で未治療の患者を対象とした