• 検索結果がありません。

専門協議及びその後の医薬品医療機器総合機構(以下、「機構」)における審査の概略は、以下のと おりである。なお、本専門協議の専門委員は、本申請品目についての専門委員からの申し出等に基づき、

「医薬品医療機器総合機構における専門協議等の実施に関する達」(平成20年12月25日付 20達第 8号)の規定により、指名した。

(1)有効性について

機構は、海外臨床試験、公表論文、国内外の症例報告及び使用実態調査において、中毒性のメトヘ モグロビン(以下、「MetHb」)血症に対してメチルチオニニウム塩化物水和物(以下、「MB」)を 投与することにより、血中MetHb濃度の低下並びに MetHb血症の臨床症状の回復及び改善が認めら れたことが報告されていることから、中毒性のMetHb血症に対する今回申請されたMB製剤(以下、

「本剤」)の有効性は期待できると考えた。

ただし、本邦において、中毒性のMetHb血症に対する本剤の使用経験はないことから、製造販売後 に本剤が投与された全例を対象に、本剤の有効性情報を収集する必要があると考えた。

以上の機構の判断は、専門委員から支持された。

(2)安全性について

機構は、MBの副作用として認められている各事象について、中毒性のMetHb血症は、適切な治療 が行われない場合には死亡に至る可能性があることを考慮すると、適切な注意喚起のもとで本剤が使 用される限り、本剤の安全性については許容可能と考えた。

ただし、MetHb血症の増悪及び溶血性貧血については、海外公表論文及び海外症例報告より重篤症 例が報告されていること、また、腎不全については、海外公表論文、国内外の症例報告及び使用実態 調査において、腎不全の報告が複数認められることから、特に注意喚起が必要と考えた。

本邦において、中毒性のMetHb血症に対する本剤の使用経験はないことから、製造販売後に本剤が 投与された全例を対象に本剤の安全性情報を収集し、医療現場に適切に情報提供を行う必要があると 考えた。

以上の機構の判断は、専門委員から支持された。

(3)効能・効果について

申請時の効能・効果は「後天性メトヘモグロビン血症」とされていたが、本剤は、種々の医薬品又 は化学物質等の摂取によって発症する中毒性の MetHb 血症に用いる薬剤であることが明確になるよ う、本剤の効能・効果を「中毒性メトヘモグロビン血症」とすることが適当であると考えた。

ただし、先天性のグルコース-6-リン酸脱水素酵素(以下、「G6PD」)欠損症又はニコチンアミドア デニンジヌクレオチドリン酸(以下、「NADPH」)還元酵素欠損症の患者では本剤の投与により溶血 を起こす可能性があること、また、塩素酸塩によるMetHb血症の患者及びシアン中毒の解毒を目的と して投与された亜硝酸化合物によるMetHb血症の患者については、本剤の投与により、それぞれ次亜 塩素酸塩及びシアンによる毒性が生じる可能性があることから、添付文書において適切に注意喚起す る必要があると考えた(「(5)特別な患者集団について」の項参照)。

以上の機構の判断は、専門委員から支持された。

(4)用法・用量について

機構は、成人及び小児の用法・用量に関する申請者の説明について、海外臨床試験、公表論文、国 内外の教科書、症例報告及び使用実態調査結果に加え、欧州承認用法・用量も勘案し、概ね問題はな いと考えた。ただし、新生児及び生後3ヵ月以下の乳児においては、投与量が過剰になることによる

MetHb血症の増悪や溶血性貧血に特に注意が必要であることから、累積投与量の目安を添付文書等で

情報提供することが望ましいと考え、当該年齢層の患者における累積投与量に関する情報を精査する よう、申請者に求めた。

申請者は以下のように回答した。

海外臨床試験(5.3.5.2.1.1:試験番号PVP-20 001)における新生児1例の累積投与量は1mg/kgで あり、有害事象として高ビリルビン血症及び新生児赤血球増加症が認められた。国内外の新生児及び 生後3ヵ月以下の乳児に関する症例報告64例のうち、体重あたりの投与量の情報があった報告は 33 例であり、累積投与量は0.1mg/kgが3例、0.3mg/kgが1例、1~2mg/kg が27例、3mg/kgが1例及び

4.3mg/kg55が1例であった。これらの症例の多くは単回投与であり、追加投与が行われていたのは9例

であった。当該9例のうち、体重あたりの累積投与量が確認可能であった症例は2例であり、累積投 与量としてそれぞれ1.6mg/kg及び3mg/kgが投与された。累積投与量が1.6mg/kgの症例(21日齢)に ついては、0.8mg/kgのMBが2回投与され、血中MetHb濃度が43.9%から3.5%に低下した(日本小 児麻酔学会誌10: 113, 2004)。また、累積投与量が3mg/kgの症例(6週齢)については、2mg/kg及び 1mg/kgのMBが計2回投与され、血中MetHb濃度は54.5%から0.9%に低下した(Indian J Pediatr 74:

1037-1038, 2007)。いずれの症例報告においても、安全性に関する記載はなかった。

以上より、新生児及び生後3ヵ月以下の乳児に対して繰り返し投与をした場合の情報は限られてお り、現時点でこれらの年齢層の患者における累積投与量の目安を明確にすることは困難と考える。

機構は、現時点において得られている情報に基づき、新生児及び生後3ヵ月以下の乳児における累 積投与量の目安を添付文書に具体的に記載することは困難との申請者の回答は理解できると考える。

55 20mg(4.3mg/kg)のMBの経口投与により、血中MetHb濃度は47.1%から1%に低下したが、投与2日後に溶血性貧血の所見が

認められた

しかし、新生児及び生後3ヵ月以下の乳児では、本剤によりMetHb血症の増悪や溶血性貧血を起こし やすいことから、本剤の繰り返し投与を行う場合には、慎重な対応が必要と考える。したがって、機 構は、添付文書では、「用法・用量に関連する使用上の注意」において、新生児及び生後3ヵ月以下 の乳児では、「本剤によりメトヘモグロビン血症の増悪や溶血を起こしやすいため、繰り返し投与を 行う場合は患者の状態を観察しながら慎重に投与」するよう注意喚起する必要があると考えた。また、

「慎重投与」の項に「新生児及び生後3ヵ月以下の乳児」を記載する必要があると考えた。

以上の機構の判断は、専門委員から支持されたことから、機構は、「用法・用量」、「用法・用量 に関連する使用上の注意」を以下のように整備するよう申請者に求めたところ、適切に対応されたた め、機構はこれを了承した。

【用法・用量】

通常、生後3ヵ月を過ぎた乳幼児、小児及び成人には、メチルチオニニウム塩化物水和物として

1回1~2mg/kgを5分以上かけて静脈内投与する。投与1時間以内に症状が改善しない場合は、必

要に応じ、同量を繰り返し投与できるが、累積投与量は最大7mg/kgまでとする。

通常、新生児及び生後3ヵ月以下の乳児には、メチルチオニニウム塩化物水和物として1回0.3

~0.5mg/kg を5分以上かけて静脈内投与する。投与 1時間以内に症状が改善しない場合は、必要 に応じ、同量を繰り返し投与できる。

<用法・用量に関連する使用上の注意>

・ 本剤1アンプルに対し5%ブドウ糖注射液50mLで希釈する。

・ 生後3ヵ月を過ぎた乳幼児、小児及び成人におけるアニリン又はジアフェニルスルホンによる メトヘモグロビン血症の場合の累積投与量は最大4mg/kgまでとする。[溶血を起こしやすい。]

・ 新生児及び生後3ヵ月以下の乳児における最大累積投与量に関する情報は限られている。新生 児及び生後3ヵ月以下の乳児では、本剤によりメトヘモグロビン血症の増悪や溶血を起こしや すいため、繰り返し投与を行う場合は、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。

(5)特別な患者集団について

1)腎機能障害を有する患者について

機構は、本剤の主要な排泄経路は腎臓と考えられること、また、国内外の教科書において、腎機 能障害を有する患者へのMBの投与について注意喚起がなされていることから、腎機能障害を有す る中毒性のMetHb血症患者に対しては慎重に投与する必要があると考え、「慎重投与」の項におい て注意喚起を行うことが適切であると考えた。また、製造販売後調査において、当該患者に対して 本剤が投与された場合の安全性及び有効性について情報収集する必要があると考えた。

以上の機構の判断は、専門委員から支持された。

2)妊婦・授乳婦等への投与

機構は、毒性試験の結果から催奇形性のリスクは否定できないと考えるものの、当該内容につい て適切に情報提供がなされた上であれば、重篤かつ緊急的な処置を必要とする中毒性のMetHb血症 のような本剤による治療上のベネフィットがリスクを上回ると判断される場合においては、妊婦に

関連したドキュメント