第 2 章
2.1 家庭でのリハビリテーション支援装置のコンセプト
近年の手をターゲットにしたリハビリテーションロボティクスは,様々な形状や方 法が散見されるようになった.ゲームを取り入れたUIや筋電位によって筋収縮を促し 随意運動を疑似化して手指が運動しているかのように見せるものなどである
図19手指リハビリテーション AMADEO
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その多くはグローブなどで手全体を覆い,モータ駆動やアクチュエータによって強 制的に手の動きを能動的に動かすものがほとんどである[図19-21]
特に電気刺激によって筋収縮を促す手法は20年前にさかのぼり話題となった機能的 電気刺激法Functional Electrical Stimulation FESという方法がある.FESは中枢神経障 害によって随意運動が障害された筋に対して痛みを緩和させる目的で開発された低周 波刺激を機能的に用いた方法であり,ターゲットとする筋に対し筋収縮が得られる強 さの刺激をおこなう.
FESの利点は自分の意思では動かすことができなかった筋が他動的にでも動くこと を知らせることであり,随意収縮に結び付けるための第一段階として導入できること にある.しかしそのほとんどは強い電気刺激と筋運動が同期するのみでなかなか随意 で動かしているという一人称感覚を得られにくい.電気刺激によって自分の筋が動く ことがわかってもその方法を体得し難く,その先の随意的に動かすにはという方法に 到達しにくかった.
アクチュエータに関してはグローブで手を覆い空気を管で注入し手の集団伸展を目 的とするものが多い.この機器は30年ほど前から開発され,手の拘縮(筋が固くなり 永続的に関節運動を起こせなくなること)を予防するのみにとどまった.
図20 外骨格型アシスト(桐原ら2008)
図21 ソフトアクチュエータ 出典:早稲田大学パワーアシスト
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FESやアクチュエータの難点は患者一人では装着が困難な点も指摘しなければなら ない.FESはターゲットとする筋肉の場所に適切に電極を張り付けなければならず解 剖学的な知識を要するのと,アクチュエータに関しては麻痺した手を非麻痺側にて固 くなった麻痺側の手の筋を一本一本手袋に入れるように装着し時間がかかる.また患 者の判断で集団伸展させる時間を延長させてしまうことで過用症候群(リハビリテー ションのやりすぎで二次的障害を呈すること)を起こしかねない.
この点を解消したとしても決定的に足りない点は随意運動に結びつきにくいという 点である. 「指をあげてください」,「手の力を抜いてください」という掛け声は 一見簡便で理解可能な容易さが感じられるが,実は麻痺を抱える患者にとって非常に 不可解で達成困難なことである.これらのことを現実可能にするためにいろいろな機 器が開発されているが,徹底した患者に対する解剖学的,神経生理学的な教育が必要 であったり,あるいは説明がなされないまま他動かつ強制的に動作を求める機器が多 いのが現状である.
以上のことから本研究における機器作成のテーマは随意運動を促すシステムが容易 であり,一人称感覚を得られるよう視覚フィードバックを使用することとした[図 22-23].
図22 本研究で提案した家庭用手指リハビリテーション支援装置
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これまでの説明のように“指を上げる”という動作は簡便なようであっても方法を 確立することすら難しいことを示してきた.結果の知識knowledge of results KRを明 確に指示し,かつ動かしているという状態をフィードバックできるのであれば,手指 動作の複雑なメカニズムの教育がなくても遂行可能と考えた.人間発達的知見を参考 にするならば反復運動を行うことで動きを再獲得,再学習できる可能性がある. ブ ラックボックス化している人体についていくら教育しても,一人称感覚は実際に行っ てみないことにはわからない感覚である.またその一部始終を自分の目で確認できる 仕様にすれば運動効率はアップすると考えた.結果,機械を手の下に置く置き型に設 定したのはこのためである.機器は山本ら[20]が作成を行った.
図 23 装置に手を置いたリハビリテーション構えの図
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