第 3 章 小型水中ロボットを用いた水槽実験
3.4 AquaBox III
3.4.2 実験
(1)基本制御
実験は、直径 6[m]、水深 0.9[m]の簡易プールで行った。ゲインは、前節で決 定したものを適用した。実験は、Heading の制御、Heave の制御をおこなった。
Headingに関する実験結果をFig.3-5に示す。目標方位-1.0[rad]とし、ロボットの 回転モーメント±3.0[Nm]の制限を設定している。目標方位に到達後、わずかに 定常偏差が残っていることが分かる。これは、Heading制御に積分項を設定して いないことが要因であると考えられる。積分項を設定していない理由として、
本実験で使用しているコンパスは、ロボットのアルミニウム製の Hull 内に搭載 しており、ただしく磁場を検出できないことがあり、センサの出力値が正しく 出力されないという問題がみられた。積分項を設定した場合、正しく出力して いないデータから偏差の積分をしてしまい、ロボットを制御できなくなる可能 性があるからである。しかしながらここで見られる定常偏差は0.1[rad]程度であ り、ロボットの動作に関してそれほど支障がないと考えられる。
Heave 制御に関する実験結果を Fig.3-6 に示す。Heave の制御実験は、目標深
度 0.5[m]で行った。結果から分かるように深度データが揺らいでいることが分
かる。深度センサのような計測センサは、通常ノイズの少ない電源に接続して 使用するものである。当初は、センサ側の電源供給系統に深度センサを接続し、
使用していた。しかしながら深度センサからの値を取得することができず、最 終的にスラスタ側の電源供給系統に接続することとなった。スラスタの電源供 給系統は、スラスタの回転に伴ってノイズが多少なりとものってしまう。これ により深度センサからの値を取得することができた。原因の特定はできていな いが、深度センサのGNDはセンサ筐体部にあり、外界に面している。センサ側 の電源供給系統に接続している場合、外部にとってあるGNDにスラスタ側から のノイズ等の影響がありデータを取得することができなかったのではないかと 考えられる。これは推測であり、本質的な原因の究明は今後の課題のひとつで ある。以上のことから深度センサには多少のノイズがのっている。深度 0.5[m]
付近で揺らいでいるものの誤差は 0.1[m]以内に収まっている。したがってセン サの改善を施せば、妥当な結果が得られると考えられる。
(2)障害物回避実験
前節で行ったSurge、Heading、Heaveの制御を組み合わせて超音波距離センサ を用いて障害物回避実験を行った。水中ロボットにとってミッション中に障害 物を回避(危険回避)できることは必須の技術である。実験は、(1)で使用した 簡易プールで行った。ロボットの設定は、深度 0.7[m]、前進速度を 0.12[m/s]と した。回避条件としてプール壁面とロボットの相対距離が 0.5[m]まで接近した 場合にロボットは停止し、π/2[rad]だけ回頭を行う。その場合、右前方、左前方 の距離を比較して、より相対距離の大きいほうに回頭する。また、左右前方の 距離が等しい場合はπ[rad]だけ回頭する。実験結果を Fig.3-7~3-10 に示す。
Fig3-7は、ロボットと壁との相対距離を示す。Fig.3-10~3-12は、ロボットの各 状態と出力値を示している。ロボットが壁と0.5[m]まで近づいたときに-π/2[rad]
だけ回頭していることが分かる。このとき左右前方の距離を判断し、左側に回 頭している。また、回頭時には、ロボットは停止、ホバリングをしながら回頭 している。この結果から分かるようにロボットは、前方にある障害物を回避す ることが可能であることが分かる。
(3)経路追従航行
前節でおこなった Surge、Heading、Heave の制御を組み合わせて、長方形の経 路を想定し、これに追従して航行するミッションを考える。Surge に関しては、
一定速度で前進する。Heading に関しては、経由点まで到達したらπ/2 または
-π/2だけ回頭するという一連のシーケンスを行わせる。Heaveに関しては、ミッ ションスタート時に潜航し、ミッション中は一定の深度を維持する。そして起 点に戻ってきたら浮上する。ミッション中Swayに関しては、0[m/s]としている。
また、Surge に関する軌道制御においては加減速時の加速度の絶対値 0.05[m/s]
とした。一連の行動シーケンスをTable 3-3に示す。
このような軌道追従制御の結果をFig.3-11に示す。またそのときの速度、方位、
深度の位置、および力を Fig3-12~3-14 に示す。図中、点線で表されているのが 目標として設定した経路である。実験結果のうちHeadingのデータは直接センサ で計測されたものであるが、Surgingに関しては電磁流速計の出力データを積分 して求めたものである。経路に関しては、最大誤差が 0.2[m]程度で経路の追従 が達成されている。多少の誤差は、デッドレコニングによって生じるものであ る。従って実際の調査など、精度をそれほど要求されないミッションに関して は許容できる範囲であると考えられる。しかしながらあらかじめ設定した行動 シーケンスに従って動作していることが分かる。以上の結果からAquaBox IIIは、
直進航行と回頭を繰り返し行うことで多少の誤差は含むものの経路に従って航 行することが可能である。また、本プロジェクトで開発した AquaBox I,II,III号 機はシステムがほぼ同様であるのでここで得られた結果は他の AquaBoxシリー ズのロボットに適用可能である。
Fig.3-5 Heading data (Heading, Moment)
Fig.3-6 Depth data (Depth, Force)
Fig.3-7 Distance between robot and wall
Fig.3-8 Heading (Heading, Moment)
Fig.3-9 Surge(Velocity, Force)
Fig.3-10 Heave(Depth, Force)
Table 3-3 Sequence of Behavior in the Mission
D→H→T→H→R→H→--- →T→H→U
D:Dive H:Hover T:Transit R:Rotate U:Surfacing
Fig. 3-11 Experimental Results of Path Following(Rectangular)
Fig. 3-12 Heading(Heading, Angular Velocity, Moment)
Fig. 3-13 Surge (Velocity, Acceleration, Force)
Fig. 3-14 Heave(Depth, Rate, Force)