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実験 2 - 優勢クレオールが創発する条件

ドキュメント内 博 士 論 文 (ページ 93-97)

5.4 実験 2 - 類似性に関する条件の検証

5.4.3 実験 2 - 優勢クレオールが創発する条件

3言語での優勢クレオールが創発した例を図5.8に示す.図5.8(a)はクレオール G3 が優勢である,すなわち x3(t)> θd= 0.9 であることを示している.このとき の(5.7)式の各要素の値は (a, b, c) = (0,0.174,0.174)である.b とcが同じ値であ るため,x1x2 の人口遷移は同じ振る舞いをする.a の値が 0 であるというこ とは,G1G2 に共通の文が全く存在せず,それぞれの言語話者の間の会話は全 く成立しないことを意味する.図中,初期状態で G3 の話者が誰もいなかったが,

時間が経つにつれ G1,G2 話者が移行することによって G3 話者の人口が増加し,

最終的にθd 以上の比率を占めるようになり収束した様子を示している.このよう に 3言語の場合でも実験1-1と同様,優勢クレオールが創発することがわかる.

bcの値を増加させたときの結果を図5.8(b)に示す.S 行列の各要素の値は (a, b, c) = (0,0.176,0.182)である.このときクレオール G3 はその話者人口を減少 させ,優勢言語は既存の言語 G2 に変わったことを表している.また,図 5.8(c) はクレオール G3 が最も人口が多いが,収束点においてその人口比率が優勢クレ オールであるとみなす閾値 θd よりもわずかに低い,すなわちx3(t)< θd= 0.9 で あることを表している.このときのS 行列の値は (a, b, c) = (0,0.188,0.189) であ る.これは優勢言語が存在しない例である.

(5.7)式におけるS 行列の各要素をパラメータとし,優勢クレオールが創発した

値を a, b, c 空間上に表したものが図5.9(a) である.図を見る限り平面に近く,ク

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 20 40 60 80 100

Rate of the Population

Generation t

θd

x2

x3

x1

(a) (a, b, c) = (0,0.174,0.174), Domi-nant, Creolized

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 20 40 60 80 100

Rate of the Population

Generation t

θd

x1

x2

x3

(b) (a, b, c) = (0,0.176,0.182), Domi-nant, Not-Creolized

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 20 40 60 80 100

Rate of the Population

Generation t

θd

x1

x2

x3

(c) (a, b, c) = (0,0.188,0.189), Not-Dominant, Creolized

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

Rate of the Population

Generation t

θd

x2

x3

x1

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500

(d) (a, b, c) = (0.11,0.174,0.174), Dom-inant, Creolized

図 5.8: 3言語での優勢クレオールの創発

レオールが創発する範囲は非常に限られていることがわかる.ここから得られる S 行列のおおよその条件は次のように表される:

a0.12 (5.8)

0.35a+ 0.136bc0.2 (5.9)

図中の破線で囲まれた部分を,b-c空間上に拡大したものを図 5.9(b)に示す.

図5.8(a)と図 5.8(b)において,それぞれの言語が優勢言語となるような S 行列

の値が存在することを示した.それぞれの要素の値が図5.9(b)中の×で示された 点 (a)から点 (d)に対応している.

ここで,点(b) から点 (a)に向けて値を変えていくと,優勢言語がG2 からG3

0.12 0.14 b 0.16 0.18 0.20.12 0.14

0.16 0.18

0.2

c

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12

a

(a) a, b, c-space of theS matrix

0.17 0.18 0.19

0.17 0.18 0.19

c

b (a)

(b)

(c)

(d) a=0.00 a=0.01 a=0.02

a=0.04 θd< 0.9

a=0.03

(b) Details

図 5.9: 優勢クレオールとなるための条件 (θd= 0.9)

に突然入れ替わる境目に遭遇する.その境界を示したのが図 5.9(b)の実線である.

実線で囲まれた領域の中の値が S 行列の値として与えられると,優勢クレオール が創発する.最も外側にある実線が(5.7) 式における a = 0 のときの境界であり,

以降, a の値が大きくなるごとにクレオールが創発する条件が限られて行くこと がわかる.a= 0であるということは,既存の 2言語の話者間で全くコミュニケー ションがとれない状況を表しており,このときが最も新言語が創発しやすく,共通 言語となりやすい.また, a の値が大きくなるにつれ,既存の 2言語間でコミュ ニケーションがとれるようになり,それぞれの言語間で人口の遷移が行われやす くなる.その結果, G3 への遷移が妨げられるため, a が大きくなるとクレオー ルが創発しにくくなるのである.図 5.8(d)は図 5.8(a)の初期値から a = 0.11 に 変更したときのモデルの振る舞いを表しており,図 5.8(a)と比較して収束までの 時間が遅くなっているのがわかる.

図 5.9(b)中,点 (a) から点 (c) に向けて値を変化させたとき, x3(t) は連続的 に人口を減らし,図中の実線部分の短辺を境にしてG3 は優勢クレオールではな くなる.S 行列の要素 b,cの値が大きくなると,G3 の人口比率が高くなった場 合においても, G1G2 への人口の流出が増大するため,それぞれの言語と共存 し,クレオールが優勢言語にならないことが原因である.したがって,実線の長 辺部分と短辺部分の境界で発生する変化の特徴は大きく異なる.図中の破線で示 した境界は,G1 または G2 が優勢言語である領域から,優勢クレオールではない が G3 が最も人口比率の高い言語である領域に突然変化した境目を示している.

bcの値が大きいと, G1G2 からそれぞれ G3 へ多くの人口が遷移する.

また逆に G3 の人口が増加すると G1G2 へ遷移するため,共存するようにな る.しかし逆に bc の値が小さいと,人口比が安定するまでの世代数が増加す る.bcの値が小さいときの優勢クレオールが創発するケースを考えると,G3 の人口比率が G1,G2 のそれを追い抜くまでに多くの時間を要し,さらに a = 0 のときにおいて b c 0.136 を境に優勢クレオールが観察できなかった.さら に a の値に比例して収束世代が遅くなり,クレオールが創発しなくなっていく様 子が図 5.8(d)と図 5.9(a)をみるとわかる.

ドキュメント内 博 士 論 文 (ページ 93-97)