3. 結果と考察
3.1.2 実験結果
3.1.2.1 Si1-xGex(x=0.1, 0.2, 0.3)融液からの凝固組織
図3-1に、Si1-xGex(x=0.1, 0.2, 0.3)融液から急冷凝固(約300K/min)した試料 と徐冷凝固(1K/min)した試料を、SEM-EBSP装置を用いて方位解析した結果を 示す。色の違いは結晶方位の違いを表している。本結果からわかるように、冷却 速度が約 300 倍異なるにもかかわらず、いずれの組成においても急冷と徐冷で 結晶粒径に大きな差は観察されない(粒径 1~5mm)。通常、金属合金では冷却 速度を増加させると、凝固時の過冷却度が増加し核形成頻度が増加するため結 晶粒径が微細になることが知られている[44-47]。また、金属合金の凝固組織では 微細なデンドライト状組織が形成されるが、Si1-xGex 融液からの凝固組織ではそ のような組織が観察されない。したがって、Si1-xGex 融液からの凝固過程は金属 合金の凝固過程とは異なることが示唆される。
図3-1 Si1-xGex融液(x=0.1, 0.2, 0.3)から急冷凝固させた試料と徐冷凝固させた試料の結 晶方位解析結果。
Si0.9Ge0.1
急冷(300K/min) 1K/min
Si0.8Ge0.2
急冷 1K/min
Si0.7Ge0.3
急冷 1K/min
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3.1.2.2 Si1-xGex(x=0.1, 0.2, 0.3)融液からの凝固過程の直接観察
図3-1に示したように、Si1-xGe(x=0.1, 0.2, 0.3)x 融液から急冷凝固(約300K/min)
させた試料と徐冷凝固(1K/min)させた試料では、冷却速度が約300倍異なるに もかかわらず結晶粒径に大きな差が見られなかった。そこで、凝固過程にどのよ うな現象が起こっているかを明らかにするために、その場観察実験を行った。
図3-2は、Si0.8Ge0.2融液を、ヒータのパワーをオフにして急冷凝固させた際の 凝固過程の観察結果である。図中の時間は凝固が始まる直前の状態を0 secとし て表示しており、0 secでは融液状態にある。0.5 secにおいて、微細な針状(デ ンドライト状)の結晶が多数形成され、6.5 sec までは結晶の密度が徐々に増加 していることが分かる。しかしながら、それ以降は、これらの結晶が融解してい き(図中の赤丸で囲んだ部分が分かりやすい)、11.5 secでは完全に融解した。な お、本実験では、ヒータのパワーをオフにしているため炉内温度は連続的に冷却 されている。このように、冷却過程にもかかわらず凝固初期に形成された微細な 結晶が再融解する現象は、本実験により初めて直接観察された。
図3-3は、Si0.7Ge0.3融液を、同様にヒータのパワーをオフにして急冷凝固させ た際の凝固過程の観察結果である。本試料においても、凝固開始後1.5 secまで は微細なデンドライト状結晶の密度が増加しているが、それ以降、徐々に結晶が 融解していく様子が観察された。
図 3-2 および図 3-3 で観察された急冷凝固過程における再融解現象は、
Si0.9Ge0.1融液からの急冷凝固過程でも観察された。さらに、Ge リッチ側組成の 融液においても同様の実験を行った。図3-4はSi0.3Ge0.7融液を、急冷凝固させた 際の凝固過程の観察結果である。凝固初期に形成される針状のデンドライトは Si リッチ組成に比べるとサイズが大きいことが分かる。これらの結晶は、Si リ ッチ組成と同様に冷却過程に再融解した。
このように、Si1-xGex融液から急冷凝固すると、融液組成に依らず、凝固初期 に発生した微細なデンドライト状結晶が冷却過程に再融解することが分かった。
29
図3-2 Si0.8Ge0.2融液の急冷凝固過程の観察結果。
0 sec 0.5 sec 1.0 sec 1.5 sec
2.0 sec 2.5 sec 3.0 sec 3.5 sec
4.0 sec 4.5 sec 5.0 sec 5.5 sec
6.0 sec 6.5 sec 7.0 sec 7.5 sec
8.0 sec 8.5 sec 9.0 sec 9.5 sec
10.0 sec 10.5 sec 11.0 sec 11.5 sec
30
図3-3 Si0.7Ge0.3融液の急冷凝固過程の観察結果。
0 sec 0.1 sec 0.2 sec 0.3 sec
0.4 sec 0.5 sec 0.6 sec 0.7 sec
0.8 sec 0.9 sec 1.0 sec 1.1 sec
1.2 sec 1.3 sec 1.4 sec 1.5 sec
2 sec 2.5 sec 3 sec 3.5 sec
4.0 sec 5.0 sec 6.0sec 7.0 sec
8.0 sec 9.0 sec
31
比較のために、純 Siおよび純 Ge においても同様の実験を行った。図 3-5 は 純Si を完全に融解させた融液から、ヒータの電源をオフにして急冷凝固させた 試料の凝固過程の観察結果である。Si1-xGex融液からの急冷凝固とは異なり、数 個のデンドライト結晶が時間とともに大きく成長していく様子が観察された。
また、これらのデンドライト結晶は、凝固過程に融解することはなく凝固が進行 し、融液が完全に凝固した。図3-6は純Geの急冷凝固過程の様子である。純Si の場合と同様に、凝固初期に発現したいくつかのデンドライト結晶が成長し、再 融解することなく完全に凝固した。このように、純 Si や純 Ge においては冷却 条件が全く同じであっても凝固過程に結晶が再融解する現象は観察されなかっ た。したがって、再融解現象はSi1-xGex融液からの凝固過程特有の現象であるこ とが示された。
図3-4 Si0.3Ge0.7融液の急冷凝固過程の観察結果。
0sec 2sec 19sec
22sec 25sec
12sec
29sec 31sec
38sec 41sec
35sec 44sec
500µm
32
図3-5 純Si融液の急冷凝固過程の観察結果。
0 sec 1 sec 2 sec 3 sec
4 sec 5 sec 6 sec 7 sec
8 sec 9 sec 10 sec 11 sec
12 sec 13 sec 14 sec 15 sec
16 sec 17 sec 18 sec 19 sec
20 sec 21 sec 22 sec 23 sec
33
さらに、図3-2~3-4で観察された再融解現象が冷却速度によるものかどうかを 確認するために、Si0.7Ge0.3融液を徐冷(1℃/min)し凝固過程を観察した(図 3-7)。図 3-3 に示した同組成融液からの急冷凝固過程と比較すると明らかなよう に、図3-7に示した徐冷凝固試料では、数個のデンドライト結晶が発生し、これ らが再融解することなく大きく成長していく様子が観察された。このように、凝 固過程の再融解現象は、Si1-xGex 融液からの急冷凝固過程にのみ発現することが 明らかとなった。
なお、本実験では、試料の横(るつぼの側壁から2mmの場所)に設置した熱 電対で、炉内温度を測定しながら実験を行った。炉内温度変化と試料の状態をま とめたグラフを図3-8~3-10に示す。
図3-6 純Ge融液の急冷凝固過程の観察結果。
50 sec 100 sec
1 sec
図3-7 Si0.7Ge0.3融液の徐冷凝固過程の観察結果。
0 s 20 s 40 s 80 s
1mm
Dendrite Dendrite
34
図3-9 Si0.8Ge0.2融液の急冷凝固過程の炉内温度と試料の状態。
1000 1100 1200 1300 1400 1500 1600
0 20 40 60 80
Time (sec)
Temperature (ºC)
Growth started at 1369.2oC
Re-melting started at 1334.9oC
図3-8 Si0.9Ge0.1融液の急冷凝固過程の炉内温度と試料の状態。
1000 1100 1200 1300 1400 1500 1600
0 10 20 30 40 50 60 70 80
Time (sec)
Temperature (ºC)
500 mm
Dendrite growth
Re-melted
Recrystallization
35
図3-10 Si0.7Ge0.3融液の急冷凝固過程の炉内温度と試料の状態。
1000 1100 1200 1300 1400 1500 1600
0 20 40 60 80
Time (sec)
Temperature (ºC)
Growth started at 1355.6oC
Re-melting started at 1336.1oC
図3-11 純Si融液の急冷凝固過程の炉内温度と試料の状態。
1000 1100 1200 1300 1400 1500 1600 1700
0 10 20 30 40 50 60 70 80
Time (sec)
Temperature (ºC)
500 mm
Dendrite growth
36