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4-1 実験方法 4-1-1 基板

基板は以下を用いた。

・n-Si(100)基板

・7059ガラス基板

・サファイア基板

・石英基板

4-1-2 基板の洗浄

薄膜を作製する際に基板上に汚れが存在すると、膜質の低下、ピンホールや剥離などの 原因になる。これらの弊害を避けるため、本研究では、超音波洗浄機を使用して脱脂洗浄 を行った。超音波振動を液体に加えると、液体が非圧縮性であるために、液体中の固体面 を振動で衝突し、洗浄液による洗浄効果を高めることが出来る。

4-1-3 ターゲットの前処理

ターゲットを作製するために ZnO(99.9 wt%)粉末と GaN(0.1 wt%)粉末(この他に GaN(99 mol%)とEu(0.1 mol%))を混ぜて作製した。

粉末をホルダーに敷き詰める前に、窒素雰囲気で90 min、600 ℃加熱処理を行った。この 理由は、加熱前の粉末をターゲットに入れてスパッタを行うと、たった数回で粉末が剥が れてしまい、穴があいてしまう。これを避けるために、加熱処理を行った。加熱処理を行 うと、粉末の周りの不純物が尐なくなり、ターゲットの熱膨張による歪を避けることがで きるからだと考えている。

4-1-4 実験手順

1. ガラス基板、Si(100)基板、サファイア基板をトリクロロエチレン、アセトン、メタノ ールの順に各10分間超音波脱脂洗浄を行い、洗浄した基板をホットプレートで加熱し 乾燥させる。

2. 乾燥させた基板をスパッタ装置真空層内の基板ホルダーに配置する。

3. 排気系を立ち上げ、真空層内をロータリーポンプで荒引きした後、ターボ分子ポンプ で排気する。

4. 真空層内を3.0×10-4Paまで排気する(基板加熱を行う場合は×10-2Paになってから加熱 を開始し同様の真空度になるまで排気する)。

5. スパッタガスを導入し、ゲートバルブを操作して任意のスパッタリング圧力に調整す る。

6. プレスパッタを行った後、シャッターを開けて任意の時間スパッタを行う。

7. ゲートバルブを閉め、真空層から試料を取り出す。

第 5 章 N-Ga ドープ ZnO 薄膜の評価及び考察

5-1 作製条件

Table 5.1にRFマグネトロンスパッタリング法を用いて作製したN-GaドープZnO薄膜の

作製条件を示す。

ターゲット ZnO粉末(99.9 wt%)+GaN粉末(0.1 wt%) スパッタリング雰囲気 (Pa) 0.1 (N2、N2 and O2)

スパッタリング圧力 (Pa) 0.3~1.5 スパッタリング電力 (W) 100 プレスパッタリング時間 (min) 30

スパッタリング時間 (min) 30 or 90

基板加熱温度 (℃) 室温 (およそ100 ℃) ~300 ℃ 使用基板 n-Si (100)、7059 ガラス、石英

Table 4.1基板加熱温度の項目で、室温がおよそ100 ℃になるのは、スパッタリング法に

よりターゲットの電子が基板に衝突し、その衝突のエネルギーが熱になって放出されるた め、室温でも基板加熱温度が上がる。

5-2 ZnO の評価

本研究のスパッタリング法で作製し た薄膜を評価する基準とするために、論 文などで報告されている六方晶ウルツ 鉱型ZnOのXRD測定のPDF(Portable Document Format)をFig .5-2に示す。

主に論文などで報告されている XRD 測定結果だと、ZnO (002)、ZnO (004) 面の配向が強いものが比較的に多い。

20 30 40 50 60 70 80

ZnO(100) ZnO(002) ZnO(101) ZnO(102) ZnO(110) ZnO(103) ZnO(200

) Zn

O(112) ZnO(201) ZnO(004) ZnO(202)

2θ (deg)

Intensity(arb. units)

Table 5.1 N-Ga ドープ ZnO 薄膜作製条件

Fig .5.2 XRD測定ZnOのPDF

5-3 室温 N

2

雰囲気 N-Ga ドープ ZnO 薄膜の作製

まず基板加熱なしスパッタガスN2だけ の状態で、スパッタ時間 30 min、N-Ga ドープZnO薄膜を作製した。

Fig. 5-3 にスパッタ圧変化に伴う膜厚

の変化を示す。

Fig. 5-3 よりスパッタ圧の低い方が膜

厚のrateがよくとれることが確認できる。

スパッタ圧の低い方が真空槽内のガスが 尐ないので、電子が基板に到達するまで に邪魔になるガス分子が尐ないからだと 考えている。

5-3-1 XRD 測定結果

Fig. 5-3-1にn-Si (100)基板上に作 製した、スパッタ時間30 min、スパ ッタ雰囲気 N2の N-Ga ドープ ZnO 薄膜のXRD測定結果を示す。スパッ タ圧を0.3~1.5 Paで変化させ薄膜を 作製した。

スパッタ圧 0.3 Pa の試料では、

ZnO(110)面 の 回 折 ピ ー ク が 標 準 の PDF データに比べ左にシフトしてい るので、y軸方向に延びるひずみがあ る結晶だと考える。

0.5 Pa の試料は、アモルファスラ

イクな結晶だと考える。

0.75 Paの試料では、ZnO (100)、

(002)、(101)、(110)、(103)面の回折 ピークが確認できる。試料の膜質はラ ンダム方位の多結晶だと考える。

1.0~1.5 Paの試料では、0.75 Pa試

料より ZnO (002)面に配向している

のがわかり、ZnO (004)面も確認する

0 1000 2000

0 1000 2000

0 1000 2000

ZnO(002)

0 10000 20000

ZnO(101) ZnO(110)

0 10000 20000

20 30 40 50 60 70 80

0 10000 20000

0.5Pa 0.3Pa

0.75Pa

1.0Pa

1.25Pa

1.5Pa

ZnO(100) ZnO(103)

Intensity (cps)

2θ (deg.)

ZnO(004)

0 1 2

2000 3000 4000 5000

Pressure (Pa)

Film thickness (Å)

5200Å

4400Å 4000Å

2800Å 2500Å

2000Å

Fig. 5.3 膜厚 (スパッタ圧変化)

Fig. 5.3.1 XRD 測定結果(スパッタ圧変化)

半値幅 0.8°

半値幅 0.5°

半値幅 0.4°

半値幅 0.4°

ことができる。

スパッタ圧が高くなると回折ピークの強度も高くなり、半値幅も狭くなっていることから 結晶性が向上しているのが確認できる。

これより、ZnO薄膜の作製が確認でき、c軸配向性が観測できる。

これからも出てくるが、XRD測定結果の33 °、70 °付近の回折ピークは基板のSiに よるものである。

5-3-2 透過測定結果

Fig. 5-3-2 にスパッタ圧を変化さ せて作製した試料の透過測定結果を 示す。

スパッタ圧1.0~1.5 Paの試料では、

可視領域 (400~800 nm)の透過率が 80 %以上あることから、薄膜は透明 であることがわかる。目視でも確認 できる。

スパッタ圧0.3~0.75 Paの試料で は、可視領域の透過率が低いことか ら、薄膜は不透明であることがわか る。目視では黒、茶色のような色を 確認できた。

Fig. 5-3-3にスパッタ圧を変化させ

て作製した試料の光吸収計算結果を 示す。

スパッタ圧を高くすると、バンドギ ャップエネルギーが高エネルギー側 にブルーシフトしているのが確認で きる。ZnOのバンドギャップが3.37 eV 付近なので、スパッタ圧を高くす るとZnOが成膜されやすくなると観 測できる。

1000 2000

0 50 100

スパッタ圧 0.3 Pa 0.5 Pa 0.75 Pa 1.0 Pa 1.25 Pa 1.5 Pa

Wavelength (nm)

Transmittance (%)

2 3

0 1 [10

10

] 2

スパッタ圧 0.3 Pa 0.5 Pa 0.75 Pa 1.0 Pa 1.25 Pa 1.5 Pa

Photon energy (eV) (Eα)2 (eV2 cm-2 )

2.03 eV2.21 eV2.45 eV 3.16 eV3.27 eV

Fig. 5.3.2 透過測定結果(スパッタ圧変化)

Fig. 5.3.3 光吸収計算結果(スパッタ圧変化)

5-3-3 PL 測定結果

スパッタ圧を変化させて作製したどの試料からも、PLでの発光を確認することができな かった。バンド端も不純物準位による発光も確認できなかった。バンド端発光が確認でき ないのはわからないが、不純物準位による発光が確認できなかったのは、成膜するときに 不純物(おそらく窒素)が混入しなかったためだと考えている。

5-3-4 Hall 効果測定

Table 5.3にスパッタ圧を変化させて作製した試料のHall効果測定結果を示す。

スパッタ圧 (Pa) 0.3 0.5 0.75 1.0 1.25 1.5 比抵抗 ( ) 0.44 5.62

移動度 (cm2V-1s-1) 16.01 77.2 73.6 キャリア濃度 (cm-3) Hall係数によるpn判定 p p p

Si 基板に作製した試料では、基板が影響を及ぼし、測定値が不安定であったため、ガラ ス基板に作製した試料において測定を行った。

スパッタ圧1.0~1.5 Paの試料では、試料の抵抗が大きすぎてしまい導通がとれなかった。

そのため、Hall効果測定を行えず、測定できなかった。

比抵抗と移動度はスパッタ圧を下げると、低下していることが確認できる。キャリア濃度 はスパッタ圧を下げると、増加していることが確認できる。

スパッタ圧を下げて作製した試料のほうが、電気的特性のよい試料が作製できると考えて いる。

5-3-5 熱起電力測定

Table 5.3.2にスパッタ圧を変化させて作製した試料の熱起電力測定結果を示す。

スパッタ圧(Pa) 0.3 0.5 0.75 1.0 1.25 1.5 ガラス基板(pn判別) n n n

Table 5.3.2よりp型特性を持つ試料作製はできなかった。ホール効果と熱起電力で伝導

型が異なる理由として、薄膜に電流を流すと、熱ドリフトにより抵抗率が変わってしまい、

うまく測定できなかったのが原因だと考えている。

Table 5.3.1 Hall 効果測定結果(スパッタ圧変化)

Table 5.3.2 熱起電力測定結果(スパッタ圧変化)

5-4 基板加熱 N

2

雰囲気 N-Ga ドープ ZnO 薄膜の作製

次は基板加熱あり、スパッタ時間30 min、スパッタガスN2だけの状態で、N-Gaドープ ZnO薄膜を作製した。

5-4-1 XRD 測定結果

Fig. 5.4.1に200 ℃、300 ℃のと き

のスパッタ圧変化による、膜厚の変 化を示す。

Fig. 5.4.1より基板加熱を加えると 基板の膜厚は薄くなることが確認 できる。これは、スパッタ中の電子 が基板に到達するまでに、基板加熱 の熱によって、蒸発することが理由 と考えている。

0 1000 2000 3000 4000 5000

0 1000 2000 3000 4000 5000

200℃基板加熱 0.3Pa

0.75Pa

1.0Pa

20 30 40 50 60 70 80

0 1000 2000 3000 4000 5000

Intensity (cps)

2θ (deg.)

ZnO(002)

0 1000 2000 3000 4000 5000

ZnO(101)

0 5000 10000 15000

20 30 40 50 60 70 80

0 5000 10000 15000

300℃基板加熱 0.3Pa

0.75Pa

1.0Pa

Intensity (cps)

2θ (deg.)

ZnO(002)

0 0.5 1

0 1000 2000

3000

3200Å 200℃基板加熱 300℃基板加熱

2100Å

1500Å 2300Å

1300Å

800Å

Pressure (Pa)

Film thickness (Å)

Fig. 5.4.2 XRD 測定結果(200 ℃基板加熱) Fig. 5.4.3 XRD 測定結果(300 ℃基板加熱) Fig. 5.4.1 膜厚 (スパッタ圧変化)

半値幅 1.5°

半値幅 1.3°

半値幅 1.2°

半値幅 1.4°

半値幅 1.3°

半値幅 1.1°

Fig.5.4.2 に基板加熱 200 ℃で、スパッタ圧を変化(0.3~1.0 Pa)させて作製した試料の XRD測定結果を示す。Fig. 5.4.3に基板加熱300 ℃で、スパッタ圧を変化(0.3~1.0 Pa)させ て作製した試料のXRD測定結果を示す。

低スパッタ域(0.3~0.75 Pa)では、基板加熱なしの試料よりもZnO(002)面への配向が強く なっている。基板加熱200 ℃の試料では1.0 PaのときがZnO(002)面の回折ピークは一番

強く0.75 Paのときが一番弱くなった。スパッタ圧変化によるZnO(002)面の規則性は確認

できなかった。

基板加熱300 ℃の試料では1.0 PaのときがZnO(002)面の回折ピークは一番強く、0.3 Pa のときが一番弱かった。スパッタ圧変化によるZnO(002)面の規則性は確認できた。

高スパッタ域(1.0 Pa)では、基板加熱なしの試料よりも ZnO(002)面の回折ピークの半値 幅が広がっていることから、結晶性の向上はみられない。

5-4-2 透過測定結果

1000 2000

0 20 40 60 80 100

基板加熱300 ℃ スパッタ圧

0.3 Pa 0.75 Pa 1.0 Pa

Wavelength (nm)

Transmittance (%)

2 3 4

0 1 2 3 4 [10

10

] 5

3.2 eV

基板加熱300 ℃ スパッタ圧

0.3 Pa 0.75 Pa 1.0 Pa (Eα)2 (eV2 cm-2 )

Photon energy (eV)

1000 2000

0 20 40 60 80 100

基板加熱200 ℃ スパッタ圧

0.3 Pa 0.75 Pa 1.0 Pa

Wavelength (nm)

Transmittance (%)

2 3 4

0 2 4 6 [10

10

] 8

3.21 eV

基板加熱200 ℃ スパッタ圧

0.3 Pa 0.75 Pa 1.0 Pa (Eα)2 (eV2 cm-2 )

Photon energy (eV)

Fig. 5.4.3 透過測定結果(基板加熱 200 ℃) Fig. 5.4.4 光吸収計算結果(基板加熱 200 ℃)

Fig. 5.4.5 透過測定結果(基板加熱 300 ℃) Fig. 5.4.6 光吸収計算結果(基板加熱 300 ℃)

Fig. 5.4.3に基板加熱200 ℃で、スパッタ圧を変化(0.3~1.0 Pa)させて作製した試料の透 過測定結果を示す。Fig. 5.4.4に基板加熱200℃で、スパッタ圧を変化(0.3~1.0 Pa)させて 作製した試料の光吸収計算結果を示す。Fig. 5.4.5に基板加熱300 ℃で、スパッタ圧を変化 (0.3~1.0 Pa)させて作製した試料の透過測定結果を示す。Fig. 5.4.6に基板加熱300 ℃で、

スパッタ圧を変化(0.3~1.0 Pa)させて作製した試料の光吸収計算結果を示す。

Fig. 5.4.3、Fig. 5.4.5より、ほとんどの試料(基板加熱300 ℃、スパッタ圧0.3 Pa以外) で可視領域(400~800 nm) の透過率が80 %以上あることから、透明な薄膜であることがか くにんできる。Fig. 5.4.4、Fig. 5.4.6より基板加熱を加えると、スパッタ圧によるバンドギ ャップエネルギーのシフトが起こらず、3.2 eV付近で落ち着くことが確認できる。

5-4-3 PL 測定結果

基板加熱を加えて作製したどの試料からも、PLでの発光が観測できなかった。

その理由については、今後検討したいと思う。

5-4-4 Hall 効果測定結果、熱起電力測定結果

基板加熱を加えて作製したどの試料からも、抵抗値が大きすぎて導通がとれず、Hall 効 果測定、熱起電力測定は行えなかった。

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