5.1 生成実験 生成実験 生成実験 生成実験
5.1.1 実験Ⅰ(最適条件での生成) 実験Ⅰ(最適条件での生成) 実験Ⅰ(最適条件での生成) 実験Ⅰ(最適条件での生成)
レーザーオーブン法で,煤の付着する部分は Mo ロッド上,前方及び後方のガラス管内表面そ して炭素が蒸発し噴出す部分のガラス表面の四箇所である.Moロッドに付着する煤は膜状になっ ており,ピンセットではがそうとすると,薄いゴム膜のように伸び,又ねばりけがある.一方,
他の三箇所での煤は粉っぽく膜状ではない.
図5-1,図5-2にレーザーオーブン法により生成した単層カーボンナノチューブのSEM写真及
びTEM写真を示す.
SEM写真(図5-1)において,糸くずのように見えるものが単層カーボンナノチューブであり,そ
の周りにぼんやりと雲のように見えるのがアモルファスカーボンである.アモルファスカーボン とは炭素原子が配向性なくランダムに結合をした物質である.このSEM写真の試料はMoロッ ド上の煤であるが,他の場所(ガラス表面)に付着した粉状の煤もSEMで観察すると同様に単 層カーボンナノチューブがアモルファスカーボンと共に存在しているのがわかる.
600nm
図5-1 単層カーボンナノチューブ(SEM写真)
この写真から判断して単層カーボンナノチューブの直径は20[nm]から50[nm]程度のように見え る.SEM写真は三次元的な像が得ることが出来るので試料の表面の様子が良く分かる.それに対 しTEM写真は表面ではなく,試料の内部構造を見ることが出来る.(図5-2)単層カーボンナノチ ューブはTEM写真では,単層カーボンナノチューブの側面が濃い二本の線になって写る.(図5-3)
これは,TEMが透過電子を利用して像を得ていることから,単層カーボンナノチューブの側面 が濃く写るためである.TEM 写真から判断して単層カーボンナノチューブの直径は 1.6[nm]程度 であることが分かる.TEM写真を見てみると,単層カーボンナノチューブが何本かの束(バンド ル)をなしており,SEM写真で見られた糸状のものはバンドルであったと分かる.この写真の右 上の塊はアモルファスカーボンである.TEM写真でも単層カーボンナノチューブがからみ合って いる様子が良く分かる.その他,所々に粒子状の固まりも見える.これは生成時に用いた金属触 媒(Ni/Co)や炭素が溶けて固まったもの(ナノパーティクル)である.(図5-4)ナノパーティク ルは中心に金属触媒の塊があり,その周りを炭素が包むような構造を持つ.この炭素は単層カー ボンナノチューブではなく,層間の幅が細かいことからグラファイトが層構造をなしているとい える.
20 nm 20 nm
図5-2 単層カーボンナノチューブ(TEM写真)
20nm 20nm
図5-3 単独の単層カーボンナノチューブ(TEM写真)
10nm
10 nm
図5-4 ナノパーティクル(TEM写真)