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第 4 章 黒澤明の作品における音と画を対比させる

4.4 実験 8 :視聴覚刺激全体の印象評定

4.5.1 実験方法

4.5.1 実験方法

図4-26 実験9における各視聴覚刺激における平均評定値

-0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

AV-high-B (1.00) A'V-B

(0.71) AV-low-B

(0.00)

AV-B (0.27)

図4-27 実験9における各視聴覚刺激における「良さ」の尺度値

AV-B,AV-low-Bの順で高かった。多重比較(Bonferroni法)を行ったところ,「まとま りのある」「違和感のない」の評定値は,AV-high-BとAV-Bの間で,有意差が認められ

(それぞれp<.1,p<.05),AV-high-BとAV-low-Bの間にも有意差が認められた(いずれ もp<.05)。

このように,「まとまりのよさ」「良さ」の評価は,刺激全般にわたって意味的調和が

とれたAV-high-Bで最も高く,刺激全般にわたって意味的調和がとれていないAV-low-B

で最も低い。意味的調和がとれた場面ととれていない場面が混在するAV-B,A’V-Bは その中間に位置する。

次に,実験8と実験9で得られたデータを比較する。「面白い」「記憶に残る」「ユニ ークな」「変化のある」「葛藤を感じる」「含みのある」といった「ユニークさ」を表す 尺度では,各刺激とも実験8と実験9で得られた評定値との間に有意差はみられなかっ た。音源が見えるか見えないかという条件の違いは,「ユニークさ」には影響を及ぼさ ないようである。

実験 9 で得られた対位法の場面で音源が画面上にない AV-Bの「良さ」の評定値は,

実験 8で得られた音源が画面中にある AVの評定値に比べると低い。t検定を行ったと ころ,AV-BとAVの評定値に有意差があることが確認された(p<.1)。また,「違和感の ない」「まとまりのある」といった形容詞の評定値も,AV-Bは,AVに比べて低かった。

「まとまりのある」については,t検定を行った結果,AV-BとAVの評定値に有意差が 認められた(p.<05)。対位法が使われていないAV-highとAV-high-Bの「良さ」「まとま りのある」「違和感のない」の評定値には,有意差は見られなかった。このことから,

AV-B の「良さ」や「まとまりのある」の評定値が低いのは,映像を加工したことによ る影響ではなく,対位法の場面で画面中に音源が見えなかったためと考えられる。

AV-high,AV-high-Bで用いられた音楽は,Cionの主張する音と映像の関係を表わす「3

つの輪」の中の「オフの音」であり,「non-diegetic sound」と位置づけられる。また,

AVで用いられた音と画の対位法の場面の音楽は,音源が画面中に存在している,また は隣接しているため,Cionの主張する「インの音」「フレーム外の音」であり,「diegetic

sound」とみなせる。一方,AV-high-Bで音楽の音源を認識できないように加工した場面

においては,音楽の音源は画面中に存在しておらず,音楽は「オフの音」であり

「non-diegetic sound」となる。この「音と映像の関係」と本実験の結果から,音楽が「オ フの音」,「non-diegetic sound」である場合には,音楽と映像が調和していると視聴覚刺 激の総合的な評価は高いが,調和していないと視聴覚刺激の総合的な評価は低くなる。

音楽が「インの音」「フレーム外の音」であり,「diegetic sound」である場合には,音と 映像が調和していなくても,視聴覚刺激の総合的な評価は高くなりうる。

以上の実験結果から,対位法の場面で画面中に音源がない場合,作品全体の違和感が 増し,まとまりのなさがより際だつ印象となり,作品の総合的な評価が低くなることが 示された。またこの場合,音楽と映像の意味的調和が成立している作品の評価は高く,

意味的調和が成立していない場面があると作品の評価は低くなる。

ドキュメント内 連続的測定方法による音と映像の印象 の (ページ 83-86)

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