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 管理者等は、実験動物の飼養及び保管の適正化を図る ため、実験動物の入手先、飼育履歴、病歴等に関する記 録台帳を整備する等、実験動物の記録管理を適正に行う よう努めること。 また 人に危害を加える等のおそれの ある実験動物については、名札、脚環、マイクロチップ 等の装着等の識別措置を技術的に可能な範囲で講じるよ う努めること。

95)3 章 共通基準 3-1-1 ウ 1)実 験動物の入手(p.41)を参照。

果など、マウスやラットでは導入元の微生物モニタリング成績あ るいは胚操作によるクリーニングなどの履歴、遺伝子組換え動物 の場合は導入元から提供された組換え遺伝子等に関する情報があ る。動物を輸入する場合、サル類以外でも、イヌ、ネコ、アライ グマ、スカンクは狂犬病予防法により、家畜は家畜伝染病予防法 により輸入検疫が義務づけられている。その他の陸生哺乳類、鳥 類は感染症法により輸入届出が必要である。導入に際してとられ た諸手続きに関する記録類は、通常は管理者あるいは実験動物管 理者が保管するが、実験実施者(動物実験責任者)が保管する場 合もある。いずれの場合も、相互に情報の共有を図るべきである。

また、導入時の動物の健康状態を観察した検収、及びその後の検 疫・順化に関する記録を保管する* 96)

 動物の導入後は記録台帳などで管理を行う* 97)。記録台帳には、

動物の個体番号あるいは群番号、入手先、飼育履歴(入手又は出 生日等)、病歴(異常所見、処置等)、死亡又は安楽死処分日等の 情報を記録する。マウス・ラット等の群飼育をする動物はケージ 単位で管理する場合が多く、ケージに入手日や実験実施者名等を 記録したラベルを装着する。これも記録類のひとつである。マウ スやラット等を繁殖、生産する施設では、出生日や離乳日の記録 を日報や月報として実験動物管理者に報告し、繁殖状況の確認や 繁殖計画の見直しに使用する。マウス、ラットの飼育月報の例を 図 44 に示す。

 サル、イヌ、ブタなど大型の動物は個体ごとの台帳を作成す る。飼育管理の記録項目として、体重、定期健康診断(一般症状、

ウイルス抗体検査、細菌・寄生虫検査、血液・血清生化学検査)、

病歴(臨床症状、診断名、処置、転帰、剖検記録)、治療歴など の項目があげられ、特に長期間にわたり飼育する場合は、健康管 理に必要な項目が多くなる。繁殖施設でのイヌの個体カードの例 を図 45 に示す。

 また、輸入サルの飼育施設では個体ごとの記録台帳の保管、特 定外来生物及び特定動物では記録台帳の保管又は数量の変更が あった際の届出が法的に義務づけられている。家畜に相当する動 物種を飼育する場合は家畜伝染病予防法により、毎年飼育頭数を 地方自治体に報告することが義務づけられている。

 すべての動物種において、異常所見は実験動物の感染症や人獣 共通感染症を発見するため、また飼養保管状況の適否を判断する ために重要な情報であるので、日常の動物の状態の観察とその記 録の保管が重要である。

96)3 章 共通基準 3-1-1 ウ 2)施 設への導入 3)検疫・順化(p.43)

を参照

97)飼育管理ソフトなどを用いてパ ソコンにデータを送り、データを管理す るシステムを導入している施設もある。

マウス飼育月報 年   月

飼育室番号

日 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31

ケージ数 動物数 出産数 離乳数 死亡数 備考 記入者

(導入、移動、異常所見、実験操作、ケージ交換等)

系統名

確認者

図 44 マウス飼育月報例

No.

生年月日

特徴(背紋等)

Cage No.

母 No.

ワクチン

投与日 サイン

実施日

週齢 年月日 体重(kg) 状態・処置 症状 薬 浴 実施者

父 No.

♂ ♀

備 考

識別番号 性 格

出荷日・場所

図 45 イヌの個体カード例

(2)個体識別

 本基準において個体識別を求めているのは、人に危害を加える 等のおそれのある実験動物であり、主な実験動物としては特定動 物に該当するニホンザルなど、特定外来生物に該当するアカゲザ ル、カニクイザルなどがあげられる。個体識別法として名札、脚 環、マイクロチップが例示されているが、サル類ではマイクロチッ プが MRI 等の実験・診断機器への影響から使用できないことが あり、半永久的に識別可能な入れ墨(図 46、47)によることが一 般的である。その他の動物でも、特定動物や特定外来生物に該当 する場合があるため、動物種や実験の目的を考慮して個体識別法 を検討し、実施する必要がある* 98)

 特定動物等に該当しなくても、実験動物においては実験の精度 や再現性を確保するため必要に応じて個体識別を行う。マウス・

ラット等では、簡便な個体識別法として、動物用マーカー* 99)に よる背部へのマーキング(図 48)や尾に油性ペンでのマーキング

(図 49)があげられるが、有色の動物には適用できず、また退色 するので定期的な追加マーキングが必要である。耳たぶに小穴を あけ、その位置で個体識別を行う耳(イヤー)パンチ(図 50)や 数字が書かれたピアス式の耳タグを付ける方法もある(図 51)。

近年ではマウス・ラットに使用可能なマイクロチップ、入れ墨器 なども開発されている。イヌやブタ等の大型の実験動物では、首

図 48 背部マーキング例

大和田一雄監修,笠井一弘著:“アニマルマネジメント 動物管理・実験技術と 最新ガイドラインの運用”,アドスリー(2007)p.92 より転載 .

98)特定外来生物・特定(危険)

動物へのマイクロチップ埋込み技術マ ニュアル

https://www.env.go.jp/nature/

dobutsu/aigo/2_data/pamph/

h1804/full.pdf

 特定動物や特定外来生物では、

ISO 規格のマイクロチップを埋込み、

マイクロチップの識別番号を記載した 獣医師の証明書を添付して、主務大 臣に届け出ることが義務づけられてい る。しかし、実験動物では、台帳管 理方式による個体管理が許可条件で 義務づけられた場合は、マイクロチッ プではなく入れ墨等による個体識別措 置も認められる。

99)かつてはげっ歯類のマーキング にピクリン酸を使用していたが、爆発 性があるなどの理由で現在は推奨さ れない。

図 46 カニクイザルの大腿内側     への入れ墨

図 47 入墨器

図 51 マウスのピアス式耳タグ(矢印)

図 49 尾マーキング例

大和田一雄監修,笠井一弘著:“アニマルマネジメント 動物管理・実験技術と 最新ガイドラインの運用”,アドスリー(2007)p.92 より転載 .

輪の装着、マイクロチップの埋め込み(図 52)、入れ墨による個 体識別が一般的である。

図 52 イヌの背部マイクロチップ埋め込み マイクロチップ入り専用挿入器

図 50 イヤーパンチ

趣旨

 1 章 一般原則 1-1 基本的な考え方(p.15)では、「利用に必要 な限度において、できる限り動物に苦痛を与えない方法によって 行うことを徹底するために、実験動物の生理、生態、習性等に配 慮し」とあり、輸送に際しても該当する実験動物の特性を十分に 配慮した上で、輸送のスケジュールを綿密に立て、輸送容器の種 類、大きさ等を考慮し、実験動物のストレスを軽減するように努 めなければならない。また、施設内/施設間で行われるどのよう な輸送であっても、動物の逸走を防止し、環境汚染や危害防止策 が講じられていなければならない。

 なお、輸送時の取扱いについて、それぞれの文章に主語がない。

これは輸送には複数の個人や企業が関わり、個人の作業として行 う場合から業務契約として行う場合等、様々な態様があるためで ある。言い換えれば、責任の所在が曖昧になりやすい場合もある ため、関係者間で責任の範囲を確認する必要がある。

 

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