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らない。

 繁殖供用時期については、いずれの動物種においても繁殖適

* 35)に達したものを用いることが原則である。

 一般に、雌動物は第二次性徴期(春機発動期)を迎えたばかり で性周期や月経周期が安定しない時期の幼齢動物であっても、発 情していれば雄を許容し、妊娠は成立する。しかし、この時期の 動物を繁殖に供することは、母体への負担も大きく、その後の繁 殖に影響を及ぼすこともあるので、原則として幼齢動物は繁殖に 用いない。しかし、実験動物には、成熟と共に疾病を発症する系 統があり、幼齢のうちに繁殖に供さないと子供が得られないこと がある。このような場合は、繁殖への供用は許容される。

 また、性周期や月経周期が加齢の影響により不規則となる高齢 動物の繁殖への供用については、不妊、難産、低産子、哺育不能 さらに子に異常が生ずるなど、繁殖上多くの問題が生じることか ら避けるべきである。希少性が高く、有用な動物であれば、こと さら高齢になる前に計画生産により次世代を得ておく必要があ る。高齢等により不妊が続く場合には、卵巣移植、受精卵移植、

顕微授精などの生殖補助手法により、産子を得る方法もある。

 商業的生産施設は、飼育器具・器材等を開発・改良して動物の 飼養環境の向上を図り適正飼養を心がけ、実験動物の需要状況に 関する情報を収集して、需要予測に基づいた生産計画を立案し、

生産数の適正化に努める必要がある* 36)。また、動物の生理、生態、

習性を考慮したうえで、適切な生産方式で、繁殖特性に応じた交 配を行う。妊娠率や産子数が低下した個体は、退役させるのが原 則である。

 繁殖性を評価するものとして生産効率がある。生産効率は、通 常、交配に用いた雌の総数で離乳子総数(商業的生産施設では離 乳合格子数を用いる)を割った値を指数とし、その値が動物種あ るいは系統が本来保有する産子数に近いほど、その個体や集団の 生産効率は高いと評価する。生産効率に影響するものとして、産 子数をはじめ妊娠率* 37)、出産率* 38)、離乳率* 39)がある。また、

雄側の要因や交配方式なども影響する。これらは、動物の遺伝性 や年齢のほか、栄養や飼育条件などの環境要因によっても支配さ れる。したがって、生産効率の向上には、動物種あるいは系統の 特性を最大限に引き出すことができる適切な飼育環境下での適正 飼養が条件となる。

 生産供給施設が研究施設等への実験動物の販売に際して、動物

35)繁殖適齢:動物が性成熟に 達すれば繁殖は可能であるが、人 為的に繁殖の目的で交配させると きは、これから若干の期間が経過 した後に行う。この供用開始の齢 をいう。

36)実験動物飼養保管等基準で は、委員会の設置あるいはそれに 変わるものの設置を義務づけてお り、生産計画は、委員会がその適 正性を審査する。また、預かり飼育、

生物材料や外科処置動物の販売等 を行う生産施設では、既存の委員 会に動物実験計画を審査する機能 を持たせるか、新たに動物実験委 員会の設置が必要となる。

37)妊娠率:(妊娠総数/交配数)

× 100

38) 出産率:(生子を出産した 雌数/妊娠数)× 100

39) 離乳率:(離乳時子数/哺 育数調整後の子数)× 100

の情報として提供すべきものには、系統名、生産方式、繁殖成績、

微生物モニタリング成績、ワクチン接種や治療歴とその内容(サ ル類、イヌ、ネコなど)、系統の特性や形質に関する情報、その 他実験成績に影響を及ぼす可能性のある情報、法や指針で必要な 情報(狂犬病予防法、カルタヘナ法、外来生物法など)等があり、

使用者の要望に応じて選択する。購入希望者が随時、情報を入手 できるよう、主要な情報をカタログやホームページで公開しても よい。

 なお、遺伝子組換え動物の譲渡・販売に当たっては、法に定 められた輸送時の事前情報提供を遵守しなければならない(3 章  共通基準 3-1-1飼養及び保管の方法 ウ 1)実験動物の入手(p.41)

参照)。

参考図書

1) Humane Endpoints for Animals Used in Biomedical Research and Testing. ILAR Journal,

41

(2):2000:58-123. 中井伸子訳:“動物実験に おける人道的エンドポイント”,アドスリー(2006).

2) 久和 茂編:“実験動物学(獣医学教育モデル・コア・カリキュラム準拠)”

朝倉書店(2013).

3) 実験動物飼育保管研究会編:“実験動物の飼養及び保管等に関する基準の 解説”,ぎょうせい(1980).

4) 日本実験動物学会監訳:“実験動物の管理と使用に関する指針 第 8 版”,

アドスリー(2011).

5) 日本実験動物協会:“実験動物の福祉に関する指針並びに運用の手引き”,

日本実験動物協会(2015).

6) 大和田一雄監修・笠井一弘著:“アニマルマネジメントⅢ ”,アドスリー

(2015).

7) 藤原公策・宮嶌宏彰 他編:“実験動物学事典”,朝倉書店(1989).

8) 家畜繁殖学会:“新繁殖学辞典”,文永堂出版(1992).

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