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2. 不可視マーカを用いた位置・姿勢推定のための環境構築 25

2.4 実験と考察

画像面

c

マーカ上の特徴点p の3次元座標:s

p

特徴点pの3次元位置を 画像上へ投影した座標:xfp

画像f を撮影した カメラの投影中心

特徴点p 画像上での座標

再投影誤差:

xfp

~

~ 2 fp fp

Rfp= x x

図 33 特徴点の再投影誤差

マーカ設計情報にはマーカ間の間隔やマーカの並びが記述されているため,位 置・姿勢が推定されたマーカに隣接するマーカの位置・姿勢も推定可能である.

ただし,不可視マーカ壁紙が切断されて貼られる場合があるため,上記のマーカ 位置・姿勢推定処理で推定された位置・姿勢と隣接するマーカから設計情報に基 づいて計算された位置・姿勢の差がある閾値以下であれば,マーカ設計情報を元 にした位置・姿勢の方が正しいとしてこれを利用する.このようにマーカ設計情 報を利用することにより誤差の蓄積の軽減を図る.

80cm

80cm

16cm

16cm

80cm

80cm

16cm

16cm

図 34 不可視マーカ壁紙の大きさ

マーカを貼った場合に,人間の頭部に装着したカメラで多くのマーカが撮影でき,

かつIDの認識ができるように設計した.またCRCのチェックビット数はマーカ の誤認識率とIDの数を考慮し,不可視マーカの検出が容易なことから固有のID を持つマーカの設置可能範囲を重視して決定した.実験では,310×4個のマーカ が印刷された壁紙を,図35のように約65m2の範囲の本学廊下の天井に貼り,提 案するキャリブレーションツールを用いてマーカの三次元位置・姿勢を推定した.

まず,不可視マーカの準備と貼り付け作業について述べる.この作業には,5 人でおよそ20時間程度必要とした.その内訳はマーカのパターンを加工する作 業に13時間,壁紙を天井に貼る作業に7時間程度であった.経験上,同じ数の マーカを一つ一つ人手で貼る場合と比較すると全体の作業時間は軽減されたが,

マーカのパターン加工の作業時間が依然として多いため,今後この作業を自動化 する必要がある.

次に,不可視マーカのキャリブレーション実験について述べる.キャリブレー ションツールに入力した画像は図36に示すような100枚(3072×2304画素)で,

使用したカメラはµ770SW(Olympus製),カメラの内部パラメータはTsaiの手

図 35 天井に貼った不可視マーカ壁紙(フラッシュ撮影)

図 36 キャリブレーションツールへの入力画像

-3 .5 -3 -2 .5 -2 -1 .5 -1 -0 .5 0 0.5 1 1.5

-22 -20 -18 -16 -14 -12 -10 -8 -6 -4 -2 0 2 4

x[m ]

y[m]

マーカ推定位置 マーカ位置(真値)

■マーカ推定位置

+基準 マーカ位置

×マーカ位置(真値)

図 37 マーカのキャリブレーション結果(基準マーカが1つの場合)

-3 .5 -3 -2 .5 -2 -1 .5 -1 -0 .5 0 0.5 1 1.5

-22 -20 -18 -16 -14 -12 -10 -8 -6 -4 -2 0 2 4

x[m ]

y[m]

マーカ推定位置 マーカ位置(真値)

■マーカ推定位置

+基準 マーカ位置

×マーカ位置(真値)

図 38 マーカのキャリブレーション結果(基準マーカが4つの場合)

法[Tsa86]を用いて推定した.本実験では全てのマーカが同一平面状にあるとい

う拘束条件を用いて,基準マーカとして1つのマーカの位置を世界座標系の原点 に設定して与えた場合と,それに加えて3個のマーカの位置を計測して与えた場 合についてマーカのキャリブレーション実験を行った.図37に基準マーカが1つ の場合,図38に基準マーカが4つの場合のキャリブレーションツールで推定した マーカの位置を示す.この図において+が基準マーカの位置,がマーカの推定 位置,×がその真値を表す.また点線で囲まれた四角形は各入力画像の撮影範囲 を表す.基準マーカの位置,およびマーカの真値はトータルステーション(トプ コン製 GPT-9005A,測距精度:±5mm)を用いて約5m間隔で20点計測した.こ のときの誤差は,表4に示すように,基準マーカが1つの場合平均約13mm,標

表 4 キャリブレーションツールによるマーカの位置推定精度 基準マーカ数 1個 4個

平均位置誤差 13mm 11mm 標準偏差 12mm 7mm

準偏差12mm,基準マーカが4つの場合は平均11mm,標準偏差7mm程度であっ

た.一般に位置・姿勢推定に用いる特徴点の計測誤差が等方性を持つのであれば,

特徴点の数が多く,かつ特徴点とカメラ間の距離が近いほど,推定されるカメラ 位置・姿勢の精度は高くなる[佐藤03].しかしながら本システムのキャリブレー ションツールで得られるマーカ位置は,蓄積誤差の影響により偏りを持ちやすく,

キャリブレーションの誤差がユーザ位置・姿勢推定の精度に与える影響は大きい と考えられる.そのため広い範囲でキャリブレーションを行う場合は基準マーカ を複数与える必要がある.

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