第 5 章 結論
5.2 実践的示唆
(P→Oi)とは、そのレベルの業績Pが第i番目の報酬(=アウトカム)
Oiをもたらすであろうという個人の期待であり、やはりその個人の主観確率 によって示される。
また、(Vi)とは、第i番目の報酬の誘意性であり、その報酬の個人にとっ ての主観的魅力、ないし主観的価値を示している。
こうしたモチベ−ションの構造を示す式から言えることは、個人の高いモチ ベ−ションが生じるためには、第一に仕事努力が一定の業績に結びつく可能性 が高く、第二にそうした業績はなんらかの報酬をもたらす可能性が高く、第三 に、そうした報酬が自分にとって相当望ましいものである、というようにその 個人自身が感じることが必要であるという点である。
この事は、個人の仕事行動を動機付けるには、少なくとも 1 つ以上の魅力的 な報酬と、それぞれの報酬が個人の仕事努力および相応の業績の結果としても たらされるという組織の仕組みがあればよいという事を示しているのである。
期待理論の視点からいえば、「それぞれの誘意性のもつ報酬は、原則として個 人の仕事努力、および相応の業績の結果としてもたらされる」とし組織の仕組 みが必要になってくる。
仕事努力 E
業績 P
報酬O1
報酬O2
報酬Oi
(V1)
(V2)
(Vi)
(E→P)期待 (P→Oi)期待 報酬誘意性
図 4.1 仕事モチベ−ションの構造 出展: 坂下(1992) p.181
以上のような理論と実際にどのような取り組みが行われているかという観点 で提言を行う。
(1)情報提供者の負担を減らす
富士通はその後、本来の業務の延長線上で自然にネットワ−クで共有・活用 できる仕掛けを構築している。これまでは、従来の業務に加え、業務報告など を整理して清書し、登録する手間の掛かることであった。情報の発信のために 改めて時間をかけて、内容を整理し、まとめるといった従来の登録作業をなく し、日常の作業のなかで自分自身が作成したデ−タをそのままネットワークで のサ−バ−に格納できるようにしたのである。これにより、流通する情報量が 飛躍的に増加するとともに格納した時点で誰もがすぐ活用できるようになるの である。
(2)業績と報酬を結びつける
表出化による報酬は様々なものがある。それは金銭であったり名誉であった りもする。NTT東日本や日本 IBM は提供した情報がどれだけアクセスされた かなどにより、賞与が得られる仕組みである。逆に、ゼロックスでは金銭的な インセンティブを一切行わず、名誉のみがインセンティブになっている。その 報酬に対する報酬優位性は個人によって異なるので、個人の主観評価によるも のである。よって、いくつかの報酬を組み合わせる事が有効であると考えられ る。
(3)専門スタッフの設置
4 章で考察を行ったが、「情報の質」の管理のために専門スタッフを置いてい る事例を取り上げた。専門スタッフを配置する事は、「情報の質」の管理を行う だけでなく、情報提供者の負担の軽減も考えられるので、有効な方法であると 言える。
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