5.3 アクティブタグを利用した歩行者追跡システムのシミュレーション 38
5.3.3 実証実験の再現シミュレーション
この構成を用いてパナソニック株式会社によって行われた実機を用いた実証実 験の再現シミュレーションを行った.実証実験は3台のゲートウェイタグ,4台の
図 5.5: シミュレーションの概念図
固定タグを用いて16人の歩行者の位置推定を行う場面を想定して行われた.各歩 行者は図 5.6のような指示書に従い,モバイルタグを着用して歩行を行った.
この実証実験の再現シミュレーションを行うために我々はノード一台を用いて タグ一台のエミュレーションを行うこととした.従って,合計23台のノードを利 用してシミュレーションが行われたことになる.このシミュレーションで使用し
たSpaceの一覧を表 5.3に示す.このシミュレーションでは,全てのタグから送
信されたパケットはConduitを通じ,アクティブタグの通信をエミュレートする Chanel Spaceに送られる.Chanel Spaceでタグの位置関係に応じてパケットロス のエミュレーションが行われたパケットは再度Conduit経由で先のタグに対して 送られる.
このシミュレーションは2つの段階を経て,徐々に厳密なシミュレーションへと 移行を行った.最初の段階では,主にアクティブタグ間の通信をQOMETによっ てエミュレートする部分を中心に検証を行った.この段階では,アクティブタグの 詳細な動作は必要ではなかったため,「一定の周期毎にビーコンを発する」という アクティブタグの動作を単純化した機能のみを実装したdummytag Spaceと,ア
図 5.6: 実証実験の指示書
クティブタグの通信をエミュレートするChanel Spaceを各ノード上で実行した.
Chanel Spaceが通信に用いるパラメータはQOMETを用いて各タグの位置をもと
に算出を行ったものを利用した.実験は16台の移動タグ,4台の固定タグ,3台の ゲートウェイタグを利用して行った.このシミュレーションによって,通信部分 の確認を行った後,次の段階では実際のアクティブタグで利用されているファー ムウェアのバイナリコードをプロセッサエミュレータ上で実行するシミュレーショ ンを行った.
今回シミュレーションの対象としたアクティブタグのプロトコルでは,送信さ れたパケットのビット同期を利用してタグのクロックを補正するため,Space間の 通信のレイテンシがシミュレーションに大きな影響を与える.そこでシミュレー ションでは実時間の1/10倍の時間で進む仮想時間を利用することによってレイテ ンシの影響を抑えた.この場合であっても,イベントドリブンシミュレータで行 われるシミュレーションとは異なり,シミュレーションの所要時間が実行以前に 把握できることはこの方式の利点の一つである.このシミュレーションの結果の
表 5.3: アクティブタグを利用した歩行者追跡システムのシミュレーションで用い られたSpace群
Node Number Space Name Destination Space 1 Mobile Tag 0 Chanel Space 0
Chanel Space 0 Mobile Tag 1,Mobile Tag 2, … ,Gateway Tag 2 2 Mobile Tag 1 Chanel Space 1
Chanel Space 1 Mobile Tag 0,Mobile Tag 2, … ,Gateway Tag 2
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23 Gateway Tag 2 Chanel Space 22
Chanel Space 0 Mobile Tag 0,Mobile Tag 1, … ,Gateway Tag 1
一部を図5.7に示す.この図ではシミュレーションの結果を実証実験と同様に位置 推定エンジンで処理した結果を点線で,ゲートウェイタグに対してアップロード されたデータに含まれている情報がやりとりされた点の位置と,それに対応する 時間をX印で表している.図の下部の点線が時間軸を表しており,点線上のX印 はゲートウェイタグに対してアップロードされたデータに含まれている点がやり とりされた時点の時間を示している.この図ではゲートウェイタグに対してアッ プロードされたデータに含まれている全ての点ではなく,図に表示された範囲に 関する情報のみを表示した.図 5.6と比較すると位置推定後の軌跡に関しては正 しい結果が得られているといえる.しかし,実証実験時に歩行者の移動経路を測 定することができておらず,歩行者が指示書通りに歩行を行ったことを仮定して シミュレーションを行ったため,この結果のみでは今回のシミュレーションが信 頼に足るものであると結論付けることはできない.そこで,我々はより単純な移 動経路で実機を用いた追実験を行った.