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・現地で日当たりや風通しの状況を確認し、黒球温度計等を用いて温熱 4 要素を測定

・実測による方法は、測定場所の局所的な影響を受けやすいことに注意

・測定した複数の温熱要素を用いて SET*や WBGT などの体感温度指標を計算

夏季日中などに実際に現地を訪れることで、測定するまでもなく、日当たりや風通しの状況など、熱環境の 重要な要素を確認することができます。体感温度を定量的に把握するには、体感温度指標の算出に必要な 温熱要素を測定し、計算して求めることができます。

標準有効温度 SET*と湿球黒球温度 WBGT について、測定方法や留意事項、計算方法などを整理しま した。

1)SET*

SET*を把握するには気温(℃)、相対湿度(%)、風速(m/s)、黒 球温度(℃)もしくは平均放射温度 MRT 107 (℃)の温熱4要素に 加え、人の代謝量(met)と着衣量(Clo)が必要になります。

温熱4要素をそれぞれ測定するのは煩雑ですが、気温や相対湿 度、風速、黒球温度の測定をパッケージ化した測定機器が市販され ています。このような機器を用いることで比較的簡単に測定することが できます。以下に測定上の留意事項の例を示します。

①測定場所の選定

体感温度は日当たりや風通しの状況などの局所的な影響を受け やすいため、計測場所周辺の建物状況などを観察し、評価に適した

場所に計測器を設置します。また、計測センサーの設置高さについて、高温化した路面上で測定する場合など は低い位置ほど体感温度が高くなる可能性があります。歩行者の体感温度を評価する場合には地上高 1.1m が基本になりますが、着座時を評価する場合にはより地面に近い位置で測定する必要があります。

②気温の測定

気温センサーが日射や路面からの赤外放射を受けないように物理的に囲う必要があります。気温センサーを 筒や放射シールドで遮蔽する場合、通風を確保する必要があります。その際、自然通風式は強制通風式

(気温センサーを入れた筒などにファンで強制的に風を導入する方式、図4.3 参照)の温度計にくらべて、日 向では日射などの影響をかなり受けることが指摘されています108。日向では、気温を強制的な通風条件で測 定することで正確な値を測ることができます。

107 MRT(Mean Radiant Temperature):周囲から受ける放射熱量の全方向に対する平均値と等価な放射熱量を出す

黒体放射の温度(℃)

108 気象庁, 気象観測の手引き, 19989

図4.2 温熱4要素を測定する機器の例

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図4.3 気温センサーを入れる通風筒の例(断面と概観)109

③放射環境の測定

放射環境を簡単に測るには黒球温度計を用います。黒球は全方位からの日 射(短波放射)と路面等からの赤外放射(長波放射)の全ての放射熱を同 時に測定します。黒球温度の値が安定するまでには時間がかかるため 15 分以上、

放置する必要があります。視覚的には、サーモカメラを用いて熱画像を撮影するこ とで、赤外放射量が多い高温部分を容易に特定することができます。スマートフォ ンなどを用いて簡単に熱画像を撮影できる機器も市販されています。

長短波放射収支計を用いて波長帯別、方向別に計測する方法もあります。短 波、長波の別に上下2方向を計測110したり、より詳細には 6 方向(上下、左右、

前後)を計測(次頁のコラムを参照ください)し、波長帯別、方向別に重み付け して MRT を算出することで、人が受ける放射により近い値を知ることができます。

図4.5 直径 15cm の黒球温度計(左)と長短波放射収支計(右)の例 なお、以下の式を用いて黒球温度などから MRT を求めることができます。

MRT = [(𝑡

𝑔

+ 273)

4

+ 2.5 × 10

8

× 𝑉

𝑎0.6

(𝑡

𝑔

− 𝑡

𝑎

)]

0.25

− 273

(ISO7726)

ここで、MRT:平均放射温度(℃)、tg:黒球温度(℃)、ta:気温(℃)、Va:風速(m/s)。ただし、標準的な黒球温 度計(直径 15cm)の場合。

109 気象庁, 気象観測ガイドブック, 200212

110 渡邊ほか,屋外における平均放射温度の算出法の比較,日本建築学会大会学術講演梗概集(環境工学 II),357-358,2013

短波センサー 長波センサー

図4.4 スマートフォンによる 熱画像撮影のイメージ

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【屋外日射環境における平均放射温度 MRT の測定方法の紹介】

屋外日射環境における MRT について、ドイツ技術者協会規格(VDI)に示されている測定方法を紹 介します。

<VDI 3787 Part 2 Annex A:平均放射温度 MRT>

・長短波放射収支計を使い、下方や上方へ 90°ずつ動かし、6 つの方向からの放射フラックスを測定

・測定高さ:地上 1.1m ※立位の人間の重心位置にほぼ一致

・6 方向別の重み係数と短波・長波別の吸収率から、人体に吸収される平均放射フラックス密度

𝑆

Str

(W/㎡)を計算

𝑆

Str

= ∑ 𝑊

𝑖

・( 𝑎

𝑘

𝐾

𝑖

+ 𝑎

𝑙

𝐿

𝑖

6

𝑖=1

6 方向別の重み係数

𝑊

𝑖

(𝑖 = 1 to 6)

東・南・西・北の方向からの放射フラックス:0.22 上または下からの放射フラックス:0.06

𝐾

𝑖:短波放射(日射)フラックス(W/㎡)

𝐿

𝑖:長波放射(赤外放射)フラックス(W/㎡)

𝑎

𝑘:短波放射に対する吸収率 0.7

𝑎

𝑙:長波放射に対する吸収率 0.97

・MRT(℃)を計算

𝑡

MRT

= [𝑆

Str

/ (𝜀

P

𝜎)]

0.25

− 273.2

σ

:ステファンボルツマン定数 5.67×10-8(W/(m2・K4))

𝜀

P:人体の放射率 0.97

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