概 要
3.2 実施者毎の成果
○大阪大学産業科学研究所①②③
高温高鉛はんだの代替材料として、導電性接着剤の熱伝導や電気抵抗値などの特性の改善のために、新たに開 発したカルボン酸系銀塩を用いた場合の熱分解が100℃前後で生じることを確認し可能性を明らかにした。Agを代替 するための Cu 粒子を用いた銀コート粒子による改善の可能性を確認した。Cu 粒子コア Ag コート系導電性接着剤で 10-5Ω・cm オーダーの抵抗値を実現し、Ag 量の低減の可能性を明らかにし設計指針を示した。Ag 系導電性接着剤
の高機能化対策を施し、その特性評価から、接合強度ははんだ並みで十分確保でき、更に熱伝導で 100W/m・K を 越えることを明らかにした。図5に抵抗値変化を示すが、200℃-30 分のキュアすると、6.7×10-6Ω/cm の低抵抗値を 達成した。この値は、従来 Ag ナノ粒子インクを用いて達成されるもので、ミクロンサイズで達成できることは、ハンドリ ングのし易さに加え一桁経済性が上がったことを意味している。
図4 開発導電性接着剤で 200℃-30 分キュアした組織と抵抗値変化。
銀粒子系の導電性接着剤を用いたファインピッチバンプ形成のための基礎因子解析から、ディスペンサ塗布技術 に高い精度が要求されることが分かり、50μm ピッチの安定したバンプ形成を実現した。さらに高アスペクト比のファイ ンピッチバンプ形成のための2階建て構造を提案し、高温アスペクト比化を達成した。バンプ構造柔軟化のために、
シリコーン樹脂を用いた導電性接着剤による実装を行ったが、エポキシと同様の形態を確保できるものの、接着強度 に課題を残すことが判明した。シリコーン樹脂を用いる場合には、電極が界面の改善が必要である。
金属系鉛フリー高はんだとして、Zn-Sn 系と Bi 系合金を主とする技術開発を行った。Zn 系合金は優れた延性を示し、
室温では 20%の引張り伸びを持ち、また、ダイアタッチ試験から 260℃のリフローでも影響がないことを確認した。Zn 系 合金と Cu と Ni 基板との接合を行い界面形成を調べ、界面反応が激しいことを明らかにした。この反応を抑制する接 合構造を提案し、TiN バリア層が有効であることを証明した。Zn-Sn 系合金が、熱伝導に極めて優れることを明らかに した。Bi 系合金も合金化で優れた接合を可能にすることを明らかにした。ダイアタッチ接続の温度サイクル試験を実 施し、Zn―Sn 系、及び Bi 系合金が Au 系合金とともに適材適所の使い分けが可能であることを結論した。
図5 Zn-Sn でダイアタッチした接続界面の安定性(左:せん断強度)。-40~125℃の温度サイクル変化と 2000 サイク ル後の亀裂の状態。Zn-Sn 系は、せん断強度がほとんど劣化しない。
記載要領
図5には、Ag 系導電性接着剤の高温高湿環境における Sn めっき界面の劣化がガルバニック腐食であることを証明 した。TEM による詳細な観察から、その劣化メカニズムを解明した。Sn めっきと Ag 粒子間に吸湿したエポキシを介し てマイクロ電池が形成され、Sn が酸化すると同時にマイグレーションを起こす。
図6 Ag-エポキシと Sn めっき高温高湿劣化界面の微細組織。左:85℃-85%RH で 300 時間保持後の界面 SEM 像。
界面に酸化物層とボイドが形成している。右:TEM により Sn のエポキシ中への原子レベルの拡散が証明された。
また、温度サイクル試験による劣化メカニズムもはんだとは異なることを解明し、Ag/エポキシ界面、及びエポキシ 電極界面の微細亀裂が徐々に蓄積されることで疲労が進む。
導電性接着剤の衝撃特性ははんだ接続とは大きく異なることを明らかにし、導電性接着剤実装衝撃試験では従来 の計測技術の高精度かが必須になることを示した(図8)。提案した高精度化された衝撃試験方法が、汎用性の高い 評価が可能なことを明らかにした。
図7 従来の衝撃試験法で評価した衝撃カーブ(左)では、はんだ接続はデータのスムージングが可能であるが、導
電性接着剤接続ではばらつきが大きすぎる。これを、右のレーザー計測システムに改良することで、高精度計測が可 能になった。
コンパクトな熱伝導評価方法を確立し、導電性接着剤実装 の接続熱抵抗がはんだとは大きく異なり大きいことを明らかに した。
○東北大学多元物質科学研究所(再委託先)③
TEM内のその場2端子抵抗測定装置を開発し、ナノメーターレ ベルの微少領域のTEM内でのその場観察抵抗測定が可能になり、
はじめてTEM内の抵抗測定その場観察を実現した。更に、二探針 抵抗測定装置の駆動がなめらかに動作するように改良し、ナノメー ターレベルのホログラフィ像を得ることが可能になった。完成した2 探針ホルダーを図9に示す。
この新たな技術を用いて、はじめて導電性接着剤のAg粒子間の 電場をホログラフィにより可視化し(図10)、電気が流れる際の諸現 象の解明の端緒を与えた。
図8 TEM内その場抵抗測定用2探針ホルダー
記載要領
(a) (b)
図9 導電性接着剤のTEM像(上)と対応する電子線ホログラフィ像。1 μA の定電流の(a)通電 前、(b)通電後の位相再生像。紫の部分がAg粒子、薄茶色の部分がエポキシ。電位分布を表すこれ らの位相再生像は、いずれも、試料の左下から右上の方向に3 Vの電圧を印加した状態で観測され たもの。
○明星大学情報学部情報学科(再委託先)③
デイジーチェーン形成したBGAの導電性接着剤接続部の高周波応答測定システムを開発した(図11)。BGAの 導電性接着剤接続部の高周波応答測定では、GHzオーダーで導電性接着剤がはんだ接続を凌駕する特性を示すこ とが明らかにした(図12)。酸化したAg粒子を用いた導電性接着剤では、キュアによりボイドが発生して界面は生じる ことを明らかにした。BGA実装の高周波評価により、導電性接着剤が12Gbpsまでのデジタル信号を通過できることを 示した。高周波領域では導電性接着剤接続がメタマテリアル的特性を示すことを示し、新たな接続構造の提案を行っ た。
図10 導電性接着剤接続のGHz伝送特性評価のための評価システム。
図11 2Gbps信号のアイパターン比較。はんだ(左)と比較して、導電性接着剤(右)はアイパターンが明確に見られ、
高速伝送に優れることが分かった。
○芝浦工業大学工学部物質系材料工学科(再委託先)③
導電性接着剤で実装したミクロ試験片評価技術を確立した。本技術を用い、導電性接着剤接続の、温度、応力、ひ ずみ速度の効果を明らかにした。導電性接着剤実装が室温に於いてさえ非線形応答し、100℃を超えるとガラス転移 点を超え粘性挙動が顕著になることを見いだした。ミクロ疲労試験器の加熱および電気抵抗測定の同時測定を可能 にする装置開発を行い、機械特性の評価と抵抗測定を同時に行うべきことを示した。導電性接着剤接続の微小接続 せん断試験及び疲労試験器を確立し、加熱および電気抵抗測定の同時測定が重要な評価方法であることを明らか にした。以上の各評価試験を通して、導電性接着剤実装の評価技術の標準化が必要であり、この原形を提案した。図 13は、標準的なサンプルと評価方法として提案する完成した装置とサンプルを示す。
図12 導電性接着剤接続試験の機械的特性評価装置(左)と微小サンプルの例(右)。その場抵抗測定も行う。
記載要領
図13 導電性接着剤接続のせん断強度試験(左)とその場電気抵抗評価(右)。相互に変化点が強く関係していること が分かる。
○ 藤倉化成株式会社(助成)①② 研究開発の実績
平成17年度、及び平成18年度に助成を受けて購入した「引張り試験機」、「熱伝導率測定装置(Xe フラッシュ)」以外の実験器具は弊社が既に取得しているものを使用した。試験配合作成のための分散 機、粘度測定のための粘度計、抵抗値測定のためのDMM他、試験片作成のための印刷機・ディスペ ンサ装置、信頼性評価のための環境試験用の装置などである。
助成を受けて購入した熱伝導率測定装置は、材料の熱伝導率を効率的に測定するために用い、Ag 系導電性接着剤の高熱伝導化の研究に有益であった。平成19年度には、助成を受けて購入した「静止 型リフロー装置」を用いてリフロー硬化時の大型半導体パッケージ(QFP, BGA)の熱応力での反りに よる接続不具合の確認からの改良検討、及び同じく助成を受けて購入した「V 型ブレンダー」を用い てナノペースト等の高充填を行い、L/S=50μm/50μmのファインライン印刷性と10-6Ωcmオーダー の低抵抗を実現した。
また、補助を受けて購入した材料(各種銀粉、各種銀フレーク、熱硬化性合金粉)を使用して、配 合検討を行った。
(A)260℃以上の耐熱接続に耐え得る材料の開発
260℃以上の耐熱性の樹脂・硬化剤をスクリーニングして採用した。ノボラック型のエポキシ樹脂と 変性フェノール系硬化剤の組み合わせを採用した。この系で完全硬化した硬化物は 260℃のリフロー で30秒以上の耐性を実現できた。
一度焼結した後は融点が上昇するような金属結合型接着剤に関してフィラーの検討を行った。Ag、
Cu、Sn、Bi、Inの五種類の金属の組み合わせで最適化を行い、融点が300℃を越える配合を作った。
融点がリフロー温度の 260℃を超えるため、耐熱は達成できた。これと併用して使用する最適樹脂は エポキシ樹脂の低粘度タイプを採用した。
(B)抵抗値5×10-5Ωcm以下を達成する材料の開発
低抵抗を実現するための導電性フィラーとして、銀フレーク・銀粉を検討した。銀の種類、配合量、