局所Lyapunov関数は平衡点近傍で定義域を検証できなければならない.第4.3節で記した方法Stage1
では局所Lyapunov関数は2次形式で導出されており,そして,2次形式であることを利用して,行列の
負値性を確認することで定義域を検証している.一方,第5節の方法で構成された局所Lyapunov関数
(5.3)は4次以上の高次多項式であり,その検証方法を用いることはできない.検証方法の詳細は[22]を
参照されたい.ここでは,[22]にも記載されている検証方法に利用する定理について紹介する.
定理 5.1. 係数cα∈Rを持つ2m次同次式 f(x) = ∑
|α|=2m
cαxα ∈R, x∈Rn
を考える.なお,αは全次数を表す.このとき
∀y∈ {x| ∥x∥= 1}, f(y)<0⇒ ∀x∈Rn\0, f(x)<0 が成立する.
この定理を精度保証に応用するため,次の系を与える.
定理5.1の系 5.1. 以下では区間係数[cα]∈IRをもつ2m次同次式
fI(x) = ∑
|α|=2m
cαxα∈R, x∈IRn
を考える.このとき
∀y∈ {x| ∥x∥= 1}, supf(y)<0⇒ ∀x∈Rn\0, fI(x)<0 が成立する.
6 数値例
5.5節の問題をのように分類し,それぞれの場合についての局所Lyapunov関数の構成方法記した.本 章ではこれを用いて,実際に3次元の自励系が持つ非双曲型平衡点に対する局所Lyapunov関数の構成 を行いその有用性を確かめる.なお,定義域の検証に必要となる区間演算はM AT LAB上で精度保証を 行うためのパッケージであるIN T LAB(version10.2)を利用した[20].
6.1 J11の場合に該当する3次元の数値例
J11にあたる非双曲型平衡点をもつ3次元の系を数値例とし,5.3節に従って,局所Lyapunov関数を 構成し,さらに精度保証を用いて,定義域を検証した.
数値例
v˙ =
1 0 0 0 0 −1 0 1 0
v+
0
(v1+ 2v2)2+ 5(v2v32+v32) 5(v22v3+v33)
(6.1)
このとき
q(2)(u) =
1
5(4u2u3−4u23−6u22)
1 38u2u3
1
3(4u22+ 8u23)
,q(3)(u) =
1
45(61u32−6u33)
1
45(14u1u22−276u32)
−154u1u23
a=0, Y =
−2 0 0 0 −1 0
0 0 −1
となる.
これに対し,次の関数L
L(v) =−2v12−v23−v22−163v33−245v1v22+165 v1v2v3+8v22v3−165v1v23+27245v1v32−1615v1v33−1888225v34−3808225v24+
64
25v2v33− 4352225v22v32+ 9625v23v3 −224135v1v23v3+ 3245v1v22v32+ 6445v1v43 − 3275v35+ 3275v2v43 − 1625v22v33 + 976225v23v32+
2128
75 v24v3+48875v25−2025196v21v24−22516v21v34+2576675v1v25−2258 v36+488675v32v33− 836182025v26
が局所Lyapunov関数となる.Lの時間微分については
d
dtL(v) =−4v21−2v21v2−325v12v3−31425v34−59625v22v32+697675 v32v3−15425v42−1615v1v33−165v1v2v32+1763 v1v22v3−
1456
45 v1v23+1445 v21v2v3−1925 v21v22+1088225v12v32+165v13v3−485 v31v2+596875 v53+12825v2v33−6475v2v43+298415 v22v33−
60784
225 v23v32/225 +12809 v42v3−54544225 v52−137645 v1v43+348875 v1v2v33−51536225 v1v22v23+52544675 v1v23v3−167344675 v1v42+
64
25v12v33−8704225v21v2v32+28825v12v22v3+4208225v21v22v23+1902882025 v12v23v3+27215v31v22−755245 v36+382475 v2v35−124904225 v22v34+
3072
25 v23v33−60409 v24v23−937645 v26−16v1v53+12875v1v2v34−52825v1v22v33+33392225 v1v23v32+280112675 v1v24v3+151616675 v1v25+
64
225v21v34−352225v21v2v33+654882025 v21v24+6445v31v2v32−22445v31v22v3−323 v73+323v2v36−803v22v53+10729 v32v34+157952225 v24v33+
2440
9 v25v23+21283 v26v3−559144675 v27+2569 v1v36+1283 v1v22v34−16544675 v1v32v33+1289 v1v42v32−89627v1v25v3−205808225 v1v26+
488
225v21v22v33 −6445v21v22v34−3502842025 v12v52 −2025784v41v23+ 355042025v13v42 −1615v83− 1615v22v36+ 97645v23v35+525508675 v25v3+
976
45v52v33−167236135 v62v32− 167236135 v28+257627 v1v25v23+257627 v1v27−6445v12v63−784405v12v42v32−784405v21v26 となる.
これに対し,5.7節の検証方法を使って,局所Lyapunov関数が成立する定義域DLの検証を行なった 結果,上の関数Lは少なくとも
DL={v| −0.0006≤v1≤0.0006,−0.0006≤v2 ≤0.0006,−0.0006≤v3≤0.0006} (6.2) の範囲で局所Lyapunov関数となることがわかった.
また,dtdL(v) = dtdL1(v) +O(∥v∥5)としたとき,dtdL1(v)に対しても,同様に局所Lyapunov関数が 成立する定義域DL1の検証を行なった結果,少なくとも
DL1 ={v| −0.0006≤v1≤0.0006,−0.0006≤v2 ≤0.0006,−0.0006≤v3 ≤0.0006} (6.3) の範囲で局所Lyapunov関数となることがわかった.
7 まとめと展望
5.3節によって構成した局所Lyapunovが非常に狭い範囲ではあるが,成立することを検証することが できた.
また,5.3節では,座標変換を3次項の非線形変換までしか考えていない.さらに高次の座標変換を用 いれば,計算は煩雑になるが,5.3で定めた局所Lyapunov関数を構成するための十分条件をもっと緩く できる可能性がある.
将来的には数式処理システムと絡めて,高次元の場合のときの局所Lyapunov関数の構成の導出につ いて進めていきたい.また,高次元の場合,非双曲型平衡点近傍で局所Lyapunov関数が構成できたとし ても,双曲型と同じ利用方法では,有効に活用できない可能性がある.その活用方法についても今後模 索していきたい.
8 参考文献 参考文献
[1] Steven H.Strogatz,[田中久陽,中尾裕也,千葉逸人 訳]: ストロガッツ 非線形ダイナミクスと カオス:数学的基礎から物理・生物・化学・工学への応用まで ,丸善出版,2017.
[2] 郡宏,森田喜久: 生物リズムと力学系 , 共立出版, 2011.
[3] H. スミス,P.ウォルトマン著,竹内康弘監訳: 微生物の力学系:ケモスタット理論を通じて ,日
本評論社, 2004.
[4] K.Nitta and N.Yamamoto: On numerical verification of homoclinic orbits in high dimensional dynamical systems , SCAN2018: Book of Abstracts, pp110-111, 2018.
[5] 山野駿: 連続力学系におけるホモクリニック軌道の精度保証による検証について ,平成27年度 電気通信大学大学院情報理工学研究科修士論文, 2016