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114 宇宙航空研究開発機構研究開発報告 JAXA-RR-10-005

付録 A NS-III の導入根拠資料

NS-IIIの導入に際して,その根拠となった平成11年(1999 年)当時の主要な報告等の資料を掲載する.

諮問第25号「未来を拓く情報科学技術の戦略的な推進方策 の在り方について」に対する答申

平成11年6月2日 科学技術会議

第1章 情報及び情報科学技術に関する基本認識 1.物質資源依存型社会から情報資源依存型社会へ

一般に,事物は,物質の要素と情報の要素から成ると考え られる.人類の歴史は,物質及び情報との係わりの歴史であ ると言うことができる.近代に入って,物質の利用に関する 科学技術が急速に進歩し,産業革命等を通して,人類社会は 大きな変革を遂げた.他方,情報の利用については,それに 比肩するような急速な進展は見られなかった.近代文明は,

人類の物質を利用する能力の急速な進歩により,地球規模の 資源・環境の制約を顕在化させつつ,かつてない物質的な豊 かさを実現した.

近年に至り,情報の生成,処理,伝達,蓄積,保存,利用 等に関する科学技術,即ち情報科学技術の急速な発展により,

情報をコンピュータにより処理し,ネットワークにより伝達 するなど,人類の情報を利用する能力が飛躍的に高まった.

このことは,情報が物質とともに,ある面では物質に代わっ て,文明を形作る主要な要素となりうる状況が到来したこと を意味している.

このような情報を巡る新たな情勢に積極的に対応し,情報 が有効適切に利用される望ましい社会の構築,特に,これま での物質を大量生産,大量消費する物質資源依存型社会の,

持続可能な発展を可能とする情報資源依存型社会への転換 に取り組むことが必要である.ここで,情報資源依存型社会 においても,物質の重要性がなくなるのではなく,情報を活 用することによって,物質がより効果的・効率的に使われる ものであることに留意することが必要である.

情報は,情報一般に共通する性質を有すると同時に,それ が由来する事物又は分野によって異なる,固有の性質を有し ている.現在,多様な分野において膨大な情報が生成されて いるが,それらを総合的に理解することが困難になっている.

また,コンピュータ等の情報を扱う手段は,自然科学のうち の理工系の分野から発展してきたが,自然科学のうちの生命 科学系及び人文社会科学において,それらの手段を大いに活 用していくことによって,新たな展開が期待される.情報に 関するこのような状況において,多分野に亘る情報を体系的 に理解し,活用するための情報学という学問分野を確立する ことが学術の課題となっている.

2.情報科学技術による社会の変革

上述のような課題を内包しつつも,人類の知的・創造的な 所産である情報科学技術の発展は,既に,社会のあらゆる分 野を急速に変革しつつある.コンピュータとネットワークを 中心とする近年の情報科学技術の発展と社会への浸透は,情 報を,より多くの人が,より大量に,より高速に,より高度 な方法で,より容易に,より低コストで,より長い距離を越 えて活用することを可能にしつつある.これは,社会におけ る情報の活用のされ方や情報が果たす役割について,単に量 的ではなく,質的な変化を引き起こすものであり,21世紀 には,社会システムから,個人の生活,科学の在り方に至る まで,社会全体が情報科学技術に依存することになる.その 際,情報科学技術の発展が社会にもたらす多様な可能性を広 く認識し,その実現を目指していくという視点がまず必要で あり,同時に,情報化による社会の変革に伴って生ずる新た な課題について十分に認識し,それに適切に対処していくと いう視点が必要である.

(1)情報科学技術がもたらす多様な可能性

情報科学技術の進展は,まず,個人の選択と行動の自由度 を著しく拡大し,生活の豊かさの実現を可能にする.コンピ ュータと結びついたネットワークの発達による時間と距離 を越えたコミュニケーションの拡大は,人と人の結びつきを 深め,個人が多様な情報の中から必要なものを入手すると同 時に自ら情報を発信することを可能にし,個人が地理的,身 体的等の制約を越えて活動することを支援する.情報化の進 展は,仕事を効率化し,人がより創造的な仕事に携わること や生活を楽しむ余裕を持つことを可能にする.情報科学技術 を活用した新しいサービスの創出や利便性の向上は,個人の 生活における様々な面において,それぞれの価値観に応じた 多様な選択を可能にする.

また,情報科学技術は,経済社会の在り方を望ましい方向 に転換する大きな可能性を有している.すなわち,情報科学 技術の活用は,既存の産業の生産性を大きく向上させるとと もに,新しい技術の実用化や異分野の融合により新産業を創 出することが期待される.これは,より付加価値の高い,物 質資源を大量に消費しない,持続可能な方向への経済構造の 転換にも繋がることが期待される.

さらに,情報科学技術は,研究開発の手法に大きな変革を もたらし,科学技術の進歩を加速すると期待される.

(2)情報科学技術による社会の変革に伴って生ずる新たな 課題

情報科学技術による社会の変革に伴い,まず,情報を使い こなす能力(情報リテラシー)が不可欠な社会になるので,

そのような能力を多くの人が身に付けられるように配慮す るとともに,情報リテラシーが不十分な人を取り残したりす ることがないように配慮することが必要である.

また,ネットワーク上をあらゆる種類の膨大な情報が流通 するようになるため,その中から有用な情報を選択できるよ

うにするとともに,有害・不適当な情報の氾濫に対応するこ とや,個人情報の流通に関してプライバシーを保護すること が課題となっている.個人の生活,行政や経済の重要な活動 がネットワークを介して行われるようになるため,不正な行 為等に対するセキュリティの確保や,災害に強く信頼性の高 いシステムの構築が必要である.

さらに,金融を初め経済の諸システムが急速に情報化され ることにより,これまで予期しなかった現象が見られるよう になっており,それに対する十分な理解が必要である.いわ ゆる2000年問題は,社会のあらゆる活動が情報化されるこ とに伴って発生する思いがけない重大な現象の一例と考え られる.

これらの社会に関する課題を含めて情報科学技術を捉え るためには,倫理学,法学等を含む人文社会科学の視点が不 可欠となっている.

3.社会の知的・創造的基盤としての情報科学技術

これまで述べてきたように,これからの社会にあっては,

研究開発により生み出される知的・創造的な所産である情報 科学技術なくしては,高度化する社会のあらゆる活動を支え ることは不可能であり,情報科学技術は,社会の知的・創造 的な基盤と位置づけられる.

また,情報科学技術が,社会の知的・創造的な基盤として,

実際に社会のために役立つためには,情報を活用して21世 紀に向けて社会のどのようなニーズに重点的に対応すべき か,それを実現するための手段として情報科学技術をいかに 活用すべきか,そのためには情報科学技術の研究開発はどう なければならないか,という広い視野に立って情報科学技術 を推進することが必要である.

情報科学技術の推進に当たっては,以下のような情報科学 技術の特徴を十分認識する必要がある.

まず,情報科学技術については,新しい手法等が,長期間 をかけて確立され,定着するという現象がある一方で,ソフ トウェアに見られるように,基礎的な研究の成果が直ちに実 利用に結びつく傾向があり,従来の,基礎から応用,利用へ といった,研究開発のプロセスを一方向の段階的なものと見 なす認識がそのまま当てはまらない.

また,ソフトウェアやコンテンツに見られるように,成果 が個人の独創性に依存する傾向が著しい.言い換えれば,研 究開発において個々の人材が大きい要素となる.したがって,

優れた人材が能力を発揮できる環境を整えることが重要と なる.

さらに,情報科学技術自体についても,それに対するニー ズについても,多様性と変化の速さが著しいので,柔軟な対 応が必要である.

4.情報科学技術の研究開発を巡る情勢と課題

(1)情報科学技術の研究開発を巡る情勢

海外においては,社会の情報化の重要性の認識が高まり,

その基盤としての情報科学技術に対する国家的な取組みが

活発化している.例えば,米国においては,雇用の創出,国 民が等しくサービスを享受する機会の提供及び産業の国際 競争力の向上を目的として,ハードウェア,ソフトウェア,

人 材 等 を 含 む 情 報 基 盤 の 整 備 を 進 め よ う と い う NII (National Information Infrastructure)構想を進めており,

それに基づき,計算,ネットワーク等の広範な分野を対象と する,産学官連携による研究開発計画として HPCC (High Performance Computing and Communications)計画,その 後継のCIC (Computing, Information and Communications Research and Development)研究開発計画を実施している.

欧州においては,欧州各国の計画に加え,EUが実施してい る産学官連携の研究開発計画である第4次フレームワーク・

プ ロ グ ラ ム の 中 で ,ESPRIT (European Strategic Programme for Research and Development in Information Technologies)等の情報科学技術の研究開発計画を実施して いる.

また,G7 諸国間の協力として,広帯域ネットワークの相 互運用性,電子図書館,ヘルスケアのアプリケーション,電 子政府等に関する11のテーマから成るG7情報社会パイロ ット・プロジェクトが実施されている.

我が国においては,「我が国の高度情報通信社会の構築に 向けた施策を総合的に推進するとともに,情報通信の高度化 に関する国際的な取組みに積極的に協力するため」,平成6 年8月に内閣に高度情報通信社会推進本部が設置され,「高 度情報通信社会推進に向けた基本方針」(平成10年11月改 定)が決定されるなど,情報科学技術の研究開発を含む,高 度情報通信社会の構築に向けた施策について,政府としての 取組みが強化された.

(2)情報科学技術の研究開発に関する課題

情報科学技術の研究開発について,民間における活発な活 動に加え,国による取組みが活発化しているが,以下に示す ように,克服すべき課題が顕在化していると認識される.

まず,諸外国における情報科学技術への取組みが強化され る中,我が国は情報科学技術において総体的に遅れを取りつ つあるのではないかと懸念される.特に,ソフトウェアの分 野における立ち後れが顕著である.また,新しい発想が,速 やかに,ソフトウェア等として具体化し,社会で使われるよ うになるという活力が不足していると考えられる.

また,我が国は,情報科学技術の中で国際的に見て進んで いる分野もあるが,情報科学技術の基礎的・基盤的な領域に おいて,特に米国と比べ,弱さがあると認識される.基礎的・

基盤的な情報科学技術の研究開発については,国の研究開発 機関が主要な役割を果たすことが期待されるが,国の各機関 の情報科学技術部門の規模が小さいなど,体制が十分には整 備されていないと考えられる.

また,情報科学技術の研究開発及び活用においては,優れ た人材(研究者,研究支援者等)の確保が特に重要であるが,

我が国は,人材の層が薄いと認識される.さらに,研究者や 研究開発機関の活性化,成果の展開・活用のためには,産学