第三章 作品の制作工程
第一節 学部・修士課程・博士課程の作品
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攻で練込の研究を始めて 2 年半経た時の作品である。この作品を制作する以前 は同じ練込技法でも食器などの比較的小さな作品を作ってきたが、この「練込 大皿~さくらもよう~」は初めて練込で大物に取り組んだ。桜が咲いた風景を 表現し、近くで見ると細かく桜の花の模様の練込が見え、遠くから見ると桜の 木の一房に見えるような作品を狙い制作したのだが、当時は磁土の練込に大変 てこずり、ひび割れ無く仕上げることで精一杯であった。作品の構成の面で完 成度を上げることができずに、全体的な印象としてぼやっとしてしまった事が 反省点である。桜の淡いピンク色が背景の白と同化気味になってしまい、せっ かくの細かい練込も、遠くから見ると何をしているのかわからない。練込の良 さを伝える難しさを感じて、課題が明白に見えた作品である。
修了制作
図21 筆者作「天衣無縫~月夜の散歩~」2011 筆者撮影 H.210×W.200×D.15㎝
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図21と図22は東京藝術大学大学院二年次の修了制作の「天衣無縫~月夜の散 歩~」である。卒業制作で理解した課題について考えて、大学院での二年間は ひたすら作品のコンセプトについて悩んだ時期である。何を作りたいのかとい うことと、何を伝えたいのかということを真剣に考えた結果、生命の輝きと地 球に生きるものの形と色の美しさを表現することが自分にはとても自然な行為 であるという考えに至った。見る人を少しでも良い気分にすることが出来たら 素晴らしいと思った。
作品タイトルの「天衣無縫」は天人の衣に縫い目がないということから、文 章などがわざとらしくなく自然な様を表す四字熟語である。私はこの言葉に、
命あるものの美しさは作ったような形跡が無く、自然でとても美しいと思う自 身の気持ちを込めた。実際に生命の色や形に改めて感動した時期であり、沢山 の動物や植物を見た。
技術的には、この頃になると練込のひび割れの失敗が少なくなってきて、作 りたいものが造れるようになってきた。また、この作品は孔雀の背中の中央部 分に彩層技法を取り入れた。彩層技法を使ったのはこの作品が初めてである。
伝えたいことを作品で表す力はまだ不足していると感じたが、技術的な成長は 作品について考える時間の余裕を与えてくれた。
図 22 筆者作「天衣無縫~月夜の散歩
~」(部分)
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博士課程在学中の作品
図は東京藝術大学大学院博士課 程の在学中に制作した「彩層蓮花紋 香炉」(図23)と「彩層竹紋雀香炉」
(図 24)である。博士課程の一年 目と二年目では、主に技法の幅を広 げることに取り組んだ。
彩層はこの時からさまざまなパ ターンが生まれた。轆轤で成形した 器物に着色磁土を塗り重ねて、大 皿・大壺・花器・香炉などを制作し た。彩層技法は磁土を塗り重ねる為 に重さが出てくるので、
図23 筆者作「彩層蓮花紋香炉」2012 筆者撮影 H.21×W.15×D.15㎝
食器などの小さな作品には適さな いが、壺などの大物の加飾方法とし て様々な表現ができることが分か り、作ることが楽しくなった。図で 示した作品以外にも具象表現(図 17 自身作「彩層蓮花紋大皿」参照) や、板ものの制作も行った。
図24 筆者作「彩層竹紋雀香炉」2012 筆者撮影 H.18×W.15×D.15㎝
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図は「練込花紋茶碗」と「練込 蓮花蛙大皿」である。練込技法で は、大学院修士課程までは具象の 表現を避けて、あくまで模様とい う意識で練込の表現を行ってき たのだが、博士課程に進んでから は花や動物などの具象表現を作 品に取り入れた。それまで練込で の具象表現を避けてきた理由は、
も筆で描いた方花や動物などの
図25 筆者作「練込花紋茶碗」2013 筆者撮影 H.7×W.11×D.11㎝
具象は練込よりも断然美しいラ インを描けるからである。しかし、
具象の練込を試してみると、同じ 練込でも具象を意識して作った 部分と背景として作った部分で 差が生まれて、面白い奥行きが出 来ることに気付いた。また、幾何 学的な模様のみの練込に比べて、
具象の部分と背景の部分との磁 土の動きの差も生まれて、作品の 見るポイントが絞られて、作品が 見やすくなったように感じた。
図 26 筆者作「練込蓮花蛙大皿」2013 筆者撮 影 H.5×W.48×D.48㎝
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図27は「彩層金魚水文壺」で ある。この作品は練込と彩層の 両方の技法を取り入れた作品で ある。器の形は轆轤で作り、彩 層技法のベースに部分的にうす い練込の板を貼り付けた。練込 が一部分入ることで、目の留ま る場所を作ることを目的とした。
彩層と練込はその性質の違いか ら、一緒に使うとお互いを引き 立てあうことを実感した。
図27 筆者作「彩層金魚水文壺」2012 筆者撮影 H.22×W.23×D.23㎝
彩層技法も練込技法も研究を重ねるたびに幅が広がる技法であり、作りたいも のは今も尽きることが無い。技術に振り回されることが少なくなってきたこと もあり、これからの制作は一層面白くなっていくように感じる。今でも作品で 伝えたいことを伝える自身の課題であり、それが十分でないところは、私の作 品の弱い部分であると感じる。しかし、今までに培った技術は幅が広がり、作 れる形も多くなった。更に美しいものを作れるように研鑽を重ねていくことで、
自身の課題も解消されていくことを望む。