• 検索結果がありません。

第3章 事例分析

3.3.1. 学費問題

創価大学における学費問題とは、1972 年の10 月半ばに理事会から学費値上げに ついて掲載されたパンフレットが全学生に配布されたことをきっかけにおこった 出来事である。この学費問題は、学生が自ら学費の値上げを大学側に提案するとい う劇的な結末を迎えるのであるが、この出来事が現在の創価大学における学生参画 型大学運営の原型を形成する重要な時期であったことが指摘されている(正木・寺 西2006、創価大学創価教育研究所(編)2007, pp.84-95. 悠木1996, pp.20-24.)。出来

120 創立者としての責任感を持つこと。創立者が構想する大学像を実現すること。石井(2011)は、

創立者が学生を子ども(生徒)として扱わない、むしろ立派な大人として相対している姿(言 動)を通して、自分たち(学生)が責任をもって大学をつくっていかなくてはならない、学生 こそが主役なのだと感じたと述べている。

54

事の詳細は『新・人間革命121』などを通して、創価大学の教職学にとって周知のも のになっている122

創価大学における学生参画型大学運営の仕組みづくりにとって、この問題が重要 である理由は、学費問題の劇的な結末ではなく、その過程にある。1972年に理事会 から発表された学費値上げであるが、当時の学生はこれに猛反発をし、理事会に対 して白紙撤回を要求した。結果として、理事会は学費値上げの告知後すぐに、値上 げを撤回する旨を学生側に通達することになる。

学生たちの理事会に対する反感は、学費の値上げそのものではなく、一方的に学 費の値上げを通告してきた理事会のやり方にあり、それは「学生参加の原則」に反 するものではないかというものである。そして、1975年には、当初の白紙撤回要求 とはまったく逆の学費値上げ要求という形に収束するのである(正木・寺西 2006)。 当時の学生自治会のビラには、学費値上げの白紙撤回は「学生参加の原則」を実現 するための第一歩として記されている。

これは、学生の勝利というものでもなければ終局点でもない。すな わち今を出発点として、学生参加の実質的な第一歩がふみだされ、全 学が一体となって創立者の示された理想的な学泉共同体実現への斗 いが開始されたのである(正木・寺西, 2006, pp.112-113.)。

当時の理事たちの心境も創価大学が目指す新しい大学像123を実現するためには、

学生たちの反対を押し切って学費の値上げを断行することはできないというもの であった。つまり、「学生参加の原則」は絶対に最優先されなければならないとい うものである。そして、理事会も学生が主張する学生参加のあり方を具体的に実現 するために、教員、職員、学生、理事で構成する「全学協議会」の設置に向けて尽 力することになる(創価大学創価教育研究所(編) 2007, pp.88-89.)。

学生の手による学費値上げという結論に至るまでには、いくつか注目するべき学

121 学費問題当時の当事者である正木正明氏は、『新・人間革命』の「創価大学」の章の50から 57までを読めば、学費問題については、「なんの説明も、解説もいらない」と述べている(正 木・寺西 2006, p. 111.)。

122 全学協議会委員(教員)へのインタビュー(2013424日)より。

123 学生も大学の運営に参加するという大学運営のあり方。

55

生側の活動がある。全協の発足と同時に、学生の側でも学費審議委員会を設置し学 費問題について議論がなされている。また、学費の値上げという問題を学生の側の 問題として捉えなおすためにクラスやゼミ単位で活発な討論が行われた。学生のな かには、自分たちの学費はそのままで、今後入学してくる後輩たちの学費を論ずる ことははばかられるという意見や、後輩の学費を値上げするのなら自分たちの学費 も値上げするべきだという声があった。クラスやゼミ単位の議論をとおして、「カ ンパを募り、学債の購入にあてる」、「仮称『創価大学経済援助学生機構』をつくり 経済的な援助を行う」、あるいは、「卒業生からカンパを募り奨学金制度をつくる124」 などの援助の提案も行われた。

最後に、創価大学の学費問題において、注目するべき点は、学生たちの責任感で ある。これについても川喜田(1996)や林(2002)が提唱する「参画」の概念と共 通する点がみられる。つまり、「創大生としての責任」や「若き大学の創立者」と しての自覚を当時の学生のみならず、現在の学生たちにとっても強烈に意識せざる えない出来事になっている(正木・寺西 2006)。

学生参加とは、その形態を追求することにあるのでもなく、単なる 要求行為のみにとどまるものでもない。自己の全存在をかけた自らが、

大学を守り、築くために一体何をなしうるか、また何ができるのを自 己に問いかけ、行動すること(正木・寺西 2006, p.115.)。

“学生参加”の原則とは、学生自らが、大学運営の主体者としての 自覚に立ち、責任をもとうとすることから始まる。学生がその自覚に 立たず、無関心、無責任な傍観者である限り、本来、学生の自治など ありえない。いな、それは、学生自らが、自治を放棄した姿といって よい(創価大学創価教育研究所(編)2007, p.93.)。

創価大学の学生参画型大学運営は、学生たちの非常に強い大学に対する責任感と、

創立者の構想・理念を実現しようという熱い思いが満ちており、大学側と学生側の

124 現在では、創価大学卒業生の同窓会である創友会が奨学金制度を設けている。

56

間にある「相互信頼125」や「共通目的126」によって支えられている。

関連したドキュメント