• 検索結果がありません。

第 6 章 実験材料および方法

第 9 節 姉妹染色分体交換 (SCE) の検出 6.9.1 材料および試薬

1) 75 mM KCl (低張液) (第6節参照) 2) カレノア固定液 (第6節参照)

3) 0.5 M phosphate buffer (10×PB) (第6節参照) 4) 3% ギムザ溶液 (第6節参照)

5) 2×MacIL valine solution (2×MB)

58.9 gのNa2HPO4・12H2Oとcitric acid・H2Oに適量の脱イオン水を加えた。pH 7.02に 合わせた後、500 mLにメスアップして室温で保存した。

6) 1 mg/mL Hoechst 33258 solution

Hoechst 33258 (WAKO) を1 mg/mLになるようにMilliQ水に溶解し、4℃で遮光保存した。

6.9.2 実験方法

4×105個の細胞を、10 µM BrdUを含む2 mLのRPMI培地で2細胞周期 (16.5時間) 培養 した。薬剤処理のものは100 nM CDDPを最初に同時添加し、最後の2時間15分は0.1 µg/mL コルセミド存在下で培養した。細胞を回収して遠心し、PBS で一度洗浄した後、ペレットに 75 mM KClを10 mL加えてよく懸濁させ15分室温で静置させた。カレノア固定液を5 mL 加えてよく混合させ、1,000 rpmで5分遠心し、ペレットにまたカレノア固定液を5 mL以上 加え、懸濁させて室温で30分放置した。その後、2回 5 mLのカレノア固定液で細胞を洗浄 し、最後にペレットを数滴のカレノア固定液に懸濁させた。この得られた細胞懸濁液を脱イオ ン水で表面を塗らしたスライドガラスに2~3滴滴下し、よく拡散させ、60℃で30分風乾した のち室温で保管した。スライドガラスを1×PBで希釈した10 µg/mL Hoechst 33258で遮光し ながら20分染色し、1×MBでよくすすいだ。乾燥を防ぐため数滴の1×MBを滴下後、カバ ーガラスをかぶせ、1 cmの距離からブラックライト (352 nmの紫外線) を20分照射した。次

86

にカバーガラスを外し、再び1×MBでよくすすぎ、58℃の2×SSC中で、20分保温した。1

×PBでよくすすいだ後、3%ギムザ溶液で20分染色した。最後にmilliQ水に8分浸し、アセ トンとトルエンを用いて洗浄し、乾燥後、カナダバルサムで封入した。後日、カバーガラスを マニキュアでシールした後、顕微鏡で観察した。

第 10 節 細胞免疫染色

6.10.1 材料および試薬 1) 4%パラホルムアルデヒド

パラホルムアルデヒドを4%となるようにMilliQ 50mLに懸濁し、1M NaOHを2、3滴加 えた。50~60℃で溶かした後、10 mLずつ分注して-20℃で保存した。

6.10.2 実験方法

3×104個程度の細胞を回収し、サイトフューネルス(Thermo Scientific)および大型遠心機を 用いてAPSコート化スライドガラス(松浪硝子)上に張りつけた。ダコペンで細胞懸濁液の周囲 をマーキング後、4%パラホルムアルデヒド 10分処理により固定した。PBS で洗浄後、0.1%

NP40-PBS液で10分処理し、核膜の透過処理を。PBSで2回洗浄後、1% BSA-0.05% tween-20 PBS液でブロッキングした。続いて、1% BSA-0.05% tween-20 PBS液で1000 倍希釈した anti-Rad51抗体(早稲田大学 胡桃坂博士より恵与)ないしanti-FANCD2抗体(京都大学 高田博 士より恵与)で室温、1時間インキュベー卜した。PBSで3回洗浄後、1% BSA-0.05% tween-20 PBS液で250倍希釈したAlexa488-conjugated anti-rabbit抗体(Invitrogen)で室温、1時間イ ンキュベー卜した。このとき、核染色試薬としてDAPIも同時に混合した。PBSで3回洗浄後、

マウンティングメディウムを滴下し、カバーガラスにより封入してサンプルとした。蛍光顕微 鏡(DM5500B; Leica および BZ-9000; KEYENCE)において観察し、取り込んだ画像から

foci-positive cells の割合を計測した。5 つ以上のシャープなフォーカスが核内にある細胞を

positive cellsとした。核の断片化が生じている細胞はアポトーシスが誘導されている細胞と判

断し、割合計測時の分母には加えなかった。

87

第 11 節 DNA fiber assay

6.11.1 材料および試薬 1) Lysis solution

脱イオン水を用いて最終濃度が0.5% SDS、200 mM Tris-HCl (pH7.4)、50 mM EDTAとな るように混合し、室温で保存した。

2) カレノア固定液 (第6節参照) 6.11.2 実験方法

細胞をCldU (Sigma)、IdU (Sigma)で順次ラベルした後、遠心(3,000 rpm, 2分) して回収し、

冷PBS 1 ml に再懸濁した。細胞浮遊液2 µl をAPSコート化スライドガラス(松浪硝子)上に

塗りつけ、風乾した。Lysis solution で細胞を可溶化し、スライドガラスを傾けることでDNA をスライドガラス上に引き伸ばし貼り付けた。コプリンジャー中でカレノア液 3 分、冷 70%

EtOH 1時間以上、MeOH 3分の順に処理しDNA の固定を行った。PBS洗浄後、2.5 M HCl で30分処理することでCldU とIdU を露出させ、0.1 M NaBorate で3分処理して酸を中和 した。PBS洗浄後、1% BSA-0.05% tween-20 PBS液で1000 倍希釈したanti-BrdU rat IgG (Abcam)、500 倍希釈したanti-BrdU mouse IgG (BD Biosciences)で室温、1時間インキュベ ー卜した。続いて、0.05% tween-20 PBS 液で室温、3分洗浄を2回行った後、1% BSA-0.05%

tween-20 PBS 液で1000 倍希釈したCy3-conjugated anti-rat IgG (Jackson)、1000 倍希釈 したAlexa488-conjugated anti-mouse IgG (Invitrogen) で室温、1時間インキュベー卜した。

その後0.05% tween-20 PBS 液で室温、3分洗浄を3 回行った。最後に、スライドガラス上に マウンティングメディウム(Diagnostic BioSystems)を滴下し、カバーガラスにより封入してサ ンプルとした。蛍光顕微鏡(BZ-9000; KEYENCE)において取り込んだ画像をImage J ソフト ウェアで解析し、得られた fiber の長さを計測した。DNA 複製フォークの進行距離は千塩基 (kbp)単位で表し、変換係数1 µm ≒ 2.59 kbpにより算出した(Jackson and Pombo 1998)。

88

第 12 節 細胞成分分画

6.12.1 材料および試薬

1) Subcellular Protein Fractionation Kit #78840 (Thermo Scientific) 6.12.2 実験方法

5×106個の細胞を回収し、PBSで洗浄した。その後、Subcellular Protein Fractionation Kit のプロトコールに従い分画し、western blotting sample bufferを添加してボルテックスした。

95℃、10分加熱後、スピンダウンしてサンプルとした。

第 13 節 MTT assay

6.13.1 材料および試薬

1) MTT試薬 (Research Organics) 2) Lysis solution

MilliQ水を用いて、最終濃度が50%(v/v) N,N-ジメチルホルムアミド、20% SDSとなるよう に混合し、室温で保存した。

6.13.2 実験方法

細胞をカウントし、2×105 cells/mL で90 µL ずつ96 well plate に播いた。30分のプレイ ンキュベート後、10 µL の薬物により処理し、アッセイに応じてさらにインキュベートした。

MTT 試薬を25 µL /well ずつ加えてさらに3 時間処理し、Lysis solution 100 µL /well を添

加してovernight でインキュベートした。翌日、マイクロプレートリーダーで595 nm の吸光

度を測定した。実験の例数はn= 5 で行い、結果は平均値±標準誤差で示した。

第 14 節 TUNEL assay

6.14.1 材料および試薬 1) 1%パラホルムアルデヒド

第10節で作製したものをPBSで希釈して使用した。

89 2) TdT mix

TdT recombinant、TdT buffer、およびCy3-dCTPを1:25:0.05の割合で混合した。

6.14.2 実験方法

1×106 個の細胞を回収し、PBSで洗浄後、1%パラホルムアルデヒドで氷上15分、70%EtOH で4℃、30分以上処理して固定した。1% BSA/PBSで洗浄後、25 µLのTdT mix に再懸濁し て37℃で1時間インキュベートした。1% BSA/PBSで2回洗浄後、RNaseを含む1% BSA/PBS に再懸濁して37℃で30分インキュベートした。ナイロンメッシュ処理後、フローサイトメト リーで TUNEL-positive cells の割合を測定した。得られたデータを Cell Quest (Becton Dickinson) ソフトウェアで解析した。

第 15 節 ミトコンドリア膜電位変化の検出

6.15.1 材料および試薬

1) 3,3’-Diethyloxacarbocyanine iodide (DIOC6(3); Sigma) 6.15.2 実験方法

5×105 個の細胞を回収し、室温で1% FBS-PBS 1mLに再懸濁した。10 µg/mL DIOC6(3)お

よび2 mg/mL PIとなる20 µLの混合液を調製し、各サンプルに添加して室温で5分インキュ

ベートした。ナイロンメッシュ処理後、フローサイトメトリーでapoptotic cellsの割合を測定 し、得られたデータをCell Quest (Becton Dickinson) ソフトウェアで解析した。

90

謝辞

本研究にあたり、御懇篤なる御指導御鞭撻を賜りました東北大学大学院薬学研究科遺伝子制 御薬学分野教授 稲田 利文 先生に謹んで感謝申し上げます。

本論文をまとめるにあたり、有益なる御助言を頂きました東北大学大学院薬学研究科生命機 能解析学分野教授 倉田 祥一朗 先生、東北大学大学院薬学研究科薬物動態学分野准教授 吉 成 浩一 先生に深く感謝申し上げます。

本研究を遂行するにあたり、始終有益な御指導、御助言を頂きました東北薬科大学薬学部生 化学教室教授 関 政幸 先生、武蔵野大学薬学部分子細胞生物学研究室教授 榎本 武美 先生に心より感謝申し上げます。

本研究を進めるにあたり、多大なる御助言を頂き、多数の材料を恵与して頂きました京都大 学放射線生物研究センターDNA 損傷シグナル研究分野教授 高田 穣 先生ならびに同分野 准教授 石合 正道 先生、京都大学大学院医学研究科放射線遺伝学教室教授 武田 俊一 先生、イタリア IFOM 博士研究員 荒川 央 先生、アメリカ合衆国 NIH 教授 Weidong

Wang 先生ならびに同分野博士研究員 M. Nurul Islam 博士に深く御礼申し上げます。

染色体異常の解析を行うにあたり、多大な御助力、御協力を頂きました就実大学薬学部教授 石井 裕 先生、anti-Rad51抗体を恵与して下さいました早稲田大学大学院先進理工学研究科 構造生物学研究室教授 胡桃坂 仁志 先生に厚く感謝致します。

本研究を進めるにあたり、有益かつ御親切な御助言を頂きました帝京平成大学薬学部教授 多田 周右 先生、武蔵野大学薬学部分子細胞生物学研究室講師 吉村 明 先生、東北大学

91

大学院薬学研究科遺伝子制御薬学分野助教 鹿島 勲 先生に謹んで感謝致します。

本研究を進めるにあたり、師として有益かつ的確な御助言、御指導を頂きました阿部拓也博 士、英文校正を中心に多数のご助言を頂きました岡勇人博士、ならびに先輩として多くの御指 導を頂きました井上絵里博士、高田隼也氏、秋田玄武氏、東北薬科大学薬学部生化学教室の立 ち上げを中心に研究・雑務の両面で多大なご協力を頂いた同教室 安保明博准教授ならびに同教 室 中林悠助手、共に DT40 グループを盛り立ててくれた大沢洸司君、樋口優人君、梶井孔左 君、石原亮介君、そして研究のみならず多方面に渡ってお世話になりました、同期を始めとす る遺伝子制御薬学分野・生化学教室の皆様に厚く御礼申し上げます。

最後になりましたが、今日まで私を育てて頂き、9 年間の大学・大学院生活を支え温かく見 守って下さいました、祖父母と弟、両親に心より感謝申し上げます。

平成26年3月7日 東北大学大学院薬学研究科 生命薬学専攻 遺伝子薬学分野 博士課程後期3年 細野 嘉史

92

引用文献

Abe T, Ishiai M, Hosono Y, Yoshimura A, Tada S, Adachi N, Koyama H, Takata M, Takeda S, Enomoto T et al. 2008. KU70/80, DNA-PKcs, and Artemis are essential for the rapid induction of apoptosis after massive DSB formation. Cellular signalling 20: 1978-1985.

Abe T, Sugimura K, Hosono Y, Takami Y, Akita M, Yoshimura A, Tada S, Nakayama T, Murofushi H, Okumura K et al. 2011a. The histone chaperone facilitates chromatin transcription (FACT) protein maintains normal replication fork rates. J Biol Chem 286:

30504-30512.

Abe T, Yoshimura A, Hosono Y, Tada S, Seki M, Enomoto T. 2011b. The N-terminal region of RECQL4 lacking the helicase domain is both essential and sufficient for the viability of vertebrate cells. Role of the N-terminal region of RECQL4 in cells. Biochim Biophys Acta 1813: 473-479.

Aguilera A. 2002. The connection between transcription and genomic instability. Embo J 21:

195-201.

Ahnesorg P, Smith P, Jackson SP. 2006. XLF interacts with the XRCC4-DNA ligase IV complex to promote DNA nonhomologous end-joining. Cell 124: 301-313.

Arakawa H, Hauschild J, Buerstedde JM. 2002. Requirement of the activation-induced deaminase (AID) gene for immunoglobulin gene conversion. Science 295: 1301-1306.

Arnaudeau C, Tenorio Miranda E, Jenssen D, Helleday T. 2000. Inhibition of DNA synthesis is a potent mechanism by which cytostatic drugs induce homologous recombination in mammalian cells. Mutat Res 461: 221-228.

Auerbach AD, Verlander PC. 1997. Disorders of DNA replication and repair. Curr Opin Pediatr 9: 600-616.

Aygun O, Svejstrup J, Liu Y. 2008. A RECQ5-RNA polymerase II association identified by

93

targeted proteomic analysis of human chromatin. Proc Natl Acad Sci U S A 105:

8580-8584.

Aygun O, Svejstrup JQ. 2010. RECQL5 helicase: connections to DNA recombination and RNA polymerase II transcription. DNA Repair (Amst) 9: 345-353.

Aygun O, Xu X, Liu Y, Takahashi H, Kong SE, Conaway RC, Conaway JW, Svejstrup JQ. 2009.

Direct inhibition of RNA polymerase II transcription by RECQL5. J Biol Chem 284:

23197-23203.

Aze A, Zhou JC, Costa A, Costanzo V. 2013. DNA replication and homologous recombination factors: acting together to maintain genome stability. Chromosoma 122: 401-413.

Barber LJ, Youds JL, Ward JD, McIlwraith MJ, O'Neil NJ, Petalcorin MI, Martin JS, Collis SJ, Cantor SB, Auclair M et al. 2008. RTEL1 maintains genomic stability by suppressing homologous recombination. Cell 135: 261-271.

Bedell VM, Wang Y, Campbell JM, Poshusta TL, Starker CG, Krug RG, 2nd, Tan W, Penheiter SG, Ma AC, Leung AY et al. 2012. In vivo genome editing using a high-efficiency TALEN system. Nature 491: 114-118.

Bogliolo M, Schuster B, Stoepker C, Derkunt B, Su Y, Raams A, Trujillo JP, Minguillon J, Ramirez MJ, Pujol R et al. 2013. Mutations in ERCC4, encoding the DNA-repair endonuclease XPF, cause Fanconi anemia. Am J Hum Genet 92: 800-806.

Branzei D, Foiani M. 2008. Regulation of DNA repair throughout the cell cycle. Nature reviews Molecular cell biology 9: 297-308.

-. 2010. Maintaining genome stability at the replication fork. Nature reviews Molecular cell biology 11: 208-219.

Britton S, Frit P, Biard D, Salles B, Calsou P. 2009. ARTEMIS nuclease facilitates apoptotic chromatin cleavage. Cancer Res 69: 8120-8126.

Buerstedde JM, Reynaud CA, Humphries EH, Olson W, Ewert DL, Weill JC. 1990. Light chain

94

gene conversion continues at high rate in an ALV-induced cell line. Embo J 9: 921-927.

Buerstedde JM, Takeda S. 1991. Increased ratio of targeted to random integration after transfection of chicken B cell lines. Cell 67: 179-188.

Bugreev DV, Yu X, Egelman EH, Mazin AV. 2007. Novel pro- and anti-recombination activities of the Bloom's syndrome helicase. Genes Dev 21: 3085-3094.

Busino L, Chiesa M, Draetta GF, Donzelli M. 2004. Cdc25A phosphatase: combinatorial phosphorylation, ubiquitylation and proteolysis. Oncogene 23: 2050-2056.

Chen CH, Budas GR, Churchill EN, Disatnik MH, Hurley TD, Mochly-Rosen D. 2008.

Activation of aldehyde dehydrogenase-2 reduces ischemic damage to the heart. Science 321: 1493-1495.

Chou DM, Elledge SJ. 2006. Tipin and Timeless form a mutually protective complex required for genotoxic stress resistance and checkpoint function. Proc Natl Acad Sci U S A 103:

18143-18147.

Chu G. 1997. Double strand break repair. J Biol Chem 272: 24097-24100.

Chu WK, Hickson ID. 2009. RecQ helicases: multifunctional genome caretakers. Nat Rev Cancer 9: 644-654.

Ciccia A, Elledge SJ. 2010. The DNA damage response: making it safe to play with knives. Mol Cell 40: 179-204.

Crossan GP, Patel KJ. 2012. The Fanconi anaemia pathway orchestrates incisions at sites of crosslinked DNA. The Journal of pathology 226: 326-337.

Crossan GP, van der Weyden L, Rosado IV, Langevin F, Gaillard PH, McIntyre RE, Gallagher F, Kettunen MI, Lewis DY, Brindle K et al. 2011. Disruption of mouse Slx4, a regulator of structure-specific nucleases, phenocopies Fanconi anemia. Nat Genet 43: 147-152.

Deans AJ, West SC. 2011. DNA interstrand crosslink repair and cancer. Nat Rev Cancer 11:

467-480.