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妊娠、出産時に留意すべきことは何ですか?

ドキュメント内 PBCガイドブックCS2.indd (ページ 64-76)

解  説

 PBC の患者さんで妊娠が病気にどのように影響するかは判然としていま せん。妊娠期間中に軽快したとの報告と増悪したとの報告のどちらも存在し ます。エストロゲン量の変化が病態に影響していると考えられていますが、

詳細な病態は不明であるといわざるを得ません。胎児に対する奇形を起こす 可能性によってウルソやベザフィブラートは妊娠初期には投与しないことが 望ましいと考えられています。但し妊娠後期の胆汁うっ滞にはウルソが必要 になる場合もあります。また出産後に黄疸が増悪したという報告もあります ので、肝機能の経過観察は必要です。

用語解説

用語解説 G l o s s a r y

●アザチオプリン(あざちおぷりん)

 免疫抑制薬の1つで、免疫を抑制する働きがあります。自己免疫性肝炎で、

プレドニンの効果が得られない場合に用いられています。副作用として、骨 髄抑制、肝毒性、間質性肺炎などがあります。

●エストロゲン製剤(えすとろげんせいざい)

 ホルモン製剤には、エストロゲン製剤(卵胞ホルモン、女性ホルモン)と プロゲステロン製剤(黄体ホルモン)があります。エストロゲン製剤は、エ ストロゲンの欠乏が主要な原因である更年期障害の治療に使われています。

●横紋筋融解症(おうもんきん ゆうかいしょう)

 筋肉の横紋筋細胞が融解し、筋細胞内の成分が血中に流出する症状、ま たはそれを指す病気のことを言います。事故や負傷などの外傷や、脱水など によって発生しますが、重要な原因の一つとして、薬剤による場合があります。

原因となる薬物の主なものとして脂質異常症治療薬のスタチン系薬物・フィ ブラート系薬物があります。重症の場合には腎機能の低下を生じ、腎不全な どの臓器機能不全を発症し、死に至る場合もあります。

用語解説

●間質性肺炎(かんしつせいはいえん)

 肺の間質組織が炎症を来し障害される疾患です。治療が困難な難病で、

間質性肺炎のうち特発性間質性肺炎は特定疾患に指定されています。進行し て炎症組織が線維化したものは肺線維症と呼ばれます。

●肝性脳症(かんせいのうしょう)

 肝硬変が高度に進行した場合や、急に生じる重篤な障害である劇症肝炎に より、肝臓の機能が高度に低下した場合に起こる意識障害です。別名を肝性 昏睡(かんせいこんすい)とも言います。このような原因のほか、腸管から 肝臓に流れている門脈と体循環の短絡によって生じることや、まれに先天性 の代謝異常によってことがあります。直接の原因については不明な点が多い のですが、肝機能低下により血液中にタンパク質の分解生成物であるアンモ ニアなどが増えることにより引き起こされると考えられています。

●肝内胆汁うっ滞(かんないたんじゅううったい)

 黄疸は、内科的治療が中心となる内科的黄疸と、内視鏡や外科的処置が 必要な閉塞性黄疸(外科的黄疸)の2種類に分類されます。内科的黄疸の原 因は、溶血性黄疸(赤血球崩壊の増加)や体質性黄疸、および薬物やアルコー ル性肝障害、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変などの肝細胞障害と肝内胆汁うっ 滞ですが、内科的黄疸のうち、肝臓内の小さな胆管に障害が生じて、胆汁の 流れが悪くなり、肝臓内で胆汁がうっ滞するものを肝内胆汁うっ滞といいま す。PBC は肝内胆汁うっ滞が慢性的に持続する慢性肝内胆汁うっ滞の代表

用語解説

的な病気ですが、その他、同じ自己免疫性肝疾患とされる特発性硬化性胆 管炎(PSC)や薬物や肝炎ウイルスによる肝障害でみられることがあります。

●逆転写酵素限害薬(ぎゃくてんしゃこうそ そがいやく)

 B 型肝炎ウイルスやエイズの原因ウイルスである HIV は、逆転写酵素といっ て、ウイルスの遺伝情報である RNA を DNA へと逆転写する特徴的な酵素 を持っています。逆転写酵素阻害薬は、この酵素の働きをブロックし、ウイ ルス遺伝子から細胞核に組み込まれる DNA へのコピーができなくさせるも のです。

●強皮症(きょうひしょう)

 強皮症には全身性強皮症と限局性強皮症があり、両者は全く異なる疾患 ですのでこの区別がまず重要です。限局性強皮症は皮膚のみの病気で、内 臓を侵さない病気です。一方、全身性強皮症は皮膚や内臓が硬くなる変化が 特徴です。全身性強皮症は内臓にも障害を来しますが、その中でも病気の進 行や内臓病変を起こす頻度は患者さんによって大きく異なります。患者さん によっては病気がほとんど進行しないこともあるので、従来使われていた「進 行性」全身性硬化症という病名の「進行性」という部分はこの病気には適切 でないことから、今は使われなくなりました。(☞難病情報センターホームペー ジ)

用語解説

●膠原病(こうげんびょう)

 人間の身体を作っている細胞同士を結びつける結合組織は、皮膚、関節、

筋肉、血管など全身のいたるところにあります。その結合組織に病変が生じ たものを総称して膠原病と呼んでいます。本来なら異物から身体を守るはず の免疫システムが正常に働かず、自分の身体を攻撃する抗体を作ることが原 因とも考えられている自己免疫疾患の代表的な病気です。内臓が主に侵され る全身性エリテマトーデス、関節が主に侵される慢性関節リウマチ、皮膚・

筋肉が主に侵される強皮症、多発性筋炎・皮膚筋炎、血管が主に侵される結 節性多発動脈炎などが主なものです。

●抗セントロメア抗体(こう せんとろめあ こうたい)

 自己免疫性疾患患者の血液検査で特徴的に陽性となる自己抗体とよばれる もののひとつです。自己抗体とは自分の体の成分に向けられた抗体であり、

これによって自分の体が傷んで、硬化(線維化)が生じるとされています。

セントロメアとは、核を有する細胞に存在する2本の相同染色体が接合する 部位のことであり、細胞分裂で染色体が分配される際には紡錘糸が付着する 重要な領域です。その部に対して生じた自己抗体が抗セントロメア抗体と呼 ばれます。限局性の強皮症で特徴的に生じますが、PBC でも生じます。抗 セントロメア抗体陽性の PBC は門脈圧亢進症が生じやすいが生命予後は悪 くないと報告されています。

用語解説

●自己免疫性肝炎(AIH) (じこめんえきせいかんえん(えいあい えいち))

 英語では Autoimmune hepatitis と呼ばれ、頭文字から AIH とも略さ れます。肝障害の原因は不明ですが、既知の肝炎ウイルス感染、薬物などに よらず免疫異常、特に自己免疫の異常が病気の成り立ちに重要と考えられて います。すなわち、自己免疫性肝炎は、自分の肝臓を構成する成分(細胞や 細胞成分など)に対する異常な免疫反応が病気の発症・進展に関与している 肝障害であると考えられます。臨床的特徴としては中高年を中心とした女性 に多く、検査所見で高ガンマグロブリン血症、抗核抗体をはじめとする自己 抗体の陽性所見が特徴的で、免疫抑制薬特に副腎皮質ステロイドが良好な治 療効果を示します。多くの患者さんの肝組織は、形質細胞浸潤を特徴とする 活動性の慢性肝炎像を示します。しかし、最近の調査により、黄疸や全身倦 怠感、食欲不振など急性肝炎様の症状で急激に発症する患者さんの存在す ることが判ってきました。原発性胆汁性肝硬変(PBC)に合併することがあ り、その場合、PBC-AIH オーバーラップ症候群とよばれます。(☞難病情報 センター)

●シェーグレン症候群(しぇーぐれんしょうこうぐん)

 シェーグレン症候群は 1933 年にスウェーデンの眼科医ヘンリック・シェー グレンの発表した論文にちなんでその名前がつけられた疾患です。日本では 1977 年の厚生労働省研究班の研究によって医師の間に広く認識されるよう になりました。本疾患は主として中年女性に好発する涙腺と唾液腺を標的と する臓器特異的自己免疫疾患ですが、全身性の臓器病変を伴う全身性の自

用語解説

己免疫疾患でもあります。シェーグレン症候群は膠原病(関節リウマチ、全 身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎、混合性結合組織病)に合併する 二次性シェーグレン症候群と、これらの合併のない原発性シェーグレン症候 群に分類されます。原発性シェーグレン症候群の病変は3つに分けることが できます。1つ目は目の乾燥(ドライアイ)、口腔乾燥の症状のみがある患 者さんで、ほとんど “健康に” に暮らしている患者さんもありますが、ひど い乾燥症状に悩まされている人もあります(約 45%)。2つ目は全身性の何 らかの臓器病変を伴うグループで、諸臓器へのリンパ球浸潤、増殖による病 変や自己抗体、高γグロブリン血症などによる病変を伴う患者さんです(約 50%)。3つ目は悪性リンパ腫や原発性マクログロブリン血症を発症した状 態です(約5%)。経過を見ますと、約半数の患者さんは 10 年以上経っても 何の変化もありませんが、半数の患者さんは 10 年以上経つと何らかの検査 値異常や新しい病変がみられます。(☞難病情報センター)

●食道・胃静脈瘤(しょくどう・いじょうみゃくりゅう)

 食道および胃噴門部の粘膜下層の静脈の拡張により、肉眼的に粘膜が瘤 状に隆起しているのが認められる疾患です。門脈圧亢進をきたす疾患が原因 となり、門脈圧が亢進することで、門脈に流入するはずの血流が逆流し、胃 の静脈を経由して食道の静脈から上大静脈に流入するように血行路が形成さ れます。その結果として食道に静脈瘤が発生します。通常は肝炎が肝硬変に 進行した場合にみられますが、PBC では肝硬変に至る前に生じることがあ ります。

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